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竪琴宇宙のサクシード  作者: MAD-WMR
59/82

4-5 ややこしい宇宙空間戦闘

フリーダム艦への攻撃。

これについては色々と大変になるのは判っていた。

セリナの解説としては今回考えるのが本来の宇宙戦闘。

リラ軌道戦のように近距離戦、接近戦は宇宙での戦闘では珍しいのだ。


最初に宇宙船での戦闘ついての話をしたのはずいぶん前。

時期としてはセリナをリラに連れて来てからの事だったか。


まず問題となるのは距離と速度。

宇宙では理論としては移動する物体はその速度でどこまでも移動する。

こちらから射撃したレールガンの弾は発射された速度で飛び続けてフリーダム艦に当たる。

目の前にフリーダム艦があった軌道戦だとそれでいい。

今回は距離も離れているしフリーダム艦は移動している。

命中させようと思えばフリーダム艦の軌道と移動速度が絶対に必要。

弾丸の移動速度からフリーダム艦までの到達時間を計算。

フリーダム艦が軌道を変えないとして弾丸の到達時間にどの位置にいるかを計算。

命中するように弾丸を撃てば良い。

ここで距離と速度が大きな問題になる。

距離は宇宙なので万キロとか億キロは当然。

弾丸の速度も重要だが宇宙船の速度が問題、移動速度を時速にすれば万キロとかになる訳だ。

弾丸の速度によっては到達が時間単位どころか日数単位になる。

それだけの時間があればフリーダム艦が軌道を変えれば、速度を変えれば外れる。


これは俺からすれば難しい事でもなんでもなくて小惑星にガーランドで行くのと同じ。

小惑星の軌道を計算してガーランドの移動速度を計算して接触するのと変わらない。

距離とか時間のスケールが違いすぎるだけだ。


こちらの攻撃と気がつかれたり危険な物体であると判明すれば対処される。

その対処についてこちらから何も手が出せない。

無線などで指示しようにも距離があるから指令を出しても到着まで時差が生じる。

基本的に宇宙戦闘では攻撃したら後は当たるのを観測するだけだ。

兵器によっては自動で対象を判別して最終軌道変更、加速を行なう物もある。

そういう物を使っても結局同じで結果を観測するしか出来ない。


難しくしているのはフリーダム艦が光線兵器を使っている点もある。

弾丸やミサイルなどは発見されればレーザーで簡単に迎撃される。

レーザーで壊れない巨大な質量となれば発見されやすく事前の回避も容易い。

質量兵器があるのでそれによる迎撃も考えられる。

どちらかというとそういう物体を破壊する為の質量兵器でありそれには船も含まれる。


問題が増えた、解決していないのはフリーダム艦の性能解析が出来ていない点だ。

予定としては破壊、撃墜、拿捕したフリーダム艦を解析して情報を得るはずだった。

しかしフリーダム艦は二隻とも爆散、残骸はほとんど残らなかった。

この爆発については技術情報の朗詠などを阻止する為の自爆らしい。

人が乗っているのに自爆するのかという疑問はあるがフリーダムなのだ。

奴隷が艦に乗っているのは確認出来ているがその割合は判らない。

フリーダムの奴隷に命は無い。それならばありえるという事だ。

乗員の8割が奴隷であれば自爆しても人員の損失は少ない。

文化的違いで自爆するのが当然とされているなら自爆するだろう。

実際に戦闘をして解析した情報、わずかな残骸から得られた情報くらいしかない。

今回の戦闘に有効な情報はセリナとしてはまったく判明していないという事だ。

船、艦の情報収集能力、索敵関連情報が不明。

接近する物体をどの距離で感知、発見出来るのかの推測も出来ていない。

宇宙船としては接近する物体の発見、回避は当然。

ガーランドでも避けている。

ただセンサーの有効範囲は狭く速度的によっては常時監視が必要だ。


センサーで攻撃の難しさという話しに戻る。

ガーランドを航海させていて注意するのは?

一定の大きさの障害物と一定速度の飛行物。

それらを探知した場合は警告が出て船を回避するなど対応する。

フリーダム艦が脅威とする速度や大きさは?

