表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竪琴宇宙のサクシード  作者: MAD-WMR
53/82

3-15 リラ軌道戦:5 フリーダム艦反抗/作戦終了

フリーダム艦の後進速度が上がっておりそれに合わせてある程度安全な位置を維持しつつ周回。

ガーランドの状態を確認すれば時折防御システムから機銃が撃たれていた。

かなりの距離があるが小型ミサイルの軌道上に向けて撃っているようで少しは迎撃出来ているようだ。

変な軌道で撃てば味方船に当たるがそこはちゃんと計算されている。

セリナの能力があっての事でほかの船はある程度近寄ったミサイルを迎撃している。

ミサイルの半数は途中で軌道を変えてこのままであれば2船が囲まれ集中砲火を受ける。

まだ半数も迎撃出来ておらず進行方向のミサイルを先に撃破して離脱するようになっていた。


フリーダム艦の上に上がったガーランドの方向が急に変わる。

同時に船の傾きも調整されたのはセリナの介入、この船については他に原因は無い。

方向が変わる前に各所のレールガンが発射された。


「敵艦、艦首レーザー発射、反射レーザーシステムを迎撃。」


画像を見ればフリーダム艦の前方に向けて四角錐の前方付近から4本の光線が出ていた。

前方に出たなら問題は無く、反射レーザーシステムを撃破したからだろう。

さっきからガーランドはフリーダム艦の前方寄り、高い高度の軌道を維持していた。

セリナが常に前方に対して警戒して対応出来るようにしていたということだ。

こちらへの指示ではなく直接操作したならそれだけ時間に余裕が無かった。

警戒していたフリーダム艦首のレーザー、当たればどの船も一撃だ。

位置的にガーランドはあまりミサイル迎撃に参加出来ていないがそれを阻止したのなら十分。


「敵艦、艦首レーザー再発射、反射システム稼働。」


再び撃たれた艦首レーザーはすぐに方向を変えフリーダム艦後方へと向かった。

余り狙われていないようでフリーダム艦からかなり離れた位置を通過している。

2秒程の照射で一度途切れ再び発射が繰り返されていく。

このまま続けられるとフリーダム艦から離れようとすればレーザーに当たる。

ミサイルに狙われている船はあまり大きくフリーダム艦から離れられない。

逃げる範囲がある程度に限定された。


「コンテナミサイル、射出確認。」


さっきのばらまくミサイル、今度は1つを発射前に破壊、残りも壊せたがミサイルは撃たれた。

さらにミサイルの数が増えて今度も迂回するミサイルがある。

すぐに軌道が計算され別の2船に向かうのが確定。これで狙われているのは4船。

ミサイル、レーザーから質量兵器というのがさっきの攻撃パターンだったぞ。

警戒していた艦首の大型レーザーをすでに使っているならまだ他にも何かあるか。


「セリナ、何か他の攻撃は予測出来るか?」


先に聞いて置けば警戒し易いし他の船に注意するように言える。


「不明、警戒最大。

 敵艦後部に変化、装甲部展開。」


始めて来た最重要、最優先での指示に目を通すとやばい。


「敵艦前方へ加速、方向転換、敵艦前方より離脱。」


「各船、最大速度。フリーダム艦の前から逃げろ。」


セリナのメッセージを待たずに無線に叫んだ。



フリーダム艦後方に発生した閃光。

核パルス推進、核爆発を繰り返し発生させその衝撃で推進する推進方式の物。

その推進力は後進速度を打ち消すだけでなく艦尾を下へ沈ませた。

艦首を上に向ける推進と合わさり斜めへと艦が回転を始め方向を変えていく。

その間も移動は続き艦首方向が変わった後は前進ではなく後進となる。

方向を変えながら側面にあるレーザー砲が次々と放たれミサイルから逃げるリラ船を狙う。

連続して照射するのではなく秒単位の連射、点の攻撃ではなく面での攻撃。

