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竪琴宇宙のサクシード  作者: MAD-WMR
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4-4 光子ロケット会議

しばらくは宇宙船建造についてが続きます。

光子ロケットをどうするのかまずギルド側の話を聞く。

これまでの研究についてと建造計画、試験計画など。

最初に話を始めたのはコルストさんだ。


「私、コルストはギルドの宇宙船推進機開発チームを纏めていた。

 このチームはどの世代にも数名の光子ロケット研究者がいるのだ。

 もちろん私もその1人だ。

 推進機の研究では小型モデルを作って試験を行なう事も多い。

 ある試験では小型モデルでは試験が難しくスケールを大きくする必要があった。

 小型化した場合では想定していた性能を発揮できなかったのだ。

 この時は蓄積する電力量の問題などがあったからだ。

 光子ロケットについても同様ではないかと閃いたのだ。

 考えてみれば当然で実験として作られた物、試験目的で作られている。

 実験用の船、現ガーランドに搭載出来るサイズで作ったのではないかと。

 大型サイズの実物は作る事が出来ないのでシュミュレーターで確認を行なう事にした。

 もちろんただ大型化するのではなく機械的に再設計し大型化している。

 結果としては問題なく機能しており光子ロケットについては問題なかった。

 ただ動力の不安定が改善されずその部分がまだ解決出来ていない。」


その後にすぐ言葉を続けたのは研究者っぽい人だ。


「光子ロケットに使用する動力について色々と試しています。

 残念ながら他の物では上手く行きません。

 ガーランドに搭載されている専用動力システム、核融合発電を改良した光子発生型核動力。

 光子の発生量、簡易なシステム、継続しての使用などやはり優れています。

 コルストさんの研究結果からこちらも大型化してみましたがやはり安定はしません。

 動力源としては安定して稼動します。大型化しても問題ありません。

 大型化した事により光子発生量は増大し出力、推進力としては上がります。

 ただやはり光子発生量については安定が出来ません。

 これは公開されている設計図を元に色々と研究、改良していますが長年難航しています。

 完成品、設計図、実験結果などしか資料が残っておらず機械類についての資料が少ないのです。」


「大型化するメリットは多いぞ。

 使用出来る材質の制約が低くなりミラー、反射鏡部分については楽になる。

 長期使用が可能でメンテナンスが簡易、反射率の高い物がすでに開発してある。

 常時ミラーを展開しておける場合の物も設計、開発は終わっている。

 ただ常時展開だとどうしても長期航海で破損の確率が上がる。

 定期的にメンテナンスしなければ塵などでどうしても反射率は落ちていくな。」


ロケット部分、動力部分、ミラー部分。

光子ロケットの主要パーツについての簡単な説明、報告。

ガーランドで使う場合に問題になるのはミラー部分。

複雑な機構で展開しているしミラー自体が脆い。

これは反射率を高めているのと当時使用出来る材料の限界と言われている。

おかげで使うたびに確認して消耗部分は交換が必要な訳だ。

3割以上、下手すれば7割交換という状況だ。

そこについて改善されているのはありがたいので後で詳しい話を聞こう。

光子ロケットは使っていない事になっているからその辺りをギルドにはまったく話をしない。

こちらからしないからギルド側からも話す事は無い。

ガーランドの経済状況として今実験出来ないのが判っているからな。


セリナは話を端末に纏めているようで同時に送られて来た資料にも目を通している。

複数の透過モニターを表示して作業をしているのはいつもの事だから任せておく。

ギルドの話しを聞いていくつか納得出来る点もあったしこちらから提供できる情報もあった。


「大型化についてもだが実験船、ガーランドでは制約のある部分が多数ある。

 大きいのは動力配分。

 ガーランドでは光子発生型核動力、1其で船のエネルギーをすべて供給している。

 これが制約になっているのが判明した。

 大きいのは重力発生器。こちらも同様に大型化出来るのではないかと実験を行なった。

 大型化し動力一つで最大稼動した場合より大きな重力を発生出来る。