それが判っていればその速度、大きさを避けて何か策があっただろうな。

今の所有効そうな攻撃手段は無い。


センサーと言えば宇宙船同士の戦闘では船の発見というのも重要な要素の一つ。

当然だが広い宇宙、目視で船を見つけるなんて不可能だ。

見つけようと思えば機械的に観測するのは当然。

電波による探査が普通だがこれも大変なようだ。

電波を飛ばしその反射を観測する、この時に電波が弱いと反射してくる電波も微弱になる。

そもそも強くしないと遠くまで届かない。

観測出来たとしても問題は多数。

電波を飛ばして24時間の地点に宇宙船があったとして発見出来たとする。

その電波が戻ってくるのはそこから24時間後、つまり飛ばしてから48時間後。

時差が出来る訳で観測側からすれば24時間前の宇宙船を見つけた事になる。

正確な場所は判らないのだ。

移動速度なども含めて観測するのに少し間隔を開けて電波を放つ、探査する方法もある。

複数の位置情報が判明すれば移動速度も推測出来る訳だ。

ただこれも時差があるから位置情報はその時差分ずれている。

さらに宇宙船次第だが電波探知をする船もあるらしく観測されたと発覚する場合もある。

電波から逆に船の場所を発見される事もあるそうだ。

当然観測されたと判れば移動するだろうから発見が困難になる。

戦闘用の宇宙船は観測されても発見されないように船から情報が出ないように工夫したそうだ。

電波の反射を抑えるとか岩石類と誤認させるようにするとからしい。

ついでに宇宙船から放出する熱や電波類も抑えるとかしていたそうだ。


今はフリーダム艦の位置は大雑把に判っている。

これはリラ6のフリーダム艦との交信電波をセリナが観測した結果だ。

現在位置であってこれから先の位置情報を確認する方法が必要だろう。


広い宇宙で対象となる船の位置を確認し、その軌道に命中するように攻撃する。

その攻撃に対応されない、されても攻撃が命中すれば被害を与えられる。

そんなにうまく行く事は無いだろう。

それこそ数秒で届く光線兵器なら可能性は高い。


「攻撃についてだが遠距離からの攻撃だけで破壊するのは不可能じゃないか?

 フリーダム艦の針路、移動速度が判っていて攻撃が発見されない場合くらいだろ。

 ある程度時差が影響しない距離。

 出来ればレーザーの効果が薄い距離くらいには接近しないとだめだろう。

 今回はさすがに色々と学習している時間が無い。

 セリナから今あるプランを聞かせて欲しい。」


セリナから聞いた話、宇宙戦闘の基礎知識から考えた結論は長距離攻撃は無理だ。

正確には今のリラにある兵器では撃破できる可能性が低いだな。


基礎知識からまず自分で考える。

その間違いや問題点の修正、効果的な方法各種の提示。

これは書籍とかの文章情報でそれを学んで計画、その計画修正する。

軌道戦の流れだ。実践としてはシュミュレーター。

本来なら一ヶ月くらい使って宇宙での戦闘についても学習、計画する予定だった。


こうやって俺が知識を身に付けてセリナの提供した情報はリラに残すという計画がある。

それで良いのかと聞いたが軍隊の書類などが多いらしい。

そう言う文章は郡の誰かが書くものだから手間を省いて情報を丸写ししても良いだろうということだ。

古い情報も多いし機密情報、公開されていない情報も多いからいまさら問題にはならないらしい。


今は時間が無くてゆっくりと学ぶ状況ではない。

セリナがこのステーションを移動用の宇宙船として使う事を提案した。

輸送船であり生産拠点として使う事で無い時間を作るのだ。

生産拠点というならば何か攻撃方法はあるのだろうから先にそれを聞きたい。


「攻撃についてのプランですがリラ軌道戦とさほど変わりません。

 敵艦を観測可能な距離で戦闘を行なうのは当然です。

 観測距離、攻撃可能距離に大きな差があれば一方的な戦闘になるでしょう。

 何隻かの船と観測機をしようしてフリーダム艦へ攻撃します。

 ステーションは発見されない後方で待機。

 攻撃兵器各種は観測機を中継し無線操作を行う事で安全を確保します。

 ただし確実ではありません。

 無線操作と分析された場合、指令を出す船が狙われる可能性はあります。

 またこの場合中継を行なう観測機が破壊されればこちらの戦闘力は失われます。」


あの大型レーザーや質量兵器、ミサイルなどだろうな。

レーザーの射程外でも実体のある武器なら届くだろう。

ただそれは見落とさなければ距離があるなら回避も出来るだろう。

危険な戦闘なので使用する船は軌道戦に参加した船になる。

軌道戦前に交わした契約もこの戦闘を含めていて船を使うのは問題がない。

それぞれの船に再確認、要請するのは俺だな。

実際に戦闘を体験したから参加しない船、乗員もいるだろう。

犠牲となった船、宇宙船乗りは居るんだ。

俺は見た事があるとかちょっと話したくらいの関係だったから悲しみは小さい。

そうじゃない人だっているだろう。

乗員1人ずつに確認して場合によっては新たなブロック船を作るそうだ。

ブロック船を作るのか。


「セリナ、ブロック船を作るなら何隻くらい作れる?

