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竪琴宇宙のサクシード  作者: MAD-WMR
55/82

4-1 リラの急造宇宙船

リラ軌道戦から8日。

広い中央司令室、メインブリッジと呼ばれる場所で一番重要な席に座る俺。

とにかく落ち着かない。

白の豪華な上着、ジャケットはともかくデザインはセリナの服を参考にした。

豪華なジャケットは行政官の服を元として作られた新しい衣装だからだ。

宇宙軍総司令としての格好。

そんな立場だから宇宙船の艦長席に座っている、座らされている。

2歩後ろにはセリナが立っていて端末などで必要な情報を確認中。

セリナも新しい衣装を着ているが元々来ていた服が元だし色も同じだから違和感は無い。

俺としては一番見慣れている格好なので色を参考にして良かったのはある。

セリナは今は情報管理官という役職を得ていた。

この宇宙船での役職で情報管理、各情報の取り纏めを行なっている。

コンピューターを使った情報管理能力を買われての事で当然とも言える。

管理官と言うだけに全部で4名しか居ないが情報管理部の長だ。

今近くでのんびりとしているのは俺の秘書的役割もしているからで部下となった者達を鍛える為でもある。


宇宙船は予定のスケジュールから遅れずに出発。

出発から1日でリラ11の軌道外に出たのだから十分な性能だ。

周辺で忙しくしている大人たちは実行間近な試験の最終確認。

ここでの試験結果次第で今後の予定が大きく変わる。

その試験というのは光子推進。

すでに稼動試験は終えておりここでの試験というのは実際に稼動させる試験。

予定されている速度が出せるのかどうか、本格稼動させても問題が無いか。

宇宙船とも言えないこの船に光子ロケットが搭載されたのも色々あって大変だった。


星系外へ移動する宇宙船が必要となった。

フリーダム艦の兵器、最後に使われた超大型レーザー。

あれは本来もっと遠距離から艦隊や惑星に対して使用する兵器であるという事。

射程距離、有効距離は不明であるもののかなりの遠距離から攻撃は可能。

リラへと接近しているフリーダム艦をリラ星系に侵入させるのは危険と判断された。

星系に来た所で迎え撃つ計画は変更、白紙。


ここで最大の変更点はスケジュール。

フリーダム艦の到着は3週間後の予定、元々は2週間が準備期間。

星系外で迎撃する事となり移動時間が必要でリラの宇宙船であれば時間が掛かる。

準備に使える時間は6日しかないと計算されまったく余裕のないスケジュール。

おかげで戦いのあったその日から忙しく動く事になって最悪だった。


リラ軌道戦が終わって行政府の協力が大きくなった段階でさらに予定は変更された。

関係者が多くなってしまうからだ。

協力者を含めて移動出来る大型の宇宙船はリラには存在しない。

それをどうにかする手段はサトウのじいちゃんとセリナの悪巧みで実現してしまった。


フリーダム艦との戦闘を終えて軌道エレベーターステーションへと帰還。

セリナが連絡しサトウのじいちゃんと計画について話す事が最初だった。

スケジュールが大きく変更される事を話し、行政府や周辺の影響について確認。

そこからセリナの提案が始まった。


「今回の計画についてサトウ氏に2つの提案があります。

 1つ目ですが破棄ステーションについて情報の公開です。

 そのステーションを次の計画に使用する事を行政府に認めるよう調整もお願いします。

 破棄ステーションはリラ周辺宇宙に存在する建造物としては宇宙船に最適です。

 現在使用されていないステーションですがすぐに稼動が可能であり居住に問題がありません。

 宇宙空間での居住が考えられており僅かな補強で航行可能な状態に出来ます。

 乗員が多数となっても問題なく兵器の収容スペースも確保出来ます。

 このように宇宙船へと改造、使用するのに最適です。」


「了解。使用する事、調整共に問題無し。

 改造は可能と推測、資源調達は他ステーションを資源化。

 船、兵器などの建造には不足。」


「そちらについてがもうひとつのお願いです。

 こちらを確認してください。」


セリナが端末に表示したのはリラ4の採掘施設についての情報。

その下にはいくつもの書類。


「この採掘施設はサトウ氏、キケラクトさんが計画、建設した事にして下さい。

 キケラクトさんの私物から情報を得てイストが知りサトウ氏に確認を行なった事となります。」


リラ4の採掘施設を使う、公開するのは帰還前に相談されて了承している。

資源が足りないのは確実で短時間で確保する手段は他には思いつかなかった。

特に鉱物資源はリラ6には存在しない。


「不可。計画規模巨大。内容変更、四長老が計画、秘匿情報化。

 所有情報膨大、増加は問題無し。」


じいちゃんとサトウのじいちゃんだけでなく四長老と呼ばれた4人の計画にする。

サトウのじいちゃんが隠している情報は沢山あるからひとつくらい増えても問題は無いそうだ。

秘匿情報は連名であればその全員が亡くなった後には公開される。

四長老最後の1人、サトウのじいちゃんの秘匿情報は今から期待されているという事だ。

何度か行政府から生前公開をして下さいと提案されているのも聞いた。

セリナが出した書類を幾つもに分割してそれぞれの得意分野に分けて四長老で分配。

リラ4にはサトウ氏の依頼で俺も採掘に行った事にされた。

その資源を使ってレールガンの弾薬や軌道戦で使用した兵器を作った事になる。

それは基本的には正しい。

念の為に作られた設定はちゃんと読み込む。

ある程度時間がたってからの質問には軌道戦やこれからの作戦がの事があってよく覚えていないと誤魔化せば良いと指示された。


