表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竪琴宇宙のサクシード  作者: MAD-WMR
72/82

4-18 フリーダム施設潜入:5 転送網計画

施設の確認、とは言ってもすでにここに潜入する時にもある程度は見ている。

もう少し細かく調査、分析が必要ということでセリナと共にあちらこちらを見て行く。

制御室、各居住区、動力部、保存庫等重要施設が中心だ。

各通路や部屋の構造等は特に変わった物が無く興味を惹かれる事は無かった。

リラの施設との大きな違いは案内などがフリーダム言語で書かれているくらいか。

宇宙空間で使われる施設だとどうしてもスペース、空間を有効に利用するという前提がある。

その為にどうしても制約があり技術的にかなりの差が無ければ大きな差は出ない。

技術という点では動力部、融合炉もそれほどの差は無いそうだ。

使われていたのは大型の核融合炉。

部分的にはリラより優れている部分もあるがリラ側の方が良い部分もある。

そういうフリーダム側の技術についてはリラすぐに再現出来るレベルだそうだ。

この辺りはセリナの分析と解析と解説。

フリーダム側はもっと優れた技術を持っているのかもしれない。

ただ奴隷に扱わせる技術という事で既存の技術で良く使われている物を採用しているようだ。

奴隷にフリーダム側の技術が流れないようにしているようだ。

占領した星の技術レベルに合わせた技術を使用しているのかもしれない。

首輪といいAIによる管理といいとにかくフリーダムは奴隷に反抗させないようにしている。

後は良く知られた技術というのは扱いやすく長く使う分には問題が無いという点もある。

施設全体としてとにかく長期間使用出来るようにしてあるようだ。


施設の食料事情についてはひどいものだった。

3cm四方、ブロック状の固形食が保存庫には詰め込まれていた。

一個で一食分、1日に2個が支給されていて栄養や必要カロリーはそれで充分に取れる。

味は3種類しか無いしひとつ試しに食べてみたが美味しいものでは無い。

保存庫にあったコンテナにはそれが詰め込まれており施設人員の消費で20年分はあるそうだ。

リラの食料が喜ばれるのも頷ける話。


各施設をセリナが物質生成器で分析、解析をして回った。

一番時間を掛けたのは施設の縦部分、最初に侵入した大型機械の並んでいた場所。

大型機械はそれぞれが同型のコンピューター。

結構な数があるようだが施設ではもっとも重要な部分。

片側で3層、二部屋分に並んだコンピューターの8割を稼働させる事で施設は稼働する。

施設の稼働というのはつまりは転送機に使っているということだ。

施設管理のAIも奴隷の管理ではなく施設の稼働をするのを中心に使われている。

疑似人格も搭載されておらず管理するだけのAIらしい。

フリーダム艦のAIよりも一段落ちる性能らしいが施設稼働だけで見れば艦AIよりも優秀。

要は特化型のAIという事だ。

AIについては物理的介入も行って制圧したのですでに完全にセリナが掌握済み。

表向きは今まで同様の動きをしているのでフリーダム側に感知される事も無い。

セリナが言い切っているのだから大丈夫なのだろう。


施設を見て回ってから次に向かうのは施設中心部。

エアロックから出て向かうのは施設に囲われた大型鳥居、つまりは転送機。

鳥居の足部分、柱かな。片側少し破損しているが爆発とかでの破損では無い。

おそらく船等大型物体との衝突による破損らしい。

壊れていない側にある手動ハッチから内部へと入っていく。

非常用の出入り口で手順が判っていれば入れる場所。

そこから入るのは施設側に反応されない為で念の為。

AIはすでに掌握しているから普通に入っても問題は無いらしい。

それでもセリナが見つけていない部分があると危険なので避けたようだ。


鳥居の中、幅1mちょっとの狭い通路を進んでいく。

内部は空気が無く重力も発生していない。

元々長期間宇宙に放置する施設なので真空中での使用を前提としている施設。

動力炉は最低稼働されており施設内は電力が生きている。

それでも緊急用の通路だと証明が落ちていて宇宙服の照明でセリナが先行している。

