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竪琴宇宙のサクシード  作者: MAD-WMR
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4-16 フリーダム施設潜入:3 奴隷たち

最初に対応するのは管理奴隷3名。

上部にある制御施設で2名、自室で1名が無力化されている。

すでに施設はセリナの制御下、封鎖されている区画のロック解除、与圧など移動経路の確保は簡単。

それらを行ないつつセリナは先に侵入時に生成した通路等をすべて元の状態への復元作業を行った。

これで侵入や占拠された事が発覚してもその方法は不明なままになる。

各通路を与圧しても良いのだがこの施設での活動中は宇宙服を脱がないと指示されている。

ヘルメットが特殊でこちらの顔が見られないからで正体を隠す為だ。

それなら与圧してもあまり意味は無く最低限に留めている。

元々与圧されている管理奴隷たちの自室がある居住区側は全て与圧。

侵入した居住区とは反対側の区画になる。

それの完了時間を待つ間に制御施設へと移動した。


施設の制御室はリラのステーションと比べて小さいけれど中の構造はそれほど変わらない。

幾つもあるモニターは監視用であり施設状況を表示している物でもある。

席は3つ、正面の壁に向かって2つ、その後方にある席は背後のモニターを見るようになっている。

背を向ける配置でうまく仕事になるのかと思うがなんとかなるんだろうな。

部屋の大きさとしてはガーランドの操縦席くらいなので本当に小さい。

AIが施設を管理しているそうだからこれだけ小さくても良いのだろうか。

施設の高さ、全高としてはガーランドと同じくらいだからこんな大きさになるか。


そんな風に部屋を確認して思案出来るのはセリナが管理奴隷たちを確認しているからだ。

管理奴隷はすでに無力化されておりそれはその首にある首輪の機能によってだ。

首輪は奴隷が着けているものでAIが管理、制御している。

位置情報や体調管理などが可能で暴れたりした場合は無力化したり拘束するのにも使われる。

個人単位への連絡手段でもあり奴隷からAIへの連絡手段にもなっている。

結構物騒な代物で施設から一定距離離れた場合即座にその奴隷は処刑されてしまう。

奴隷を支配する為の道具がこの首輪。

そういった情報はAIから得ているが構造や設計図は無かったそうだ。

セリナは万が一奴隷たちが情報を手に入れて解析されるのを避ける為の措置と推測していた。


「この首輪ですが脊髄へのインプラントとなっており外す事は考えられていません。

 インプラントというのは機械によって身体を強化する為のものと考えてください。

 人工筋肉、強化神経や義眼など多種にわたり当個体もそのような技術が使われています。

 この首輪はそのような強化機能は当然無く管理、制御に特化したものです。

 薬品の投与や必要であれば神経作用による制御が可能です。

 思考能力を鈍化し従順にするだけでなく必要であれば肉体限界を超えて労働させる事も出来ます。

 人間をコントロールする手段としては最適な道具となっています。

 類似品としては捕らえられた犯罪者に対して使用していた道具がありそれの発展系でしょう。」


物質生成器で首輪を分析していたセリナからの報告。

奴隷を動物のように管理する為の首輪でありセリナとしては許容出来ない機械という発言が続いた。

人間を支配する為の道具というのは良いものじゃないしむしろ駄目な物だろう。

セリナは首輪を複製するなどしてもう少し細かく分析を行なうそうだ。

首輪で管理されている個人情報が複数あった場合の影響などを調べるそうだ。


セリナにしか出来ない調査は任せておく。

俺は渡された道具で管理奴隷たちを拘束するのが担当になった。

銀色のケースから取り出した注射器にアンプルをセットして首筋に打ち込む。

24時間程動けなくする薬品で麻酔の一種、長く使われているので安全性に問題は無いらしい。

拘束した奴隷たちはガーランドに運び込むから宇宙服を着せてから両手両足に拘束具を着ける。

動けない人間というのは結構重くてその作業としては結構な労働だ。

制御室に居る1人をセリナの指示で投薬を試してから自室に居るもう1人を拘束した。

ガーランドに運びやすいように外部に続くエアロック前まで運び通路に寝かせておく。

この自室側は空気も重力もあり背負って運ぶしかなくて結構な労働だった。

この作業が終わるまでは無重力で良かったんじゃないか。


作業が終わって制御室に戻ればセリナが首輪を調べていた1人をすでに拘束していた。

結果としては首輪の複製は無理だったそうだが計画に変更は無いそうだ。

その計画とはこの施設の人員は事故が起きて全員死亡扱いとなりリラへ輸送するという物。

事故は小惑星の衝突にするので後で適当な大きさの小惑星を探して実際にぶつける。

偽装工作が必要らしいがその計画はすでにあるそうだ。

この施設関連についてはセリナの作戦でありセリナが実行するのでこちらが口を挟む事は無い。

制御室で拘束した管理奴隷を運ぶのについてはちょっと文句を言った。


管理奴隷からも後で話しを聞くというか尋問するそうだ。

フリーダム側の人間であるのは間違いないだろう。