 船があってそれを無線操作出来るなら軌道戦と同じように攻撃出来る。

 それなら慣れている宇宙船乗りは多いし危険が少ないなら来る人が増えるかもしれない。」


「ブロック船の建造についてはある程度の数は造れるでしょう。

 リラ4で採掘中の資源量、ステーション船建造に消費する資源量が確定していません。

 その後の余剰資源によって変化します。

 武装については大型レールガンなど有効な物が用意出来ます。

 フリーダム艦の外壁部分を現在解析中です。

 リラの技術でも分析は可能ですからフリーダム艦と同様の装甲を施せるでしょう。

 戦闘力としては十分ですが船を使用する必要はありません。

 突撃艇、戦闘艇と呼ばれる小型船であれば船よりも多く建造出来ます。

 小型であれば速度、軌道力が上がり無人であれば加速力はかなり高く出来ます。

 無人という点を考慮すれば小型船をフリーダム艦に激突させる手段もあります。

 ただ航続距離を考慮すれば輸送用の船は必要になるでしょう。

 これについては元々船を使いますからそれを改造、もしくは新造すれば対応出来ます。

 良いアイデアかもしれません。

 問題点としては突撃艇を操作する人員が必要になり訓練も必要でしょう。

 訓練についてはシュミュレーターを使用すれば対応出来るはずです。

 人員についてはイストから行政府に連絡すれば対応してもらえるでしょう。

 突撃艇としては仮ですがこのような感じになります。」


突撃艇、戦闘艇と言うのはセリナからの情報にあったものだ。

飛行機をイメージした宇宙用の小型船。

ミサイルやレーザーなど武装は少数、宇宙船から飛び立ち敵船を攻撃する。

近距離から中距離戦での戦闘方法のひとつ。

有人機だが小型で高速、大型船よりは小型、中型の宇宙船を強襲攻撃するもの。

セリナからの情報に多くありブロック船を使ったフリーダム艦攻撃の参考にした。

惑星内の水上船舶では機能していた飛行機による攻撃を宇宙に持ち込んだ物。

突撃艇の運用には専用の船が必要なのに消耗率が高く宇宙ではあまり有効ではなかったそうだ。

対策されていなければ十分な戦果を期待出来るらしい。


無人機なら人の影響を無視した加速が出来るならより有効だろう。

もったいないが最悪ぶつけるというのただ破壊されるよりは良い。

数が揃えばより有利には戦いを進められるだろう。

突撃艇で攻撃しつつマスドライバーやレールガンでの長距離攻撃。

軌道戦の戦法そのままだと駄目だろうな。

戦闘の結果が伝わっているとすれば同じ事をすれば対策されると思う。

対策出来ないなら困らないけどな。

もう一手、出来れば二手は何か欲しい。


「最終プランとしてガーランドによる攻撃があります。

 機雷を多数搭載したガーランドを光子推進で加速、攻撃を行ないます。

 光子魚雷と同様の攻撃が可能あり切り札としては十分でしょう。

 ただし加速に必要な時間、軌道など問題点はいくつかあります。」


何か無いかとの質問に対する返答。

光子魚雷は光子ロケットによる加速を使った機雷。

確かにガーランドを加速させてそこから機雷を射出しても同様の攻撃になるだろう。

速度が速いので射出タイミングなどかなり難しいがそこはセリナが制御するつもりだな。

俺がガーランドに乗らずにセリナに任せれば短時間で加速も可能か。

多めに機雷をばらまいてかなりの数を外せばそれほど問題にもならないだろう。

ミサイル、機雷、レールガン、マスドライバー、光子魚雷。

リラ側で出来る攻撃は他に無いな。

こればかりは短時間でどうにか出来るものでもないか。


各種砲撃と突撃艇の投入を基本として作戦を立てるしかない。

新しく作るのは突撃艇とそれを輸送する船、観測機。

それくらいなら戦闘が始まるまでは2週間あるから大丈夫だろう。

出発までにセリナの資料とかを調べて有効な作戦を考えつくか兵器を見つけられたら良い。


作戦行動の具体案を考えて用意すべき兵器類をリスト化していく。

レールガンを作る時と比べると準備する事が多い。

あの時は作れるかどうかも判らなかったし数を作れるとも思って無かったからな。

攻撃計画の初期案はこれで一端完成。

ここからもう少し細かく調整をしていく。

時間としてはそれほど掛からなかったから俺はこの後宇宙船乗りの勧誘。

このステーションを移動させる予定があるとセリナに言われたからだ。

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