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竪琴宇宙のサクシード  作者: MAD-WMR
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4-10 大型光子ロケット~作戦準備

順調に航海しているステーションだがまだ加速は続けられる。

これまでは小型光子ロケットを最初は1其、途中から2其使っての加速だった。

いよいよギルドが新造した大型光子ロケットによる加速が始まる。

これが上手く行くかどうかが問題だ。

フリーダム艦との戦闘では今の速度でも問題なく十分だ。

だが速度があればあるほど楽になるらしい。

質量の大きさから小型光子ロケットではここからの加速に時間が掛かる。

大型の強大な推進力でさらに加速し光速の20%を目指すのだ。

一気に加速するのではなく相変わらず12時間置きの加速と常時の加速を繰り返す。


大型光子ロケットの推進力が高すぎるという問題は単純な手段で解決した。

動力を大きくした為に放出する光子が多すぎ調整が難しいというものだ。

これは動力炉の研究が進んでおらず設計図のまま作った弊害でもある。

急ぎの仕事ということで放出量の調整はすぐに出来ない。

そこで改造したのはミラー、反射鏡の方だ。

まったくもって単純な方法で反射される光子を減らせば推進力は低くなる。

反射鏡の角度、展開時の大きさを細かく変更出来るように調整をした。

円形に反射鏡を十字とか三方向にすることで反射量を減らす。

その時に鏡の長さも短くすることでさらに推進力を落とす。

まったく単純な解決方法だ。

すでにセリナがシュミュレーションを行っており問題は無いはずだ。

コンピューター上の計算なので実機で成功するかは試してみてからだ。

失敗しても計画としてはすでに修正案があるので気楽なものだ。

ただセリナとしてはやはり宇宙船を制御していたからか確実に成功させようと奮闘していた。

奮闘というか日々最後部の動力推進エリアへと通い、ギルド員たちと調整を進めていたらしい。


もう慣れた感じで司令室の準備は整う。


「各部、慎重にお願いします。

 大型光子ロケット、推進を始めてください。」


「大型光子ロケット、推進開始。常時監視中。」


「光子放出規定値、推進力上昇も想定内です。」

「動力出力安定、光子供給量変動も僅かです。」


「船体各部、加速による問題はありません。

 重力発生器最大稼働中、問題無いそうです。」


こちらが開始の指示を出せば各部署から開始の報告が返る。

開始前に何も言わなかったのは重要なのは全員が理解しているからだ。

大型光子ロケット稼働中は常時監視、即時対応になっている。

今は通常稼動し最低限の加速を始めた状態。

この稼動状態のデータはギルドが今まで試験で得ているから問題ない。

稼動から1分が経過し安全確認が終われば次に進む。


「各部へ、光子ロケット加速開始を行ないます。報告をお願いします。」


部内でやり取りしている中それぞれの部長から問題無しの返答。


「推進部長、始めてください。」


「大型光子ロケット、追加加速開始、出力8%から10%へ上昇。

 加速3.24G。許容範囲です。」


「情報部、現在速度と加速度を計算、加速3Gを維持する航行計画を提出。

 推進部、航行プランに従って5分加速を維持、問題が起きれば即座に停止してください。」


加速3Gならそれほど身体に負担がある速度ではない。

緩衝重力の発生によってほぼ問題ない状況になっているはずだ。

このまま常に加速3Gになるように加速を続けて今回の加速は終了する。

船体速度が増せばより大きな推進力を出せるようになっていく。

次回からは時間ではなく予定速度になるまで加速は続けられる。

12時間後までにギルドが推進機、ステーションの状況を確認し安全確認の報告があるだろう。

すでに動き出しているはずでギルド員はステーション出航前から一番忙しいだろう。



フリーダム艦に向けての針路を予定通りに航行中。

大型光子ロケットの加速も問題無く終了し今は時速約2億km、光速の18%で航行中。

ここから5日間は戦闘準備の最終期間。

追加加速が終了すれば指令室勤務は1日8時間となる。

それ以外の時間で各準備を進めるのと確認を行う。