 ガーランドに搭載されている重力発生器は通常の物が改良されているのも判明した。

 実際に大型宇宙船で使用するのであれば複数の重力発生器を搭載出来るだろう。

 それぞれに専用動力を用意し供給する事で光子ロケットの加速に耐えられる可能性が高い。

 この時も通常動力でなく光子発生型核動力を使うのが良い。

 光子発生型核動力は通常の核動力よりも大きなエネルギーを発生している。

 これは大型化した場合の方が効果が高い。

 元々光子ロケットの使用を前提に出力の高い動力を使用していると考えられていた。

 新型動力として研究発表されていないのは偶然の産物かコストなどの問題か。

 おそらく光子ロケットの完成にしか興味がなかったという意見がギルドの見解だ。

 ギルドの研究者もそういう事がある。

 細かな研究結果について話すと終わらないと言われたから残りの部分は資料を見て欲しい。

 大型光子推進システムを建造するのは20時間から24時間を予定。

 試験スケジュール、行程についても纏めてあるからそっちを見て欲しい。 

 試験項目は光子ロケット実験の物をそのまま使っている。追加項目があれば調整しよう。」


端末で受け取った情報は細かな研究内容、解析内容など膨大な資料各種。

それとは別ファイルになっている今回の建造計画。

光子ロケット、推進関連資料についだがギルドはそんなに簡単に研究結果を公開していない。

いままでのすべての資料らしいから本気度が判るというものだ。

リラで大型宇宙船、星系外に出る船を作るなんてこの先にあるかも怪しいからな。

これだけの事をするのはわからないでもない。

ギルド全体で取り組む事かは疑問だがまあその分宇宙船建造がスムーズなら問題は無い。

ギルドの協力無く宇宙船は建造出来ないしな。

資料に関しては後でゆっくりと目を通すし必要ならセリナに聞けば答えてくれるだろう。

もう読み始めているしな。

動力炉については俺が見つけた情報があるからそれを出す事にする。

ここで出したら大変になるだろうが専門家ならなんとか出来るかもしれないしな。


「職業資格として機械技術者を目指しているので光子推進について研究を進めていました。

 それで判った事がいくつかありますが専門知識が無いので詳しい事は判りません。

 ギルドがこれだけの資料を提供していますのでこちらもすべて公開します。

 まずはガーランドに残っている資料でテータベースに無いもの。

 研究についての私的なメモと言われています。

 それから動力についてですが実物を設計図に書きました。

 それで判ったのは公開されている設計図とは違っているという点です。

 光子ロケットについても同様の事があるかもしれません。」


最初の一言でほうと関心する声があがるのは同じ道に来る者への興味だろうか。

まあ設計図と違っているという所の方が大きい反応だ。


動力炉の設計図を書くと言っても難しい事じゃない。

何も無い所から書くのは専門家じゃないと出来ないだろう。

俺は画像を取ってそれを3Dモデルに変換、ワイヤーフレームで書く。

そこにどんな機器が使われているかを調べてそのデータをそこに置く、コピーする。

これを繰り返していき配線、配管やネジ位置などを書き込んでいけば完成。

ネジ位置など細かな部分が大変で書き方も正式な書き方をするから慣れて無くてそれが大変だった。

動力炉については設計図に無い機械は調べているからどんな機能かはなんとなく判る。

制御システムだったり光子ロケット用に稼動する時だけ稼動する物だったりする。


「こちらの設計図を公開する前に2点ほど意見があります。

 光子ロケットについてですがガーランドの物を複製するのは無駄が多いです。

 実際に稼動させた状態で機能するのは三分の一程度、残りは通常の推進機部分です。

 光子ロケットとして使用するのであれば通常推進部分を削ればもっと自由度があります。

 重力発生器についてですがガーランドでは2其が設置されており相互に作用しています。

 通常は1其で稼動していますが光子推進を使用している時はリンクしています。

 リンクさせているのはコンピューター制御ですから機械的、ハード部分だけでは確認出来ません。

 効率的に稼動させる為かより大きな重力を発生させる為かもしれません。

 リンクさせるのは知っていましたが効果までは判りません。