レーザーの発射が始まる直前からフリーダム艦中央から先端に掛けての部分が動き出す。

艦の面は上下左右ではなく斜めに向いておりその部分が徐々に四方へと開いていく。

その内部、艦中央に大きなエネルギー光が輝く。

発射されているレーザーと同じだが蓄えられたエネルギー量が違う。

艦方向が変わる前にその輝きは光線として放出された。

フリーダム艦が方向を変えるのに合わせその光線は周囲を飛ぶリラ船に向かっていく。

方向を変える艦の右側面、四方に開いた部分に起きた3つの爆発。

上部に2箇所、下部に1箇所。

爆発が起きた部分から開いた部分は引きちぎれ分離していく。

艦後方、四角推としてはもっとも大きな部分にも同時に小さな閃光。

それが続き最後に爆風が艦の外へと抜けた。



「各船、最大速度。フリーダム艦の前から逃げろ。

 ミサイルは当たっても良い。」


方向を変えるフリーダム艦の中央に巨大な光が画像に映し出された。


「セリナ、あれは何だ?」


フリーダム艦の前方部分の形が変わっていくのを画像で見ながら操船しつつセリナに聞いた。


「敵艦中央に高熱量。大型レーザーと断定/推定:直径50m。

 リラ船は周辺でも被害が出ます。回避指示、各船対応に遅れ無し。」


むしろフリーダム艦から離れていたガーランドの方が巻き込まれやすくなっていた。

周辺って事は完全に当たらなくても被害があるんだろう。

完全には確認出来ていないがセリナの報告からすれば他の船も被害は出ないようだ。


「マスドライバーは大丈夫か?」


フリーダム艦の位置はすでに元々の予定からは大きく変わっているし方向も違っている。

予定していたマスドライバーが外れるなら何か考えないとフリーダム艦は無力化出来ない。


「フリーダム艦座標へ針路調整済み。敵艦レーザー、リラ船へ攻撃開始。」


恐ろしい勢いでレーザーがばら撒かれる。

光線なのにばら撒くというのも変だがとにかく数が撃たれ反射システムも使われている。

すべての面の残っているレーザーを撃っているようだ。

ガーランドも針路を変えるが数が多くて避けきれない。

防御システムはすでに作動しているし照射時間が短い分ダメージは小さい。

それが判るのは何発か当たったからだがダメージは蓄積する。

レーザーだけのガーランドはともかくミサイルが来ている状況で避けきれないのがまずい。

フリーダム艦から巨大な光、レーザーが放たれたのを画像で見る。

あれが超大型レーザー、圧倒的な大きさでフリーダム艦の艦首から放射されていた。

その光線はフリーダム艦に合わせて方向を変えてリラの船を追っていく。


「セリナ、あれは何秒くらい続く?」


「二七八式対宙破砕貫通弾頭、軌道確定、弾道分離。

 着弾まで5,4、3、2、1、命中弾5発。

 次弾、2秒、1、0、最終、3秒、2、1、0。」


何かと確認すればマスドライバーで射出していたあの大型弾だ。

弾頭部分は前の三分の一くらい、後部は針路修正用の推進部分。

弾頭だけならもっと速度は上がるがまったく制御出来ないから動かない目標にしか当たらない。

射出後、最終的に対象に向けて後部の推進部分で細かく針路を修正して命中させるそうだ。

予定では最初に6発が撃ち込まれた、5発命中だから1つ外れた。

次弾、最終と続くのはフリーダム艦後部に撃ち込む攻撃。

1発目、2発目は装甲を貫き破壊し内部へと被害を広げる。

同じ位置に撃ち込む事でより内部へと被害を増やし艦中央に届かせる。

最終、3発目は炸薬中心、爆発を起こして内部施設、重要物へ大きな被害を与える。

後部2箇所を狙ってこの攻撃がされているのは動力がそこにあると推測されているからだ。


「後部連撃、1郡成功、1郡予定深度未到達。

 両郡内部被害確定、状況確認中。

 フリーダム艦、爆散。」


マスドライバーの着弾報告から結果報告と続いて艦の爆発に続いた。