残った労働奴隷たちは首輪の機能と施設側の放送、両方で呼び出し招集する。

管理奴隷たちの区域、今居る区画に会議室があるのでそこで面会を行う。

この区域は労働奴隷たちは基本的に来る事は無い。

許可があれば来られるそうだが今まで一度もこんな呼び出しは無かったそうだ。

突然の呼び出しに戸惑いながら区域間に集まってくる奴隷達。

区画を隔てる厳重な扉が開いたので指示に従って奴隷たちが移動してくる。

ボードロンが天井に張り付いて追跡しているからその映像でその様子を見ていた。


部屋に入って来た労働奴隷達は宇宙服着用、ヘルメットも外さずバイザーも開けていない。

黒い宇宙服の二人、こちら側を見ても特に大きな反応は無い。


セリナが声を変え大人の男性の声で指示していく。

セリナの存在は今は隠しておくそうだ。

発言はフリーダムの言語で翻訳された音声はセリナの声で聞こえるから違和感が大きい。

奴隷たちの名前を確認しながらヘルメットを取らせ着席させていった。


「まず我々はフリーダムの人間ではない。

 この施設はすでに我々が制圧し支配下に置いた。

 ここにあなた方を呼び出した事からもそれを理解して頂けるだろう。」

 

セリナの背中側、奴隷たちの正面のにある大型モニタに画像が表示される。

エアロック前で拘束されている宇宙服姿、管理奴隷たちが捕まっている様子だ。


「管理奴隷たちはすでに捕虜となった。

 勝手ながらあなた方も我々の捕虜とさせて頂く。

 今後の対応だが我々はあなた方から対価を得たい。

 その後奴隷から解放、近くの居住惑星へ移住して頂く。

 惑星の市民権が得られるようにも働きかけよう。

 この施設で奴隷となっているよりは良い生活が出来るだろう。

 奴隷解放の選択を受け入れられないならば申し訳ないが処刑処分とさせて頂く。

 すでに各々のスケジュールも変更してあるので以降の仕事は中止となる。

 こちらもあまり時間は無いので申し訳ないが今ならば質問を受け付けよう。

 発言したいも者は挙手を行え。こちらが指名した者の発言を許す。

 では何か質問はあるか?」


こちらからの選択を一方的に通達する。

捕虜の扱いは色々あるそうだがリラでは特に決まりは無かった。

リラ以外に人間が居ないのが普通だったので何も決まっていないのだろう。

単に捕虜と言うのは他の星とかがあって成立するものだから当然だ。


「星への移住ということですが宇宙の施設で暮らす事は出来ますか?

 もう30年程宇宙暮らしなので出来れば宇宙で暮らしたいのです。」


最初に挙手した奴隷はかなりお年寄りの奴隷だ。

返答は希望があれば出来るだけ居住場所、仕事については考慮を行うというもの。

その奴隷はそれを聞いてすぐに移住を選択した。


「古老、そんな簡単に決めて良いのか。」


「ワシは生き続ける事を選んだ。ここの奴隷から解放されてもそれは変わらん。

 仕事をして食事を得て生き延びる。それはどこでも変わらん。

 なら捕虜より移住を選ぶのは当然の選択。

 奴隷から解放されるなど諦めておったしな。

 お主たちも生き残る事を優先してここに来たのじゃろう。

 そこから解放されるも死ぬも勝手に選ぶがいい。」


そんな会話が続けられる。

最初に選択した奴隷はここの奴隷たちのまとめ役だろうか。

キリアトさんより年上、サトウのじいちゃんよりは下だろうな。


「対価が何かとどんな星に移住出来るのか教えて欲しい。」


「移住先は現地でリラと呼ばれている星系となる。」


「リラに行くならすぐにフリーダムの奴隷になって終わりじゃないか!」


発言した中年の男がセリナの返答に声を荒げた。

フリーダムが今リラに向かっているのを知っているという事だろう。


「モニターの映像を見てください。

 信じなくても構わないがリラは惑星周回をしているフリーダム艦を撃破している。

 その後リラ星系に接近中のフリーダム艦5隻に対して迎撃戦を敢行。

 4隻を撃沈、残った一隻には資源を提出させリラ周辺への接近禁止を通達したそうだ。」


モニターに表示されたのはリラ軌道戦の映像とフリーダム艦5隻との戦闘映像。

5隻との戦闘は色々な映像を編集した物になるが戦闘時間がかなり短い。


「これは本当なのか。」


「リラ星系はフリーダム艦と戦闘を行い勝利した。

 こちらにはフリーダムの情報が非常に少ない。

 今後報復攻撃が可能なのか、続いての侵攻、侵略が行われるのか、どのような戦力が残っているか。

 そういった情報がこちらの求める対価だ。」


「そんな情報だけで解放してもらえるのか?」


「フリーダムは一切の情報を外部に出していない。

 こちらが知るのは外部から分析した船の情報や初期の取引で得た僅かな情報。

 それと比べれば奴隷として働いていたあなた方の方が有益な情報を持っているはずだ。

 リラは今後もフリーダムの艦が訪れるのか?報復があるのかを切実に知りたいそうだ。

 そういった情報を持ってはいないか?」


奴隷たちが何人か互いに顔を見て伺っている。


「確実では無い事で良ければ話せる事は多い。

 確かにフリーダムについては多くを知っておるよ。」


古老と呼ばれた奴隷が話す。


「ではまずフリーダムの戦力について教えて頂きたい。」

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