機械の稼働音も無く照明も無く稼働中の施設とは思えない程静かだ。

施設内の案内はリラでも使われている言語とフリーダムの言語、両方で記載されている。

通路を降りて行き頑丈な扉横にある端末をセリナが操作すれば扉は開かれた。


「ここは動力管理室の一つです。

 施設全体の確認がここから出来ます。

 また施設を稼働させるにはまず動力を稼働させる必要がありますがそれもここから可能です。」


中は小さな部屋だが奥に操作端末が並びその前はガラス張りで施設内が見えた。

ガラスの向こうにあるのは所々明かりが灯っている施設で動力部だな。

宇宙船の融合炉を大型にした物、ステーションでも使われているような大型炉だろう。

セリナはさっそく操作端末をいじり始める。

すぐに部屋の照明だけでなく隣の施設、動力炉のある部屋も照明が灯る。


「この転送機はこちら側の技術のまま使用されています。

 動力炉も見た限りでは元々使用していた物が再現されているようです。

 フリーダム側の動力炉を使用した方が性能が良いのですが置き換えなどされていないようです。

 まだ確認出来ていませんがどうやら完全なコピー品となっているようです。」


「コピーじゃダメなのか?」


「わざわざ性能の低い物を使う必要はありません。

 入手した技術であれば解析しそれを自分たちの技術で再現するのが普通です。

 実際にリラでもレールガンは設計図を元にリラの技術で作られました。

 リラの技術で設計図の性能以上の部品や機械も導入されて作られています。

 技術解析をすればリラでももっと高度な技術で再現する事が可能なのです。

 もっと性能の良い器械に出来るのですがフリーダムはそれを行っていません。

 入手した技術の使い方としては不完全と言えるでしょう。」


手に入った謎の技術を解析すれば当然それを使えるようになる。

フリーダムはそうせずに単純にコピーしているだけという事らしい。

施設の制御系プログラムは複数AIよって暗号化した物が使われているそうだ。

この制御系の解析が出来ない為に念の為に施設全体をコピーを使っている可能性。

施設を使えるようにしたが技術解析は出来ていない可能性。

もっと色々な可能性を推測出来るが結局はフリーダムに聞かないと理由は判明しない。

そういう話している間に動力炉の稼働指示と施設の確認が終わったようだ。


結果としてはこの施設は作られた時のまま完全な再現がされているようだ。

施設の稼働についてはセリナであればすぐに可能、通信も転送も出来る。

動力炉を稼働して結果を確認したが施設側のAIは転送機の稼働を確認していない。

この転送機自体セリナがさっき説明していたように外部から操作するように作られている。

フリーダムは周辺の施設、建造物のAIを通じてゲート、この転送機を使う。

だがセリナはその周辺施設を経由せずに転送機を稼働出来るのだ。

そうやって転送機を直接稼働した場合、AI側に記録などは残らず使える。


「イスト、予定を大きく変更します。

 フリーダム側の転送網を利用して各地に新たな転送機を設置します。

 新たな転送網を形成する事で通信範囲を広くすれば当政府と連絡が可能かもしれません。

 また転送網を構築する事でフリーダム側の転送網を排除、その移動を封じる事が可能です。」


フリーダムの転送網をそのままセリナが使って転送網、通信網を構築するのか。

確かにそうすれば通信範囲は広くなるだろうな。

さっき見た星系図としてはリラからなら100光年以上は広がるはずだ。


「転送網を設置するならどうせ止めても聞かないだろうがどうするつもりだ。

 計画があるなら良いが転送機を運ぶのも大変だろう。

 時間がかなり必要ならこちらは一度リラに戻る必要があるぞ。」


多分この予定変更、こちらが口を出しても止められない気がする。

元々お互い制限出来る立場でも無いからな。


「転送網の設置にはそれほど時間は必要ありません。

 各所で1日もあれば十分です。

 直接当個体を転送させフリーダムの転送機から離れた場所に転送機を建造します。

 物質生成器を使用して建造する事で何度も行っている作業ですから1日で偽装も可能です。

 問題点としては建造に必要な金属、主に鉄資源の不足です。

