2、この人選、絶対間違ってる
案内された奥の部屋には私を含め十人程の人が居た。あれだけの人数からここまで減らされるとは……頑張った自分! と褒めてあげたい。
「今回の合格者の皆さん、まずは手続きを行いますので、身分証明を持ってこちらへお越し下さい」
一際目立つ騎士服を身に纏った彫刻のように整った顔立ちの強面さんが呼んでいる。この部屋での権力者はたぶんあのお兄さんだろう。目力、目力が違う。睨まれただけで子供泣いちゃう。石にされそう。
部屋の隅にはカレドニア王国の紋章をつけた騎士達も並んでいるし、なんか威圧感がある。ここで暴動でも起こそうものなら即座にあの剣で切られるのだろうか。想像するだけで恐ろしい。
「では、次の方」
「はい」
「お名前と年齢。出身地をお願いします」
「リア・ブライアン、十八歳。ミシェイル公国出身です」
「ほぅ……これは遠方から来られましたね。こちらには観光で?」
キラリと鋭い眼光が私を突き刺す。テメェ、スパイじゃねぇだろうな?! と言わんばかりの眼差しだ。
「ええ、まぁ。色々事情がありまして」
「事情とは……?」
「交通費と入国料で路銀が底をついてしまいまして。新たなお仕事を探していた所に、張り紙を見つけたのです」
身分証明証を発行しないと、長期滞在の入国は認められないって関所で言われたけど、それが高い! 高すぎる! 流石は大国、怪しい者は門前払いということらしい。
「なるほど……」
サラサラと流暢な字で目力ヤバい強面さんが書類に筆を走らせる。
「手続きは終了です。元の席に戻ってしばらくお待ち下さい」
「はい」
こ、恐かった。寿命が三年ぐらい縮んだ気がする。しばらくして、再び強面さんが前に立つ。
「では、早速説明を始めたいと思います。私はカレドニア王国紅蓮の騎士団長を務めるアシュレイ・レオンハートと申します。こちらに滞在して頂く間、我々紅蓮の騎士団員が一人ずつ護衛につき、皆様のお世話をさせて頂きます」
それはつまり、怪しいことを企んだらその首すぐにちょん切るぞという事ですね。おぉ、こわい。
「皆さんには一晩ずつ、殿下について不眠の改善を行って頂きます。なお、殿下に見込みがないと判断を下された方は、その場でご退場いただきますのであしからず」
無駄な人件費は払いたくないと言うことですね。分かります。
「それでは一人ずつ名前を呼び上げますので、呼ばれた方は担当の騎士について各部屋で休憩をとられて下さい」
小部屋が与えられるとは、ラッキーだ。なるべく恐くない騎士様が護衛についてくれるといいな。
次々と名前を呼ばれて部屋を退場していく合格者の方々。それに伴い騎士様達の数も減っていく。
あれ……おかしいぞ。後部屋に残っている騎士様と言えば……
「リア様。貴女の担当は私が受け持ちます」
マジですか……笑った顔が最高に恐いです、騎士団長サマ。もしかして私、一番の要注意人物認定されました?