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異世界転生して幻覚魔術師となった私のお仕事は、王子の不眠治療係です【電子書籍+コミックス1巻発売中!】  作者: 花宵
本編

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13、目力を抑えた団長サマは、貴族の令嬢達に大人気のご様子です

 王城の敷地内の東側は貴族に開放している施設が集まっているらしい。私の部屋がある西の離宮から歩いて行くと、それだけで疲れる距離だけども。

 ひたすら歩いて東のエリアに来た時には、すでに汗だくだった。


「リア様、大丈夫ですか? 少しこちらで休憩していきましょう」


 アシュレイに連れられてやってきたのは、カフェを併設したサロンのようだ。

 置かれている家具からして値が張りそうなものばかり。さぞかし座り心地が良いんだろうと腰掛けてみると、お尻が幸せを感じている。

 そして席に着いた瞬間、メイドさんがすかさずやって来てメニュー表を持ってきてくれた。


「好きなものを頼まれて下さい。そのバッジを付けていれば、全て無料で召し上がる事が出来ます」

「これが全て無料なんですか?」

「ええ。特別功労者様の特権ですよ」


 確かにメニュー表に値段の記載はない。

 普段は決して手を出せない、ミューゼ牛のフィレ肉が無料だと?!

 名前を聞いたことしかない高級食材がふんだんに使われたメニューがズラリと並ぶのを見て、私は決めた。


 たとえここまで歩いてくる苦行が待ち受けてようとも──毎日通ってやる!


 離宮で出される食事も確かに美味しいけど、何故かヘルシー志向の料理ばかりだ。女性だからと気を遣ってくれているのかもしれないが、私はがっつりと食べたい。肉を食べたいのだ。


「お食事が終わられるまで、私はあちらに控えておりますので、何かありましたらお呼び下さい」


 そう言って、アシュレイは壁側で待機している。よく見ると壁側には他にも待機している騎士達が居て、彼等は全てここに来ている貴族の護衛かなにかなのだろう。


 アシュレイも公爵という身分を持った立派な貴族だ。だからここで食事をしても問題ないのだとは思うけど、公私混同はしないらしい。さすがは団長サマだね。


 ミューゼ牛のフィレ肉ステーキに、金色小麦の焼きたてパン。新鮮ライギョと黄金野菜のマリネに、白雪芋の冷製クリームスープを頼んで美味しく完食。

 デザートを頼もうかとした時、壁側がやけに騒々しいことに気付いた。何事かと視線を移すと、団長サマが令嬢達に囲まれていらっしゃる。


 なにがどうしてそうなった?


 本来なら、ご令嬢達はヒールの高い靴を置き去りにして裸足で逃げ出す。それくらいの本気度で逃げていかれるはずだけど……そっか、今イメージ操作で目力隠してたんだっけ。


「よろしければご一緒にダンスでもいかがですか?」

「それより向こうでダーツしましょうよ!」

「いいえ、あちらでビリヤードをやりましょう!」

「そんな事よりおすすめの本を紹介して下さいまし!」


 ビリヤードにダーツ場、ダンスホールが開放されて図書館が使えるんだね、なるほど。


「あちらでアクセサリーを選んで頂けませんか?」

「それよりも私に似合うドレスを選んで下さい!」

「いいえ、靴よ!」

「いいや私の帽子を!」


 へぇー向こうには出張販売まで来てるんだ。王族御用達の宝石商に衣装屋、靴屋、帽子屋まである。食べ物の露店はないのか、残念。


「いえ、あの……今は職務中なので……」


 珍しく団長サマがたじろいでいる。モテ期を味わった団長サマがどうなるか観察していると──目が合った。


「アシュレイ、行ってきて構いませんよ。私はまだデザートを食べますので」


 行っておいでよとゴーサインを出すも、何故か団長サマはこちらにズンズンと長い足を動かして近付いてくる。


「リア様! もう行かれるのですね! 分かりました。それではお嬢様方、失礼致します!」


 おい、ちょっと待て!

 人を抱えて逃げるんじゃない!


 デザート!

 私はまだ、デザートを食べていないのだよ!

 おろしてくれー!


 人気の無い中庭まで来て、やっとアシュレイはおろしてくれた。


「どうして逃げたのですか? まだお楽しみはこれからだったのですよ?」


 主に自分のお楽しみが。デザートが食べられなかった恨みをこめて、非難がましくアシュレイに視線を投げかけた。


「すみません。まさかあの様に言い寄って来られるとは思いもよらず、初めて恐怖を抱きました」

「……恐怖?」

「むせかえるような強い香りを放つ令嬢達の香水が入り交じって、まず始めに嗅覚をやられました」

「……はぁ、なるほど」

「近くで見た令嬢達の顔にはひびが割れたように線が入っておりました。それはまるで壊れた仮面のようでした。どの方向を見てもその恐ろしい仮面があるのです。そこで視覚がやられました」

「……へぇ、なるほど」

「嗅覚と視覚を奪われ頼りになるのは聴覚だけです」

「近くで金切り声をあげるお嬢さん方の声に、今度は耳がやられたと?」

「よく、分かりましたね」


 目を丸々とさせて驚きを露わにするアシュレイ。さらに彼は言葉を続ける。


「視覚、嗅覚、聴覚を奪われた絶望の中で、私の前に一人の天使が舞い降りてきました。優しく私の名を呼ぶその天使の声に導かれ、気が付いたらここに居ました。やはり天使の正体はリアさ……」

「早計なのです! 天使など、架空の生物がいるわけないでしょう! アシュレイ、あなたがそこまで意気地なしだったとは思いませんでした。男なら、たとえ視覚、嗅覚、聴覚が奪われようと、立ち向かわねばならぬ時があるはずです! それがいつかって? 今でしょ! ということで、戻りますよ(デザートを食べに)」

「分かりました、リア様。この試練、絶対に耐えて見せます!」


 その後、私がデザートを美味しく頂いている間、アシュレイはひたすら令嬢達に囲まれて修行僧みたいに何か必死に耐えているようだった。

 流石にそろそろ可哀想かなと思い、サロンを後にしようとしたその時──


「まぁ、貴女がリア様ですね? 弟がいつもお世話になってます」


 目がくらむようなまばゆい光を放つ女性に話しかけられた。

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[一言] 「近くで見た令嬢達の顔にはひびが割れたように線が入っておりました。それはまるで壊れた仮面のようでした。どの方向を見てもその恐ろしい仮面があるのです。そこで視覚がやられました」 ここで爆笑し…
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