逃げ場所
そこは繁華街と言うには汚れていて
スラムと言うには治安がいい。
そんなアパートにカナとユウジはいた。
冬は寒くて夏は暑い
アパートの部屋はほとんど物が置いておらず必要最低限の家具だけが置いてある。
2人にとってはここが家であり、情報収集の場所だった。
「暇だわー。」
カナがファッション雑誌を投げ出して、赤いスカートから白くて綺麗な足をむき出しにしながら寝転んだ。
カナは恵まれた容姿をしていて長い黒髪に白い肌、すらっとした足をしていた。
女と和室というのは何故無条件に情欲をそそるのか、ユウジはチラリとカナを見て素朴な疑問を持った。
「まだ待てよ、今はまだ商売時じゃない、小一時間も待ってれば事務所からお呼びがかかるさ。」
ユウジは小説から目を離さずに畳んだ布団に寄りかかりながらカナを宥めた。
「またそんなインテリアが読むような小説読んでる。あんた単なる使いっ走りじゃんもっと軽いの読めばいいのに。」
仰向けのまま嫌味を言いながらも片足をユウジの足に絡めて来た。
「黙って待ってろ、後でじゃんじゃん客入って体が持たなくなってもしらねぇぞ。」
「ねぇ暇つぶしにしようよぉ。」
カナはユウジの言葉を無視して、自分の黒く長い髪を弄びながら徐々に体を擦り寄せてきた。
ユウジは完全無視を決め込んだ。
「あんた本当に仕事熱心だよね。」
カナは諦めて雑誌をもう一度掴んだ。
カナはデリへル嬢でユウジは暴力団の下っ端、カナが務める店の事務と女の子達が危険な目にあったら出向く護衛をしていた。
2人は孤児という共通点があり、仕事関係以上の親しみを感じて、出し合った金でこのアパートを借りていた。
いっときも置かずユウジの携帯が鳴った。
「はい、はい、わかりました知らせます。
ほら仕事入っただろ、場所メモするから行ってこいよ。」
ユウジがメモにホテルの住所を書き込む。
「仕事以外の暇つぶしがしたかったわ。」
カナは吐き捨てるように言うとメモをひったくって玄関へ向かった。