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異世界転生して幻覚魔術師となった私のお仕事は、王子の不眠治療係です【電子書籍+コミックス1巻発売中!】  作者: 花宵
本編

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20、さぁ、今こそ冒険へ旅立つ時です

「幼い頃、行き倒れていたらたまたま精霊様に助けられた。そこで教わったのですよ」

「精霊に何かを求めれば、対価にその者の身体の一部を要求されるだろう? 何を支払った?」


 力を求めて精霊と誓約を交わしたとされる過去の英雄達は皆、身体のどこかしらを失っている。耳であったり瞳であったり、指であったり。

 この世界の精霊にとって、等価交換は当たり前なのだ。


「誓約として、最初は両目を所望されました。でも見えなくなるのは不便なので、何とか説得して過去の記憶の産物で許してもらいました」


 元々師匠が私を助けてくれたのは、実験に無垢な子供の心が必要だったから。しかし前世の記憶を思い出した私は見た目は子供でも、中身は無垢な子供でもなくなってしまった。


 行く当てのなかった私は、せめて子供の間だけでもいいからお師匠様の元に置いてくれと頼み込んだ。

 五歳の身体で再び森の中に放置されるより、マシだと思ったから。


 基本、精霊は利用価値のあるものしか傍に置かない。家の中の家事や雑用を全て引き受け役に立つことをアピールし、必死に媚びを売った。

 生活に掛かったお金は将来必ず全額返す事を約束し、なんとか束の間の衣食住を得ることに成功。

 馬車馬のように働きながら、将来のために何か特技を身につけたくて、魔法を習いたいとお願いしたら誓約としてまず両目を寄越せと言われたんだっけ。


 『まず』というのは手始めに使う言葉だ。

 そんなホイホイと身体をあげてしまったら大変なことになる。


 そこで考えた。

 暇で仕方ないというお師匠様にとって、実験は娯楽だった。それなら新たな娯楽を与えてあげれば両目を諦めてくれるんじゃないかって。


 結果的にその作戦は成功し、私は身体のどの部分も失うことなく魔法を習うことが出来た。

 たかーい授業料は払わないといけないけど、あの時の自分、マジでグッジョブ! ほめてあげたい!


「過去の記憶の産物?」

「ええ。王子には前世の記憶はございますか?」

「そんなもの持ってない」

「死に瀕した時、私はそれを思い出したのです。こことは違う世界で生きる自身の記憶を。その記憶の中から、漫画やゲームという名の想像の産物を提供しました」


 読書が好きだった前世の私は、文学書から漫画やラノベまで結構無節操に読みあさってた。

 さらにゲーム好きの弟の影響で、RPGとかもよくやってたし、都会の喧騒を忘れ、二次元の世界に浸っている時間が何気に好きだった。

 そんな今まで読んだりプレイしたことのあるたくさんの物語、それを一つ一つお師匠様に聞かせた。

 長い時を生きるお師匠様にとって、何の代わり栄えのない毎日の中で、私の話した物語はとても刺激的だったのだろう。


 新たなビジネスを始めるのに最適な餌だったようで、精霊の住まう里に私が語った物語を記した本を売り出した。

 たちまちにそれは完売し、とても懐が潤ったらしい。生活費はそれで免除してくれた。

 私に幻覚魔法を教えてくれれば、それらを映像化して見せることも可能ですよと聞くや否や、お師匠様は魔法を積極的に教えてくれるようになったんだっけ。


 精霊の住まう里が前世で言うオタクの聖地、秋葉原みたいになってるなんて口が裂けても言えない。

 まぁ、説明したってこの世界じゃ分かる人は居ないだろうけど。


「漫画? ゲーム?」

「漫画とは全てのページが絵で描かれた本のことです。ゲームとは……って口で説明するより見た方がはやいです」


 説明するのが面倒になった私は、幻覚でゲームをみせてあげた。


 弟のリクに面白いからやってみてと薦められ、ハマるきっかけとなったゲーム。絆をモチーフに描かれた物語「幻想魔鏡伝カタルシス」


 国を滅ぼされ呪いで心を失った王子を助けるため、魔王を討伐すべく旅立つ騎士と王子の友情を描いた物語だ。


 このゲーム、旅の道中で少しずつ王子の心を育てていく要素があるんだけど、育て方間違うと大変な事になる。

 主人公だけに依存させすぎると、病んだ王子が嫉妬で他の仲間を皆殺ししてしまう虐殺エンドを迎える。

 逆に放置しすぎると王子に最後裏切られて、敵として対峙するハメになる。

 接し方次第で人の心はここまで変わるのかと、ありありと教えられたなんとも奥深いゲームだった。


 そうだ、このゲームで友情を学んでもらおう。そうすれば少しは王子の人間不信も治るかもしれないし。


「箱の中で絵が動いて喋っておるぞ!? あの中に人が居るのか?! 何だこれは?!」

「えーと、王子。とりあえず落ち着いて下さい。オープニングが終わったら、コントローラーの真ん中にあるスタートボタンを押して下さい」

「これか? 名前を入力して下さいと出てきたぞ」

「それはゲーム内での王子自身となります。好きな名前を入力して下さって構いません。カーソルキーで文字を選んだら右側の○ボタンで決定です。やり方分からなくなったら、横に助っ人置いてるんで聞いて下さいね」

「分かった……って、誰だアンタ?!」

前世の弟リク(ゲームマスター)です。私はそろそろ寝るんで後は彼に聞いて下さいね。それでは王子、良い夢を」


 なんかぎゃーぎゃー騒いでたけど、まぁいいか。私はもう眠いのだ。


 王子をそのまま眠りへと誘い、続きは夢の中でやってもらうことにした。お眠りになった王子をベッドまで運んでもらい、私は今日のお仕事を強制終了させた。

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