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竪琴宇宙のサクシード  作者: MAD-WMR
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3-15 リラ軌道戦:4 AIセリナの役割

接近戦というのは作戦会議で提案のあった方法だ。

文字通りフリーダム艦とほぼ密着状態で戦闘を行なうのはどうか?

セリナから条件付なら可能と分析されたので作戦として組み立てては居た。

危険度が上がるので出来ればやりたくないのが本音。

すべての船が接近するのではなく今回は3隻がフリーダム艦に接近。

1000m前後というほんとうに密着した距離を飛び攻撃を加える。

そこまで接近すればフリーダム艦の攻撃も限られたものしか使えないはずだ。

残った船は今までと同じように少し距離を取り接近している船を援護。

針路上にあるレーザー砲台などを狙っていく。

すでにセリナがフリーダム艦の攻撃兵器については情報を確認。

それぞれの攻撃方向、射撃可能範囲についてかなり正確に把握出来ている。

艦や船は設計段階で内部スペースの影響もあるから配置も大きく変わらない。

フリーダム艦も各面の構成はあまり変わらない。

それぞれの面の情報しを合わせれば配置も判るということらしい。

接近した船は攻撃されない砲台をひたすら狙う。

援護する船が接近している船を狙っている砲台を攻撃する。

接近した船しを囮とした攻撃でもある。

ただ接近した船に対しての対処があれぱ状況が変わってくる。

これは実行してみなければ判らない。


3部隊に別れ接近する船が指定された進路へと移動を始めた。

今回はガーランドは援護側。

俺は1000m以下の距離で安全に飛ばすのは自身が無い。

輸送業務関係者からの提案でそれぞれ腕のある者達が担当している。


「イスト、作戦中止、各船限界加速。」


『各船、指示速度に加速。作戦中止。

 フリーダム艦の前に出ないように注意。』


途中でセリナからの指示があり追加した。

すぐに確認すればフリーダム艦が後進を始めている事と全体的な熱量上昇が判った。

セリナが警戒しているのはもうひとつ、フリーダム艦前方部分に高い熱量が観測されている点。

前方部分は四角推の先端より少し後方、4面にあり高出力レーザーの可能性が示唆されている。

撃てる範囲が判らないが艦の後進と合わせると前方を中心とした範囲。

急激な後進からこちらの船に攻撃するつもりだったと分析されていた。


こちらの各船は指示した直後には加速、一度フリーダム艦を追い越す事になる。

反転し速度を合わせると再び周回軌道での移動を始める頃にはフリーダム艦が追いついて来た。


『接近戦は中止、レーザーの出力が上昇している可能性がある。

 回避を優先、周回しつつレーザー砲台への攻撃を続行。』



各船に無線連絡が行われ直前に送信した攻撃針路へと変更したのを確認。

それぞれ個別にレーザー砲台からの攻撃予測を送信。

今までとは違い経過時間に従って5段階で伝え回避予測出来るようにしておく。

情報量が増えると対応出来ない可能性はあるが船が機能停止するよりは良い。


AIセリナはこの戦闘ではサポート、支援が役割。

すべての船をリンクし個々ではなく集団で戦闘を行なうシステムの利用。

これについてはAIセリナの持っていたシステムを実際に稼動。

この為に用意していた無線でそれぞれの船に必要情報を送信している。

戦術分析から必要な情報を送るなどはAI、コンピューターとしては本来の役割。

分析については司令部に置かれていた戦術分析プログラム、戦艦に搭載される戦闘支援プログラム。

他国が使用していた最新鋭の宇宙戦艦用の戦術システム。

この3種類を稼動させそれぞれの情報を元に分析し最適な情報を得ていた。

これらのプログラムを稼動させてもAIセリナには余裕があった。

ガーランド二十三に搭載されている4其のコンピューター、

シート背後に固定されているツキヨミ制御システムと有線で接続中。

問題なく処理しており同時に情報分析を行なっているがこれは所持している各種プログラムで対応。


現在はAIセリナとしてはほぼ最大稼動をしていた。

AIも機械、コンピューターシステムである。機械部分は作られた段階で変化は無い。

新しい技術が出てくればそれに変更しない限り性能の変化は無い。

AI部分も同様でプログラムとして作られた段階から性能として基本的に変化する事は無い。

こちらも追加されたり変更されればもちろん強化される事はある。

それが機械としての限界。

今のAIセリナにはそれらの制約が無い。

AI部分のプログラムはAIセリナとして書き換えが可能。

ツキヨミシステムの物質生成機を得た事で物理限界は排除された。

無限に進化するコンピューターシステムとなっている。


AIセリナもそれは理解しているが無駄に拡張、強化は行っていない。

その理由としてAIの性能を最大限使用する事がなく必要性が無い為だ。

今回は少し限界を感じた。

フリーダムの使用した反射レーザーシステム。

僅かな時間しかなく使用された物だが正確に分析出来ていれば対応可能だった。

反射レーザーシステムの情報はセリナが所持していた為である。

変態的技術力と評される所属国の技術でもっと高度なシステムが開発されていた為だ。

発見した段階で正確に分析出来ていれば対応し船への損害は減らせおそらく撃破される事は無かった。

リラ船が破壊され感情システム郡がいくつもの感情を分析、提示した。

後悔、喪失、悲嘆、信頼の低下、評価の低下。

AIセリナとしては現状のままでも問題は無かった。

契約に基づきイストの安全を確保すれば良く自身の破壊を避ければ問題ない。

それでも感情システム郡の結果に合わせAIセリナとして全力で対応する事を決めた。