自分で準備している訳では無く楽なものだ。


突撃艇の訓練。

ステーションの速度が安定してから実機の試運転が行われた。

最低一人1回は動かすようにスケジュールを立てた。

突撃艇は24機を投入。2機はガーランドに搭載し俺とセレナが使う。

残り22機のパイロットは基本的に成績順。

選ばれなかった宇宙船乗りも予備パイロットとなり成績次第では入れ替える。

ここまでの成績はリセットしておりこれで選ばれたパイロットたちも真剣に訓練をするはずだ。


無線操作による操作時差については航法コンピューターを投入した。

安全面から5分の時差は確定。

レーザーの発射から命中まで5分の距離があれば有人宇宙船の生存率が高い。

今回の作戦は出来るだけ安全に行なうからこれは譲れない。

時差があるから常に5分後の突撃艇を操縦してもらう。

突撃艇の周辺状況は航法コンピューターによって再現し表示させる。

実際の戦闘中は戦況を観測しているから最新の情報に常に修正はする。

ただこれで表示可能なのはフリーダム艦の位置、姿勢、移動方向などだ。

レーザーやミサイルなど攻撃についてはリアルタイムでは表示出来ない。

ミサイルは可能な場合があるがレーザーは撃たれたら着弾する。

そこについては諦める。

突撃艇は最初の攻撃を100%成功させて成果を上げる。

訓練内容もそれに合わせて変更されていた。

相変わらずシュミュレーターだがセリナが組み立てた仮想敵がいる。

フリーダム艦5隻は毎回違うパターンを取る。

発見されずに奇襲出来る事もあるし先制でレーザー迎撃が来る場合もある。

レーザーに当たりにくい接近方法や敵艦が移動しながら攻撃してくるとか相変わらず多彩だ。

最終シュミュレーターでの訓練も成績としては上がっているから問題無いたろう。

ちなみに難しすぎると文句の出たシュミュレーター。

前回の軌道戦訓練に俺が使った時間を話しまだ簡単だと教えておく。

それから俺とセリナで3度程実践する流れにセリナがした。

セリナが参加するのは驚いたが結果としては最初の攻撃と再攻撃を2機とも成功が3回。

訓練不足、習熟不足という事でセリナが情報分析しパイロットそれぞれの弱点を指摘。

この後俺も巻き込まれそれぞれの宇宙船乗りに具体的な練習方法などアドバイスを送る仕事が増えた。


小惑星の加工についても確認する。

小型の小惑星は一定の大きさに加工してマスドライバーで射出する弾丸になっていた。

20mサイズが小型、100mくらいが大型。

小型のは機雷のように途中で拡散させることで広範囲にばらまく。

すでにこれらは準備が整いマスドライバーの側で格納中。

マスドライバーも専用の動力炉が用意されて連続発射が可能、試射も完了で問題無し。

自動で弾丸を供給出来る機械類も稼動していた。

大型の小惑星は内部を加工して機雷やミサイルを搭載。

また突撃艇や小惑星に無線指示を出す指令宇宙船を格納出来るようになっていた。

途中までは小惑星で移動し離脱、安全な距離を保つ。

資源に余裕があったので追加の軌道修正用ロケットの搭載作業が進んでおり順調、問題なし。

元々小惑星関係は順調な報告書しかなかった。


司令室でギードリアさんとセリナを中心に各部門長が集められ会議を行なう。

フリーダムをどうするか、今後どんな対応をするかという会議だ。

リラ6ではフリーダム艦隊に通信、交渉を行なっているはずだがまだ報告は無い。

この会議で決めるのはかなり重要な事でフリーダム勢力をどうするかだ。


フリーダム艦5隻を破壊しリラのフリーダム勢力を消滅させる。

>今後もフリーダム艦がリラ星系に来た場合も同様に戦闘、破壊する事になる。

>それが続けばより大きな戦力で攻められる可能性があるのか?


何隻か撃破し交渉を行なう。

>リラ星系から一定範囲にフリーダムは接近しない、侵入時は即撃破。

>フリーダム艦との条約は破棄。拉致された奴隷は解放、即座に引渡し。

>以降の交渉、取引は場合によっては対応する。

>撃破するのは有利に交渉する為。


先に連絡し交渉を行う

>リラにとって脅威になるフリーダム艦が残る。

>今後はリラ星系で防衛を行なうのが難しい。

>現在リラ行政府と交渉行なっていないのであれば実現可能性が低い。


フリーダム艦隊との交渉もあるがフリーダムという勢力との交渉にもなるのか?

