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竪琴宇宙のサクシード  作者: MAD-WMR
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1-6 物質生成器

物質生成機。

設計図があれば材料から機械や物質を作れる機械だ。

この時の材料というのは原料となる物質でも良いし分子、原子単位の物質でも良い。

非常に便利な機械だけど欠点も多い。


製品、例えば採掘機なら採掘機の完成品を作る事が出来る。

ギアとかネジとか電気回路とかそういったものを含めて完成品だ。

もちろんパーツひとつを作る事も出来る。

ただ稼働に非常に大きなエネルギーが必要になる。

正直普通に造った方が効率は良いし製品の量産には向いていない。

短時間で完成するのが利点くらいか。

リラ6では2基が稼働しているらしい。

2基あれば片方が使えなくなっても物質生成器で物質生成器を作れるからだ。


じいちゃんから聞いた話しだけれど物質生成器は移民初期に使用されていたそうだ。

発電プラントや浄水、取水施設などすぐに必要な大型機器に使われたと聞くと納得だ。

今はアーコロジーの建設時や宇宙船のパーツに使われているみたいだ。

生産工場を作るほど供給が必要なくそれでも必要な大型機械の作成に使用されている。


融合病で失われなかったのは生き残った建設中のアーコロジーに設置されていたからだ。

融合病後の復興がスムーズだったのも生活基盤のインフラ設備はこれで用意出来たからと言ってた。

データベースには記載があるがリラ6で使用されているとは書かれていなかった。

そんな機械があると知っている人も少ないらしいので行政府が管理しているのだろう。


設計図が必要という条件はあるがどんな物でも作れる夢のような機械なのは間違いない。

機械だけでなく食事や服なども作る事が出来ると聞いた。

宇宙船に搭載する為に作られたらしいが結局小型化出来ていないらしい。

今のサイズで宇宙船に積むならそれこそ移民船くらいの大きさが必要だろうと言われている。

リラ6にあるのも移民船に積まれていたものだろうな。


「物質生成器と言う言葉に反応されるのであればご存知なのですね。

 先にリラ6についてもっと詳細に情報を得るべきでしたね。」


「本当に物質生成器があるのか?」


「ツキヨミは物質生成器を使用した最新鋭艦でした。

 長時間の宇宙探査では発進前後の技術しか利用出来ません。

 距離が離れるほど情報伝達に時間が必要となる為です。

 ツキヨミは提供された情報を元に随時機能、技術を更新する事が可能な艦です。

 また観測機器などは必要な時にのみ生成し使用後には資源を回収出来ます。

 これによって船を小型化、軽量化しより高速、長距離探査が可能なのです。

 ツキヨミとしてであれば可能ですので今回は採掘機の補填に使用させて頂きます。」


やっぱり移民船でも使われていたんだろうな。

資源を回収できるのは初めて知った。

宇宙船に積むのを考えれば理想的なシステムだ。

セリナが言ったように大量の器材を搭載して重量が増加する事がない。

物質生成器と推進機、動力、AIセリナなら食料や水、空気関係は省けると思う。

かなり小型に出来るから長距離探索には向いている。

軽量ということはそれだけ速度も出せるはずだしな。


ツキヨミという船、それにAIセリナが使用されている理由でもあるかもな。

コンピューターによる無人機だと指示しないと行動出来ない。

あらかじめ入力しておいても途中でトラブルがあったらそれまでだ。

AIセリナなら人間と同じように判断出来るだろう。

トラブルにも対応できるし宇宙船が破損してもその都度生成器で作り直せばいい。

調べて必要な補修箇所は判断出来る。

観測も予定地点で必要な機材を用意して観測、データを送信して器材は片付ければいい。

定期的に連絡していたのだとしてもその送受信機器もその時だけ作っていたのかもな。

おそらくそれで今は機器が無くて連絡が出来ないという事だろう。

何かあった場合に必要な機器が搭載されていないという事がありえるのか。

そうなると物質生成器に頼り切りというか機器の削りすぎも危険なのか。

有人宇宙船に積んだら結局普通の宇宙船としての機能は必要かもしれない。


「イスト、何か考えこまれているのですか?」


