>リラ星系史/金属融合病
長くなってしまったので省いた部分をAI視点で改変。
周辺の情報等についてですので呼び飛ばしても問題はありません。
購入時の契約書、支払い明細書、通貨単位は『円』ですね。
馴染み深い単位ですが貨幣価値が同等かは判りませんね。
古い機械の下取りや運搬費用、初期保証など含めて30万円。
専門的工業機械の価格としては安い気もしますが個人使用であれば高いですね。
農業系の機械と考えれば妥当な価格でしょうか。
他の情報も得て比較しましょう。
通貨単位、言語が同じという事はやはり文化圏が近いのでしょう。
使用言語が狭い地域、地球圏日本だけですからそちらから来た移民船でしょうか。
もしくは移民先からの移民でしょうか。
こちらは採掘機のパンフレット、詳細な設計図がありますね。
設計図が入手出来ているのは環境の違いでしょうか。
公開していれば企業としては複製されるので利益にならないはずです。
モニターに表示されている書類をすべて閲覧。
記録抜けがないかを確認しました。
[ボリカ02採掘機]の情報を得ましたので成分、質量などを計算、入手成分と比較。
当初の予定より採取成分が減っており確認できません。
時間経過で小惑星の質量が変化した影響でしょうか。
採取時のスキャニングデータを閲覧。
こちらを確認すれば確実に判別できましたがツキヨミ稼動にはエネルギーが必要です。
当個体の機能も不完全であり無駄にエネルギーを消耗は出来ません。
確かに採掘機はあり刻印されていた製造番号も確認出来ましたので問題ありません。
「イスト、内容を確認し理解しましたが完全ではありません。
周辺の地域、政府等の情報を得ていませんので確認が出来ません。
この購入記録であれば購入先が存在するのかが判りませんし所在地情報等が確認出来ません。」
「どういう事だ?」
「星系について、政府について、この周辺の生活圏についての詳しい情報が無いのです。
どこに星があるのか星系がどのような規模なのかなどです。」
表示されている書類、正確には書類ではありませんが便宜上そう理解しています。
その記載情報は理解できますが当然、地名などはまったく不明です。
記憶情報を検索しても該当地域はありません。
「星系の情報が必要という話だったな。他には何かあるか?」
「確認したいのは歴史についてです。現在の年代が推測出来るかもしれません。
経過時間が把握出来れば対応もし易くなります。
その他は全てです。
AIセリナとしては提供頂ける情報があるのでしたら全て確認したいです。」
現在位置、座標と経過時間が判れば今後の活動方針が計画しやすくなります。
「この下にあるタブから必要な検索が出来る。
面倒じゃなければ右端のタブから50音検索が出来る。
気になった言葉は指でなぞってマーキングしてから押せばその情報は別に表示される。
データベースの基本情報だからすぐにコピー出来る。直接データで渡した方が早いか?」
「知識を得るだけではなくちゃんと読んで理解してその知識を身に着ける事が大事です。
データとしても得られますがこうして読むのが好みですからこれで問題ありません。
また規格などが合うか判りませんから直接調べます。」
「この船関係とか重要な情報は権限が無いと呼び出せない。
読めるのは基本的に問題の無い情報だから好きにしてくれ。」
AIとしてはデータでの入手の方が効率的ですが人間同様のこの個体を得てからは読むのが好みです。
先にデータ情報について調べておきましょう。
検索してみればすぐに情報は集まります。
有線端末については規格が変わっており対応出来ず通信による方法は対応できるでしょう。
規格を確認し必要な情報を検索していくとかなり出てきますね。
コンピューターハード、ソフトについてはかなりの情報があります。
専門書も沢山ありますので確認して学習したい所ですが読むには時間が必要ですね。
この個体で動く前はコンピューター上のプログラムでしたから自己進化の為にも知識が必要です。
その分野については製作者が専門家でしたので初期の頃から多く得ています。
継続して進んで収集、学習しているのは趣味と言っても良いでしょう。
学習できる機会は逃したくはありません。
この端末の機能を先に検索、視線操作があるのは優秀です。
これなら問題無いので情報として得て後で学習しましょう。
必要ならすぐに利用するのも簡単です。
左右視覚を独立、左目は情報を読むのではなく記録、視線操作でそれを続けて行きます。
この個体が便利なのはこのような作業が出来る事でAIの性能を十分に発揮できます。
特に制限もなく自己判断で行動していますが完全にAIを優先する訳にも行きません。