 小型発生器で発生重力が足りないから調整しているだけかもしれません。

 こちらからは以上です。」


ギルドの話しを聞いてこちらが気にしていた事とか知っている事を情報として出す。

それから自分で作った設計図を情報として提供するがまだ完全じゃない。

細かな書き込みはこれからだし動力部の中心部分についてもこれからだ。

核融合関連部分はギルドの設計図を丸々コピーして置いただけ。

その部分については専門家じゃなければ無理だしちゃんとした防護服を着ないと作業出来ない。

つまりは中の画像もまだ撮れていない。その辺りは口頭で告げる。

じっと読み込まれると採点されている気分になるからやめて欲しい。

職業資格の事を言わなければこんな気分にはならなかったな。

実際に資格を取る時は書類送付だけでも審査されるからそのつもりだったしな。


「未完成だが丁寧な仕事だな。ちゃんと理解しようとしているのが評価出来る。

 これであれば審査には問題ないだろう。だが合格するかは添付レポート次第だな。

 各部、もしくは専門とする部分について理解が足りなければ落とされる。

 最終的には動力部全てを自身の職業とするのを目指す方が良い。

 確実に合格を得るなら分野を一つか二つに絞ってまず合格してしまうのが最適だ。

 もちろんこのまま動力炉全てについてでも良い。

 それが審査され評価された場合ギルドであれば役職付き採用は確実だな。」


「そんなのは前例がありませんよ。

 採用後に実際作業させて使えるなら半年くらいで昇進でしょう。」


「ギルドに入る奴はどこかに特化して審査に出すから比べられん。」


「ギルド関連業務からギルドに入る人間が多いからでしょう。

 もう少し外部の人間を採用する事も考えた方が良いかもしれません。」


「それは難しくないか?まあここで話す事ではないが記録しておいた方が良い。

 ギルドの相談案件に優先として3者で書き込めば検討もあるだろう。

 さっさとそれは終わらせろ。

 イスト司令官、この設計図はこちらで公開しても構いませんか?」


当然そうなるな。

公開されてしまうと資格審査が厳しくなる。

まあ元々どこにもない光子推進を審査対象とする事で少し楽に通ろうとする狙いがあった。

本物はガーランドにしか無いし後はデータベースにしか情報は無い。

そうなると審査する側も調査が大変で設計図が正しいとなればそれだけで合格出来るだろう。

もしくは専門家が調査して合否確認を行なう流れか。

この辺りは前例がある。

そうなって光子推進の研究が進めば良いなとも思っていたんだ。

まあそれなら良いか。ここで光子推進については進展する。

実用化、運用なんて遠い未来でも無理と思っていたのが実際に使われるんだからな。

資格については普通に勉強はしているしなんとかなるだろう。


「構いません。研究が進むならどうぞ。」


「職業資格の時には一報してくれ。

 今回の評価を加点するように我々が働きかけよう。

 この設計図は研究という点では有効だ。機器についてもほぼ調べてある。

 何点か不明な機器については実物を見させて頂きたい。」


まあ個人的に使う設計図も送ったからな。差異を赤く表示した設計図。

実物を見せるのは問題無い。


「それではすぐに移動しましょう。

 スケジュールとしては本日中に終わらせてしまいたいのです。

 スケジュール調整が出来る方もガーランドにお呼びください。

 研究中にそちらは終わらせてしまいましょう。」


答える前にセリナが立ち上がった。

こちらを見た視線が厳しい。

こんなセリナは始めてみる。

原因としては設計図と違っている事を話さなかった事だろうな。

それについてなぜ言ってくれなかったのですという所だろう。

光子魚雷の時に物質生成したはずだが設計図と比べたりはしなかったんだろう。

逆に言えば謎の機械もセリナに聞けば判るだろう。

まあ自分で全部解明したかったんだから仕方が無い。


光子推進についてはこの日を使って後はガーランドで進められた。

各種研究に使える時間の算出、建造計画、実験計画。

ギルド側のスケジュールは酷いものだ。

結局後日に問題が出てきたがセリナがそれを予見しており俺達としては問題にならなかった。


むしろ翌日からの方が大変だった。

フリーダム艦に対する攻撃方法、戦闘についてだ。

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