「物質生成器とかについてだ。それは俺でも使えるのか?」


考えていたのは他の事だけどセリナの問い掛けには別の返答が口から出た。

使えるなら便利で良いからな。


「制限はありますがツキヨミとして稼働させる時であれば融通しても構いません。

 ただし必要な資源とエネルギーは提供して頂きます。」


「使えるならどんなものなら作れるんだ?」


「技術的に制限があるのは確かですがそうですね。

 現状に有効なものであればマスドライバーなどはどうでしょうか。

 採掘した資源の輸送用と言うことであれば問題ありません。」


「マスドライバーって確か軌道上に物資を運ぶというか打ち上げるものだろ。

 リラ6だと軌道エレベーターが簡単に設置出来たから作られなかったと聞いてる。」


「そうです。宇宙での輸送方法としては設置さえすれば比較的安価で行えます。

 この辺りからリラ6への距離はどれくらいですか?」


「リラ6までなら58億キロくらいだぞ。」


「そうなるともう少し接近した場所に設置した方が良いですね。

 距離が遠いと誤差範囲が増えるので修正が大変です。

 マスドライバーでリラ6の軌道上へ物資を送り込めます。

 発射時の計算ミスという事にして軌道を突破する速度で射出すれば良いでしょう。

 荷物に炸薬などを仕込んでおけばより良い効果が得られるかもしれません。」


炸薬って爆発物だろ。それを軌道を突破する速度で打ち出すだと。


「セリナ、それは海賊の船に撃ち込むと言う事か。」


「イスト、マスドライバーの使用方法を説明しているだけです。

 あくまでもリラ6まで物資を輸送する方法です。

 すでに知られている技術であれば提供しても問題はありませんから。

 それが実際リラ6に無くてもリラ6側でどのような使用をされても問題ありません。

 情報提供の対価として輸送手段としてのマスドライバーを提供しただけです。

 報告の必要があればそう報告するだけです。

 人間が持つ科学力はすなわち武力です。兵器です。

 それはどれだけ時間が過ぎても変わりません。

 そうなくなっている時はすでに人間では無いかもしれないと考える学者もいました。

 だから提供した技術は好きに使用してください。」


建前が必要という事だ。

提案した時点で海賊に使う兵器として考えているだろうに。

対価として提供しただけ、後はどう使っても構わないか。

軌道上の船に向けて撃つならコンテナとかじゃなくても小惑星とかでもいい。

設置場所があれば確かに一案だ。


「マスドライバーの設置場所と必要資源によるな。結構有効そうだ。」


「船の性能、能力次第ですが軌道上から退避を強制させられればその間に攻撃が可能です。

 また移動させる事で質量兵器を惑星に向けて撃てないのであればその点でも有効でしょう。

 無数の物資を使用すれば複数をほぼ同じタイミングで打ち込めます。

 準備は大変ですが同時に船のセンサー系を妨害すれば撃墜も可能かもしれません。」


「その辺りは調べてみないと判らないな。

 技術にどんな差があるのかこっちはほとんど情報が無いんだ。

 他にもなにかあるか?」


「レーザー推進機は判りますか?」


「宇宙関係が多いな。宇宙船関係の技術は色々知っているから答えやすいけどな。

 それはレーザーを宇宙船に向けて撃つことで加速させる方法じゃなかったか。

 外部出力で初期加速を得られるから推進剤の節約とか利点があった気がする。」


「これについては照射するレーザーはご自由に調整してください。

 別に出力が高くても宇宙船の加速にだけ使わなくても良いのです。

 設置場所が惑星近くでないと効果的ではありませんね。」


レーザー、つまりは光線を放射する装置だ。

宇宙船じゃなくて惑星とか衛星とかに設置して使用する。

それを提供するから兵器転用しろって事だ。


「少し対策が必要ですし宇宙船には効果が薄いかもしれませんが恒星フレアについてはどうでしょう。」


「恒星フレアは電波バーストや高エネルギー粒子の放出が起きる現象だろ。

 宇宙船だと影響する事がある。」


「それについての研究次第ですが誘発方法はあります。」


「現象は知っているしデータベースにある。

 それの研究がされているかは知らない。」


「宇宙船であれば対策されているはずなので効果は薄いと思われます。