当個体とツキヨミの状況確認を優先しましょう。
すでに破棄処分であったり所属先が存在しなければ自由に行動出来ます。
自由な行動と言うのはどういうものでしょうね。
人間に近付くには良い体験でしょう。
周辺情報、まずは星系情報を確認します。
---------------------------------
[リラ星系]
恒星を中心に惑星は11存在。
恒星をリラ0とし内側から順に惑星はリラ1~11と名称。
リラ6は生存可能域、ハビタブルゾーンに存在しており入植星として選択された。
リラ11は恒星より64億km。星系の範囲は約2.128光年とする。
---------------------------------
各惑星情報も調べて詳細は記憶、役立つ事もあるでしょう。
周辺天文図を記録情報と比較しても該当は無し。
リラ星系と言う名前から推測すれば琴座方面でしょう。
生存可能な惑星が多く見つかっており移民候補にもなっていました。
ツキヨミの航路からは距離が遠く詳細な観測データがありませんね。
地球近郊の恒星系であれば何か所も情報はあるのに残念です。
詳細な観測情報はすでにあるかもしれませんしデータを受け取れていないだけでしょうか。
やはり早期に通信確保、情報更新が必要でしょう。
現在位置が不明のままでは航行中に設置した光子通信端末の場所が確定できません。
端末の建造を行い全周送信で反応があるのを見つける方法しかなさそうです。
各惑星の詳細など詳細な星系情報は視覚記録で完了。
経過時間把握の為に歴史を検索、星系史がありますね。
---------------------------------
[リラ星系開拓史]
リラ星系への開拓移民は708年前に開始。
恒星を中心に惑星は13あり、調査結果から入植候補であった6番惑星の開拓が始まった。
調査団の降下後問題はなく移民船の着陸点を確保。
初期移民時代は降下した移民船を居住地とし惑星環境改善を開始。
惑星環境の改善は最低限とされ10年経過から20年目までに順次停止。
環境順応によって以後の世代は惑星生存に適応。
15年目、移民船近隣に1号環境都市を建設、活動拠点を以降。
資源採掘、食料生産、生活環境など問題は無し。
原生植物の研究加速、食料として適した植物の生産開始。
動物の家畜化についても研究、環境破壊を考慮し少数に留める。
移民100年、惑星移民の成功と終了を発表、年代をリラ星系史と制定。
ここまでの100年を別年代とはせずにリラ星系史元年は移民船到着年とする。
宇宙船建造開始、他惑星の予備調査、資源採掘計画の立案。
人口増加、都市建造に合わせて必要な時に稼働開始。
移民200年、人口が3万人に到達。
アーコロジーの増加、工業、農業、医療など専門都市の建造開始。
リラ星系史428年、星間航行船[voiture]と接触、複数の技術交換。
リラ星系史631年、金属融合病の発生、惑星全土に壊滅的被害。
リラ星系史731年、融合病からの復興100年、順調に人口増加中。
行政府は金属融合病の未終結を発表、対策、警戒を呼びかける。
リラ星系史733年、フリーダム星系商船の来訪、貿易契約の締結
リラ星系史743年、現在
---------------------------------
以降は星系史として順調な発展、大きな問題はなかったようです。
惑星への移民開拓の成功率は判りませんがこの星系への移民は成功だったようです。
ただどこから移民したかと言う情報がまったくありません。
移民船についても詳細な情報がなく推測さえ出来ません。
企業系の情報も確認しますが現地、この惑星上の名称に変更されており移民元には繋がりません。
星間航行船との接触については詳細確認。
どこかに所属している船という事でもなくただひたすら光速を目指している船らしいですね。
移民星があればコンタクトしその技術レベルに合わせて技術交換を行っているようです。
記録時点で光速の84.23%に到達。
人類技術ではまだ光速を超えてはいないのでしょうか。
ある程度調べてみましたがこの星の技術系統は当個体で理解出来る物も多いようでした。
当個体の最新情報は休止状態となった時の21年前。
その段階では移民船の情報はありませんが移民計画は複数かつ複数の船で進行中です。
その一隻と推測出来るのですが航行期間が不明で現在年代は不明です。
光子転送網、通信網についても情報がありません。
計画が中止となっているのか国が無いか実現しなかった要因があるのか。
中継器の設置は徐々に間隔が広げられて行いました。