画像を見ればもう大きな閃光しか映っていない。

その閃光は最初に破壊したフリーダム艦と同じに見えた。

戦況確認用のモニター、映像モニター、指示表示のモニター等を見ていく。

もうフリーダム艦は宇宙には無い。

すでに爆発の閃光も収まり1隻目と同じで大型艦は何の痕跡も無く消えている。


「フリーダム艦の消失を確認。

 各船に残存ミサイル対応を指示。」


フリーダム艦は破壊した。終わった。

ひとつ大きく息を吐く。

余韻を味わう暇は無くガーランドの針路を変更して残っているミサイルの迎撃に向かう。

どの船もかなりの速度で加速中、特にミサイルに狙われている船は速度を落とせない。

レーザーに巻き込まれてミサイルの数も減ったが表示としてはまだ100近くあり今も減って行く。

ガーランドの防御システムはまだ残弾が多く他に使用する事は無いから全部使っていい。

複数の船のミサイルを撃破出来る軌道に乗せれば小刻みに機銃を撃っていく。

撃っていると判るのはモニター表示を見ているからだ。

1船はミサイルから逃げ切れない。

すでに戦闘が終了したからブロックを切り離して被害を減らす指示が出た。

もう1船は6発くらい当たるが被害としてはなんとか耐えられる。

そうなるようにセリナが調整して迎撃した結果だ。


「イスト、敵勢勢力無し。状況終了です。」


横に座っているセリナから言葉で告げられた。


『各船、戦闘終了。

 通常速度に減速。指定エリアで宇宙服の信号捜索、回収作業へ以降。』


用意していた言葉を無線で伝えればセリナが繋いだのだろう。

無線からそれぞれの船から歓喜する様子が音声で入って来た。

いくつも重なっているがそれほど大きな音でもなく不快では無い。

半数以上の船が残ったから結果としては良い方だろう。

犠牲者がそれだけ少なかったということ。

改めてフリーダム艦が無い事、危険が残っていない事を確認しガーランドを減速させていく。

ガーランドは救助活動には参加しない。

完全に戦闘用の構成になっていて収納スペースがまったく無いからだ。

他の船はブロックを交換しただけの船も多く収容出来る。


セリナから指示されたのはフリーダム艦の残骸回収。

それと平行してセリナがガーランドを復元する。

この船を修理するのではなく強化した部分を元に戻す作業。

仮眠していた間に物質生成機でガーランドは強化していたそうだ。

その部分については技術的にリラに教えられない部分だからそれを元に戻す作業。

セリナは船外に出てその作業を行う。

船全体だから船外を移動した方が作業は早い。

宇宙を飛ぶ残骸の回収も本来は互いの速度を合わせて危険が無いようにして回収する等が必要だ。

時間短縮の為にセリナが飛んでいる物体をそのまま物質生成機で取り込む。

取り込むときに分析し後で生成して行政府に引き渡す。

それらは船外にワイヤーなどで固定しておくつもりだ。

電子機器がありそうなパーツについては手作業でちゃんと回収。

重要そうなめぼしい物から回収作業を始めるのでガーランドを指示された通りに飛ばす。

セリナはその間に救助活動も支援、宇宙服が出している信号の場所を他の船に伝えていた。


「イスト、戦闘は終わりました。感想はいかがですか?」


「ほっとしてる。フリーダム艦は排除出来たし予想より被害は少なかった。

 終わったときに思ったのは勝ったとか性向したよりそっちかな。」


「安堵ですね。それは生き残ったという安堵もありますか?」


「ガーランドが破壊されるなら最後の予定だったろ。

 戦闘中も破壊されるのはあまり考えていなかったな。

 船の被害が少なかったのはセリナが改造していたのもあったんだろ。

 それについては助かった。

 そうだな・・・・。色々とありがとう。」


無事だつたのも他の船の被害が少なかったのもフリーダム艦を破壊出来た事もこうやって戦えた事。