これまでの条約などはフリーダム艦と行なっている。

ここでフリーダム艦に認めさせた事がフリーダムという勢力全体に及ぶとは考えられない。


またこれが戦争なのかという問題にもなった。

リラは宇宙船で攻撃され駐留させ実質支配されていた。

条約を結んで対応したがそれはフリーダムではなくフリーダム艦との条約だ。

武力で攻められた以上戦争と言える。

ただ戦争というには規模が小さく戦争としての認識も少ない。

リラが国という感覚が薄いのもある。

移民が行なわれ人口がある程度増加した時に行政府が作られ星系の名からリラ行政府となった。

政治組織だが周辺に人間の住む星は無く別の星に移住するという事も無かった。

国というよりは星、星系に住んでいるという認識だ。

リラでは国という言葉は使われないしほとんど学ばない。

リラといえばリラ星系全体を指してその住人はアーコロジーで暮らす人々という認識だ。

融合病で人口が減少する前ならもっと国らしかったかもな。

リラという政治組織としてフリーダム艦と条約を結ぶ。

ただフリーダム艦隊はフリーダムに対してどの程度影響があるのか?

その条約がフリーダム全体に及ぶのか?

こういう政治関連の事が話し合われていく。

俺としては勉強不足、あまり口は出せないから大人しくしていた。

色々と意見が出て面白いし各部長の考え方が判る。

現状での問題はフリーダムの情報が少ないということが問題になる。


拉致されたリラの人たちについてはリラ住人は諦めているのだが確認はしたい。

フリーダム艦については数があれば危険、交渉を有利に進める為にも攻撃は行う。

その後交渉を行い同時に情報を得る。


最終的にはこんな感じで纏まった。

交渉についてはギードリアさん中心に進めるし行政府からそれになりの権限も与えられている。

すべて任せてしまう事になった。


この期間中だけではないが航行中に作戦行動として行ったのが索敵。

敵艦、フリーダム艦の位置を確認するという事。

正確にはまだ行ってはいない。

索敵については探査機を放出してそちらで行う。

探査機に搭載したレーダーによってフリーダム艦の性格な位置情報を得る。

その情報は探査機から無線でステーションに送られてくる。

こうすることでステーションの現在位置を誤魔化しながら敵位置を知るそうだ。

色々は場所に探査機を送る為にその投入軌道を計算し適時射出を行っていた。

宇宙用の広範囲レーダーについては作れるがこまかな情報が無い。

レーダーの反応などを分析するのが大変だがこれはセリナが行った。

発進前から何度も周辺をレーダー探査しその情報を蓄積、分析していく。

そういう事をしていたが実際はセリナが持っていた分析情報をそのまま使っただけ。

ツキヨミの蓄積情報などをそのまま投入しただけだ。

探査機の設計についても実は同様だ。

索敵については作戦開始24時間前くらいに行う。

探査機の位置がばらばらなので実際にはもう少し幅があるらしい。


探査機を使わずにステーションから索敵をしても良いそうだ。

確実にフリーダム艦の位置情報を得る為に探査機を使って広範囲の探査を行う。

ステーションから索敵しても良いというのはおそらく発見されるからだ。

ガーランドで宇宙航行中に光速の20%で飛行している物体を見つけたら?

それだけ高速航行している物体は危険物として最大限に警戒する。

ましてそれが船に向かっているならもっと警戒する。

例えとして言われたがリラの宇宙船が時折破壊される事件が起きていて原因不明なら?

そんな状況で高速飛行物体が接近していればより警戒するだろう。

今回の作戦については光子ロケットで有利にはなったが奇襲は出来ないだろうということだ。

それについてはすでに作戦計画に組み込まれている。


探査機を作ったのだがついでにセリナから要求されたものがある。

提案し許可を得たいという事だったが探査機の情報と引き換えの要求だった。

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