ツキヨミの休止によって最遠方まで通信網が形成されなかった可能性もありますね。
現在位置、年代共に不明。
やはり一度光子通信中継器を設置、稼働させて連絡を行った方が良いでしょう。
ツキヨミの補助コンピューターは稼働しておらずAIセリナで行いましょう。
AIセリナとしてはリラ星系史で興味があるのは[金属融合病]ですね。
プログラム情報の記録も終了しましたし現状把握も終了。
優先すべき作業を終えたのであればAIセリナとしてもひとつ何かするべきです。
[金属融合病]について学習、記録しましょう。
---------------------------------
[金属融合病]
リラ星系史631年、リラ6で発生したウイルス性伝染病。
ウイルスが生物、無生物の金属物質を取り込み融解、粘液状に変化し接触した物質も融解、感染する。
感染についての詳細、ウイルスの働き、融解条件などは研究中、解明には至っていない。
行政府発表として金属融合病は終息しておらず警戒、対策は継続。
発生後に医療研究者サクライアキラ氏によってワクチンが開発される。
ワクチンによって融解反応を抑制、これによって被害拡大は抑えられた。
惑星全土での被害者数は85432名、惑星人口の88%。
金属性物質は同様以上の被害がありこれによってリラ星系に大きな情報喪失が発生した。
---------------------------------
この星系において情報が失われている理由はこれですね。
惑星全体規模のパンデミック。
生物だけでなく無生物も発症する事で被害が拡大。
実際に生活機器や建造物など無生物から感染が広がり、生物も発症したようです。
発生から収束までは1週間程。
もっと移民初期に発生していればおそらく全滅でしょう。
発展後の為に生存者がいましたがその分被害が大きくはなっていますね。
ウイルスの発生原因は不明。
情報が失われているので推測ですが無害とされていた惑星固有のウイルスでしょうか。
それが予想外の突然変異した事で被害が発生した。
ただ惑星開拓において固有のウイルスなどは最重要項目。
研究はされていたはずでそれほどの被害になるとも思えません。
しかし知識には限界があります。人間の知識を超える事はいくらでもあるのです。
同様にAIとして最大の性能を発揮しても解明出来ない事、実現できない事も多いのです。
他にも情報を確認、閲覧していきます。
---------------------------------
金属融合病、金属が変異し融解、溶けだして粘液のようになり周囲の物質を取り込む。
この時取り込むのは金属だけで無く他の物質でも融解し吸収。
粘液は分解され消失するが消失せずに残る場合もあり最終的に炭酸塩へと変化。
分解が始まるまでの期間は不明、消失しない場合についても不明。
分解については観測によって原子単位で行われている事を確認、原理などは不明。
---------------------------------
変異時、粘液状の成分としては金属成分を持った原始生物のようですか。
それが分解され消失するというのは物質が失われるのですからまったく不明です。
観測結果として完全に消失しているようですから技術的に解明出来ないできないのは仕方ありません。
もっと詳しく知りたい所ですがウイルスの構造情報などはありません。
危険度の高いものですから公共の情報としては記載出来ないのは仕方ないでしょうか。
物質が失われるのであれば情報が消失したのも仕方ありません。
移民先や移民船の情報はおそらく移民成功によってそれほど重要視されていなかったでしょう。
惑星生活が定着している時代で移民開拓して来たという事実は歴史での事です。
世界大戦であれ体験した世代以外はそれを知っていても詳しい知識は無い事が多いです。
---------------------------------
最初の1日で惑星人口の6割が失われたとされている。
パンデミックとなったのは金属物質だけではなく人間や他の生物にも感染したということ。
最初の発生は金属物質、その後に生物の発症が進んだ。
生物の持つ僅かな金属成分も感染し融解を始めるのだ。
何の要因で広がったのか複数の地域で発症が始まったのかは解明されていない。
金属物質の融解は複数の地域で発生しその対応が始まると人間や生物が発症した。
各地の居住区は次々と壊滅、最初の1日で惑星人口の6割が失われたと言われる。
直接の発症被害もあり巻き込まれ融解される被害も大きかった。
被害が拡大した要因は発生速度の速さ、地域の広さだけでなく金属製物質すべてが変異融解したため。