リラ4の施設に設置してあるマスドライバーについては問題ないとサトウのじいちゃんの判断。

資源があれば今のリラでも建造出来るしその技術応用でレールガンも作れる。

レールガンについてはすでに知られているし隠す意味が無い。

ガーランドなら古い資料が残っていても誤魔化せるし研究者の記憶を記録した物なら非公開で問題ない。

穴だらけだがサトウのじいちゃん、四長老のとんでもなさで覆い隠す。

良いように使って申し訳ないがじいちゃんの人脈の広さも考えての事。

じいちゃんならどんな人からどんな資料を貰っていてもおかしくないそうだ。

それを悪用したり悪く使ったりする人では無いから。

遺品などとして集まった情報はサトウのじいちゃんによるとほとんど公開して来たらしい。

残してあるものがガーランドに残っているのではないかというのが噂される事なんだと。

じいちゃんの残した船内の私物は一通り見たけど正直そういう物は無かったと思う。

部屋はそのまま残してあるからそのうちちゃんと片付けて行きたい。


後で行政府に説明した時はサトウのじいちゃんの言葉の少なさ、逆に膨大な量の文字資料。

この二つがあり問題も見つからずセリナの計画した通りに進んだ。

書類や記録に問題が見つからないのは当然。

多分このリラ6で最もコンピューター系に強いふたりが揃っているからだ。

あちらこちら記録の改竄はしていたはずだ。


リラ軌道戦の翌日、ガーランドで破棄ステーションに向かった。

ガーランドは元に戻してある。戦闘用だと運搬が出来ないし実は推進剤の消費も大きい。

色々あってギルド員、引退したギルド員が10名同乗。

なんか揉めたらしいのは光子ロケット搭載のガーランドで実際に乗る機会は滅多に無いからだ。

なんかお偉いさんが多いそうで緊張するかと思ったけれど知っている人もいてそうでもなかった。

結構速度を上げて短時間での到着。

推進剤関係、資源についてはガス惑星のリラ9で採取されている。

今朝から大量の輸送船がリラ9の施設に向かって回収中。

破棄ステーションを宇宙船にした時にも使うしそこまでにも大量に使うから。

他の輸送船などを投入する普通に仕事として使うのが行政府としての協力。

フリーダムに渡るはずだった食料もそのまま破棄ステーションに運びこんで乗員で使う。

この輸送もすでに輸送船で計画中。

リラ全体で次のフリーダム戦に向けて協力している感じはするが宇宙だけの事。


破棄ステーションの宇宙船改造については専門家がギルド員から派遣されてすぐに設計が始まる。

建造はギルド員の人員が最終的には7割を破棄ステーションに投入するという力業だ。

全体的な補修計画とこれから設置する施設郡の配置。

施設といっても戦いに使う場所も多いからその役割、使用方法を理解して設置する必要がある。

早く作る必要もあってその辺りは常に俺へと連絡が来た。

毎回どんな施設でどんな目的かを説明して拡張予定なども教える。

最初にざっと配置案は考えていたが設計者の手でいくつかは場所が変えられた。

船全体のバランスなどもある。

ステーション自体が7つのブロックで構成されていて非常時には分離出来る。

もし何かあった場合、後部のみ残して後は分離、離脱速度を上げられるようにしたい。

そんな要望もあって考えられた配置になった。

セリナに確認しても問題は無く俺としても素人なので口を出せる事では無い。

とか思っていたのに大型宇宙船なんて誰も作った事が無くて知識だけ。

ギルド員と話をしている時にそう言われて半日資料を確認して色々と実りある会議が出来た。

資料は当然セリナから提供して貰ったものでリラに話して問題無い知識の範囲。

直接見せる事は出来ないから自分で確認して読んで理解して話すしかない。

面白くて一気に読んでしまって他の予定が少しずれたとか寝不足だったとかは些細な問題。


宇宙船は役割としては移動用かつ生産拠点。

この宇宙船で直接戦うことはしない。

武装や装甲などを作っている時間はまったく無いからだ。

従って必要なのは推進器、生産拠点、格納庫。

生産拠点については生産ステーションの上部及びギルドの管理する港が参考にされる。

結局最中央から後ろ3ブロックに纏めて作る事になった。

ステーションの基本部分に円形の建造物を取り付けてそこが生産拠点。

中央部に物質生成機を設置して必要な物資を生産、外周で組み立てを行い隣の格納庫に運ぶ。

物質生成機の投入は行政府に依頼した事で宇宙船建造の時間短縮には必須。

リラには物質生成機が実は3つ存在していた。

ひとつは地上に、もうひとつは生産ステーションに、後はギルド所有の物。

このうちギルド所有の物質生成機は行政府管理では無かった。

だから情報は公開されていないしギルドも公開していなかった。

基本的には宇宙船建造用として確保している物で今はほとんど稼動していない。

重力発生器は完成品を物質生成機で作らないと作れない失われた技術になっているそうだ。

もちろんギルド員が研究しているから技術解析は進んでいる。

まだ改良とか新型とかを作るには至っていない。

重力発生器などの宇宙船関連技術にはやっぱりそういう事が多いらしい。

ギルド的にも実はフリーダム艦の技術情報はすごく望んでいる。

出来れば一隻拿捕、形あるまま稼動する状態で手に入れたいそうで無理を頼まれた。


そんな余裕があれば対応するが正直そこまで考えて戦える状態じゃない。

1週間で宇宙での戦闘については学んだ、詰め込んだ、知識だけ。

リラ軌道戦の時よりも準備不足でぎりぎりなのだ。

セリナがさすがにフリーダム艦を2隻か3隻撃破すれば降伏に応じるのでないか。

少なくとも交渉は出来るのではないかと言っているのでそれに期待するしかないのだ。


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