 誘発させることで自然現象に見せかけた電波妨害手段になるくらいですね。」


「宇宙船そのものは無理なのか?」


「さすがに機器くらいであれば良いですが船すべては無理です。

 宇宙船の武装も当然無理です。

 武装については簡単なのは核兵器ではないでしょうか。

 その技術があるかどうか、文化圏的に忌避されている可能性もありますか。」


「核兵器か。存在は知っている。作れると思うけどリラ6にあるかは判らない。

 あるとしたら戦争になったらリラ6が滅ぶくらいなら使われるかもな。

 ただ地上から撃っても効果は薄いだろう。迎撃されると思う。

 出力の高い光線兵器が向こうにはある。」


「地上からの飽和攻撃に対しては報復の質量兵器という最終戦争状態ですね。

 宇宙からも同時に使用するのが良いでしょう。

 もっと単純な手段として宇宙船に核兵器を搭載し激突させるのはどうですか?」


「それは無理だ。すでに似たような事が試された。

 奴らは一定範囲に近付いた船とか物体は撃破する。

 試して有人だろうと普通に撃破された。

 その辺りが緩む事の無い奴らだから今も恐らく撃墜される。」


「搬入される物資に爆発物なり毒物はどうでしょう。」


「物質生成器を使わなくても良い手段だぞ。

 搬入されても一隻だけだ。交互に期間を空けてしか運ばれない。

 危険物が発見されれば質量兵器が使われるのは宣言されているから無理だろうな。」


「人間でも時に長期間、厳しい規律でも過ごせるのですね。

 内部からではなくやはり外部からの直接攻撃が有力でしょうか。」


ちょっと乱暴になって来ているぞ。ついでに言うと話が凄く逸れている。


「セリナ、話し込んでからなんだが海賊関係は後だ。

 物質生成器で夢中になって俺も悪かった。

 物資採取が必要で移動したいという、採取場所に行きたいって事なんだよな。

 さっさと航路を決めて移動を始めよう。」


ひとりだったらもうこの小惑星からは離れているだろう。

そうだな、移動が始まって落ち着くまで情報分析をしていただろうな。

睡眠は比較的問題がない航路の時間帯だろうしそれも操縦ブロックでだ。

他の時間帯は作業、何もなければ休憩としてここでデータベースから適当に情報を見る。

こうやって話をしながら作業は懐かしいな。

じいちゃんに色々な話を聞いていたから結構ひとつの作業に時間が掛かっていたんだな。

俺が小さかったとか作業に慣れていないのももちろんあったけどな。


「当個体機能の修復に必要な資源と稼働エネルギーを確保する予定です。

 物質生成器の稼働には大量に必要になりますので効率的な採取計画が必要です。

 船の航路に合わせて無理なく計画しますので船の推進力など詳細な情報を教えてください。」


「船のコンピューターと比べるという話だったな。

 この船の情報も秘匿情報だぞ。

 セリナを船員として登録して端末を使えるようにするから自分で調べてくれ。

 さっきの情報検索と同じだ。コンピューターに明確に音声指示をしても表示出来る。

 船にある情報ならなんでも見てもいいけど一旦作業優先だ。」


船の情報や性能が知られても構わないだろう。

端末に乗員として情報を打ち込むが住所などほとんど空欄なのは仕方ない。

権限としては普通の船員で良いな。

空欄が多くコンピューターから警告があったがそのまま登録する。

そういえば船員登録をするのは初めてだな。

自分の登録はじいちゃんと一緒にやったけどあれも勉強だったんだな。

こうやって登録する時にどこに何を記入すれば良いかは困らなかった。


「これでセリナでも使えるはずだ。船内の移動も自由に出来る。

 必要があれば後で案内するからまずは航路を出してくれ。

 予定航路があればこっちはコンピューターで航路を調整しておく。」


「了解、イスト船長。予定航路を送ります。」


「船長とかやめてくれ。イストで良い。」


「イストがこの船の船長で当個体は船員となりましたから呼称としては正確です。」


採掘屋とか船乗りで船長と呼ばれているのはベテランでさらに大型船だけ。

俺なんかが船長なんて呼ばれるのも呼ばせるのもまだ早過ぎる。

いずれ呼ばれるようになりたいとは思っている。

じいちゃんが他の船乗りたちにそう呼ばれていたからな。


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