かなり無理してとか大きく解釈して協力してくれたセリナのおかげだ。

そういう色々を込めて感謝の言葉。


「こういう状況での感謝の言葉ですか。

 色々と解釈はあるのでしょうね。こういう場合労いなどの方が適切ではないでしょうか。

 イスト、お疲れ様でした。」


手を体の前で合わせてお辞儀される。

わざわざ船外カメラで画像を送って来た。

そういえばこうやって丁寧に一礼されるのは久々に見るな。


「お疲れ様。次も頼りにする。」


「かしこまりました。

 契約内容に従い最大限に協力させて頂きます。」


そんな会話をしてから回収作業が本格化。

レーザー砲の残骸、外装の破片、反射レーザー関連、ミサイルの残骸など。

回収、分析した結果についての話になっていった。


その間に救助された者や重傷者が先にステーションに運ばれる事になった。

残った船は色々な回収作業。

動かない船の牽引、遺体や遺品、そういった作業だ。

最終的に1時間程で作業に区切りがついた。


「イスト、固定作業があるので外で手伝ってください。

 外装は荒れており移動用バーニアの装着が必要です。」


外に居るセリナからそんな通信。

手伝う必要がある作業でも無いはずだが外を自分で見ようと思った。

いつものガーランドなら窓から宇宙を見ていたからな。

船の空気は抜いたままだから移動は簡単。

エアロックの扉はすぐに開きバーニアを背負えば梯子を持って上に向かって飛び上がる。

船の上で見渡せばかなり船が傷んでいる。

広範囲に融解している船体表面、色々と残骸も刺さっていたりするのは速度が速かったからか。

船の先端部分でセリナが手を振っている。

そちらに行くと先端部分に来るように促された。

ガーランドの横、あちらをと示された方向を見ればリラ6が見えた。

かなり遠くに離れている。

ステーション間の移動とかで良く見る風景。

慣れているから軌道エレベーターステーションがあの辺りかと判る。

ただ違う点もある。

いつも周回していた2つの大きな黒い物体、フリーダムの船が無い。

ずっとあった物が無いのは違和感がある。

でもこれが今回の結果だ。

作戦の成功、戦闘の勝利をやっと実感する。

ゆっくりと体を一回転させて宇宙を見た。

手を合わせて祈る。

戦いで亡くなった宇宙船乗りたちたけでなくすべての人達の冥福を。


「急に手を合わせてどうしたのですか?」


「戦いで亡くなった人達に祈ったんだよ。」


「イスト、それは宇宙船乗りたちをですか?」


「宇宙船乗りたちもだしフリーダム艦の乗員もだな。

 死者に区別をつける必要は無いからな。」


「それであればもっときちんと行ないましょう。

 このような行為は個人が始め周囲に広がり地域に広がりやがて伝統となるのです。

 戦闘の終了を告げる為にもせっかくの立場を利用しましょう。」


「そんな大げさにするものでもないだろう。」


そんな言葉は無視してセリナはすぐに準備を整えた。


「各船、3:30までに余裕のある者は宇宙に出て欲しい。」


最初に他の船に連絡。

それから行政官権限を使って全域に連絡の用意。

丁度良いということで3:33に開始した。


「この連絡を受けた全ての者達へ。個人の価値観と個人の宗教観に基づき行動して下さい。

 戦いで亡くなった者達へ黙祷。」


個人の価値観と個人の宗教観はこういう時に使われる定形文。

1分少しが過ぎて戦闘の終了を告げる。

その後の撤収については通常の連絡で各船に伝えた。


後で聞いたらこの連絡を聞いた各ステーションや避難している人達も黙祷をした方は居たらしい。

なるほど。セリナの言う通りこういう事が伝統に繋がるのかもな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