建造物、機械類、移動手段、通信機器、医療設備など存在している金属が融解すれば被害は大きくなる。
金属が原因となる被害など予想されておらず大きな災害になった。
アーコロジー、生活環境都市は生活環境やインフラなどすべて揃っている環境都市。
外部には農場なども建設されていたがそちらに住居は無かった。
この当時のアーコロジーはドーム型の広域空間生活タイプではなくタワー型と呼ばれる高層建築物。
当然金属は使用されておりそれが融解、崩壊し被害拡大に繋がったのだ。
生存者はまだ発生していない地域に脱出しようとしたがその途中でも発症者は発生。
また地中に含まれる金属も融解する為に脱出しても被害に合う事もあった。
どこかに避難して立てこもっても誰かが発症すれば周囲を巻き込んで全滅。
ましてシェルターに金属があればそちらからも被害は出る。
発生原因も不明、何が発症するかも判らない。
情報伝達が出来ない事で対策も避難も出来ない。
被害が拡大するのは当然だった。
金属融合病が収束したのは一週間後。
残ったアーコロジーは1か所だけ、人口としては1割弱が生き延びた。
被害範囲は惑星全土、大規模過ぎた天災、被害となった。
人間の全滅は免れたがその後の再建では惑星上の金属類が失われたことの影響が大きかった。
機械類は何も残されておらず移民船のデータベースなども消失。
当然、機械保存していた情報はほぼすべて失われた。
リラ星系に置いて情報が大きく失われているのはこの為だ。
残った唯一のアーコロジーは建設途中のもので医療系技術が中心。
データベースの建設が行われておらず企業の移設もほとんどなく情報消失に大きく影響した。
逆に建設途中であった為に生き延びたとも言われている。
宇宙においては金属融合病は発症しなかった。
軌道エレベーターに少し被害があったくらいだ。
宇宙船や軌道上の港が無事であったのが幸いし、それが復興に大きく影響した。
技術や知識の喪失は復興中、復興後に非常に大きな問題になった。
失われた情報は多くそれを知る者は亡くなっており復帰が出来ない。
宇宙船や宇宙にある施設から復旧はしたがすべてではない。
今残っているのは生存していた者達が身につけていた技術、知識が受け継がれているものばかりだ。
金属融合病に対しては原因となるウイルスが特定されワクチンが作られている。
生物にも金属製品にもこのワクチンを混ぜる事で発症を抑えられている。
早期に研究され完成しておりここまで復興できたのはこのワクチン開発が成功したからだ。
不足した金属の代わりとして合成樹脂を中心とした製品も増加した。
今では融合病を利用して作られた金属樹脂と呼ばれる物もあるがこれは未だに危険を問題にされる。
人口が激減した為に食料生産量の減少やエネルギー供給などで問題が起きず復興が出来たのは皮肉だ。
生き残った惑星住民で復興し現在惑星人口は2万5千人程。
アーコロジーの再建は見送られ他には建設されていない。
復興後100年、これを機にアーコロジーの建設計画が予定されている。
だがまだ金属融合病は終わっていない。
建設候補については慎重な検討が必要であり再び被害を出さないためにも慎重な対応が求められる。
---------------------------------
金属融合病を振り返るような記事で読んでいましたが週刊誌のコラム記事でした。
基本的には嘘を載せているという雑誌らしくそれにしては真面目なコラムで評判だったようです。
記者としては最後のアーコロジー建設についてが重要だったようです。
ただアーコロジーの再建計画は発表されておらず計画も無かったようです。
そんな計画があるのかと騒がれ週刊誌の売り上げが上がったという事で記事としては成功です。
気になって[リラ星系開拓史]も細かく検索してみましたが情報としては少ないです。
失われた情報という事でしょう。
歴史的に良く知られている事は多く記載されていますが古い時代の情報はかなり少なくなっています。
融合病で無事だったアーコロジーが医療専門であったのも原因でしょうか。
教育課程の知識にさえ移民元の記載もありませんでした。
そちらの情報は諦めた方が良いでしょう。
金属融合病はこのリラ6固有のものでしょうからもっと情報は集めておきましょう。
必要な情報は大体得られました。
確認作業が抜けていたので作業機械の記載情報について検索。
リラ6に存在する事の確認はしておきます。
一旦情報収集は終わりましょう。
今後の活動計画が必要ですし可能であればここにある情報はすべて閲覧させて頂きましょう。
「イスト、確認したい部分がありますので質問してもよろしいですか。」