 これについては周辺探査を行っており採掘可能な小惑星があります。

 そちらから確保すると同時に大型の小惑星ですのでそこにも転送機を設置予定です。

 この転送機についてはフリーダムの襲撃に対して奇襲を行う場合に有効です。

 また同時に防衛拠点として建造しておけばこの施設周辺の監視が可能となります。」


「待て待て。直接セリナが行くのか?」


「もちろんです。この転送機は完全な再現がされていますから問題なく転送可能です。

 人体転送においても問題ありませんが当個体によって実験を行うのが安全面でも最適でしょう。」


まあそりゃそうだが。

元々ツキヨミとして転送網を構築していた訳だしな。


「それにしても1日で作れるものなのか?」


転送機、大型鳥居は全長が150mもあるような大型施設だ。

物質生成器と言ってもそんな簡単なのか?


「当個体の物質生成器であれば可能です。

 実際に小惑星で建造しますので確認してください。

 イストには可能であれば小惑星での採掘をお願いします。

 必要な機材は生成しておきます。

 当個体が各地で転送機を建造している間に資源採取を行って頂ければ資源採取の時間を短縮出来ます。

 最低4基、出来れば5基建造すれば通信網としては問題ありません。

 通信が出来なかった場合、可能であればもう1基建造し移動させる事で通信網を拡大させます。

 これについては各星の情報を捕虜、移民たちから得てからでも問題無いでしょう。」


セリナが出来ると言うなら問題ないのはこれまでで判っている。

小惑星での採掘も問題はないだろう。

通信網を構築とはいきなり大きな予定変更になったな。


「なあ、その転送網を俺が使うのは出来るか?」


「工夫が必要ですがイストが利用する事も可能でしょう。

 すでに情報として知られていますから技術解析をしないのであれば利用は問題ありません。

 ただし当個体無しでは転送網としては利用出来ません。

 通信網として使用するのであれば専用の通信機を設置すれば限定使用は可能です。」


使えるのか。無理だろうと思って聞いたんだがな。

工夫が必要という点は気になるがそれでも使えるのか。

どこに行けるかか?

さっき見た星系図と転送機の配置からすれば行ける場所は限られる。

行ける場所としてはフリーダムに支配された惑星くらいだな。

それだと無理して使うことも無い。

変わった天文現象の観測とか遠く離れた人の手の入らない星系の探索とか出来ると良いけどな。


融合炉の起動待ちの間に施設を案内、見学したが何も無い。

長いメンテナンス用の通路、3か所にある動力管理室しかない。

10mほどある外殻のおかげで内部空間の余裕がほとんど取れない。

施設として稼働させるには内部空間すべてを使うかなり無理した設計。

施設内部は放射線などの影響で人間が入る事は出来ないそうで見る事も出来ない。

本当に見る事が出来ないのか見せられないのかはまあ良いだろう。

結局施設見学としてはリラだと資料でしか見た事がない古い動力炉を見れた事くらいか。


施設内で2か所、何も無い空間があったのだがそこはボードロン施設の場所。

ボードロンはこの施設のメンテナンスをAI制御で行っている。

セリナの推測では綺麗に喪失しているので侵入者対策としてボードロンが自壊したらしい。

戦闘用でもないボードロンは解析されると施設について色々と知られてしまう。

いくつかの条件で完全に自壊するようにしてあったようだ。


あとこの施設はセリナが42番目に建造した端末、転送機のコピー。

セリナの星から240光年付近に設置していた端末らしい。

ボルトの位置と組み合わせでどのAIが何番目に建造したかを示しているそうだ。

AI間でしか情報共有していない物理的な識別方法を密かに設計段階で織り込んだ。

自身で作った物を自身で確認するとは思わなかったようだ。


転送先の転送機に光子通信によって動力炉の稼働の指示も送った。

そちらも無事に稼働するようで実行待機中。

ガーランド到着までは小惑星への移動、採掘計画等これからのスケジュールを立てていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