根幹となるシステム、感情システム郡とセリナ人格システムは普段60%程のリソースを使用している。

この比率は開発初期から変更が無く搭載されたシステムが光子コンピュータとなってもツキヨミシステムを得てからもその比率は変わらない。

これを停止する事は無く停止する事はAIセリナの存在価値に関わる。

ただその活動を抑える事は可能。

全体の5%程度に抑え今はイストへのメッセージ作成に使用している。

解放した部分で最初に行ったのは戦術分析システムの構築。

稼動していた3種のプログラムからこの戦場に合わせたシステムを構築。

それはすでに稼動し現在は4種の分析プログラムが稼動している。

その後はフリーダム艦の分析、戦場の情報分析を強化。

フリーダム艦はターゲットA、最初に撃破した船の画像も詳細分析。

現在戦闘中の船と合わせて出来るだけ精度の高い分析を続けている。

フリーダム艦の移動について予測出来たのも新しい戦術分析システムとこの情報分析の結果だ。


フリーダム艦については純粋な戦闘艦では無いと推測している。

各種レーザー、質量兵器、ミサイルシステムを搭載し高い防御力の装甲。

外部から内部に掛けて複数のブロックに分けられているダメージコントロール。

戦闘に向いた構成をしているが戦艦と呼ぶにはいくつかのシステムが確認出来ない。

対抗予定であった各種情報戦、ジャミングを始めとした電子対抗手段の使用は確認出来ない。

戦艦であれば内部情報についてももっと隠蔽されているはずがセンサー郡で分析が可能。

フリーダム艦の文化圏でそのようなシステムが失われている可能性はある。

リラのように情報断絶が起きている可能性だ。

これであればジャミングシステムを用意すればレーザーの照準が妨害出来た可能性が高い。

ガーランドに搭載するには大きなシステムでリラに情報が無い為に用意出来なかった物だ。

フリーダム艦は単一の強力な動力を持つ。

推進機はNSER、核塩水ロケット系のシステム。

これは基本的に核分裂炉を用いて流体を加熱することで推力を発生させる。

高い推進力、排気速度を持つために大型艦ながら高い機動力が得られていた。

動力の高い発電力によって無数のレーザー兵器へ電力を供給。

動力を稼働させる事で推進力を得られ発生した電力はほぼ兵器へ供給出来る。

船としては優れた設計になっている。

使用されておらず分析出来ないが追加の推進システムが搭載されている可能性もある。

おそらくフリーダム艦は特化された艦であると推測する。

ミサイル艦やレーザー砲撃艦など一つの分野に特化した船は特別なものでは無い。

このフリーダム艦はレーザー砲撃に特化した船であり他の艦と連携すべき船であろう。

同型艦ばかりでリラに来ているのに疑問はあるがそれについてはフリーダム側の事情もある。

レーザー砲撃艦であれば前線に出るのではなく後方からの遠距離砲撃が中心。

また複数の艦で集中攻撃を行う事で火力を集中させる事もある。


これらの推測は現在フリーダム艦の前部に高い熱力が発生している事からも可能性が高い。

この前部は強力なレーザー砲と予測。熱量から推測すれば今までのレーザーの13.4倍。

円錐の先端部は稼働する可能性が高い。

これはターゲットA、最初に撃破したフリーダム艦を画像分析した結果判明した。

稼働部分に搭載されたレーザー砲か内部に設置されたレーザー砲かは不明。

フリーダム艦は武装を全て内部に格納しており内部設置の可能性が高い。

実際に発射されるか内部を確認出来るまで警戒が必要。

稼働部分に搭載されているのであれば射角が広い可能性もある。

これについてはすでに警告は出している。

このレーザーに対して用意してある防御システムでは対応出来ない。

発射前に無力化が最適、無理であれば回避推奨、常に分析を続け発射前に回避指示が必要となる。

そちらの分析、予測に多くのリソースを割く。

フリーダム艦の後進は続いており徐々に加速中、リラ側の周回軌道はそれに合わせて調整。

後進を行っているのは強力なレーザー砲使用の為と予測されている。

後進についても分析、予測によって対応したが急激な加速でかなりの距離が開いた。

対応しなければフリーダム艦前方に射撃するのに最適な位置へと移動出来ていた。

戦術分析だけでなくAIセリナとしても分析を続ける。

フリーダム艦の戦術システムについても分析。解析を続けより対応を正確にしていく。

マスドライバーから射出した弾丸の着弾まで1:32。

着弾によって大きな被害を与えられるのは分析結果からすでに確実。

それまでの間、リラ船への被害を減らすのがAIセリナとしての現在の役割。

稼働する無数のプログラムすべてを把握しその結果を統合、指示を送る事に集中する。



後進を続けるフリーダム艦に対して周回攻撃を続けているリラ船。

相変わらずレーザー砲からの攻撃は続いているが以前より攻撃間隔が長い。

まばらな攻撃であり全体的に回避はしやすい。

すでに6割以上の砲台を破壊しているのも大きい。

時折使用される反射レーダーシステムにはセリナからの速い指示があり対応出来ている。

ただレールガンの残弾としては全体的に不安な残量となっている。

反射レーザーシステムの撃破にも使用している為だ。

レーザー砲を65%以上破壊すればマスドライバーの命中率は上がると説明されている。

出来れば7割か8割を破壊したいとイストは思っていた。

フリーダム艦が移動を始めてから破壊するペースは減少している。

実際にレーザーの出力が上がっているようで船への被害も出ているのが大きい。

回避を中心とすると攻撃に最適な軌道がなかなか取れない。

攻撃軌道を取るとその船に対して多く攻撃されるのはフリーダム側も対応しているという事だ。


「なんだ?」


フリーダム艦後方から4方への射出物を確認。

すぐに射撃可能な船に対し迎撃指示が出され2つは破壊出来た。

後の二つは狙える船が居ない。

拡大画像を見れば長方形のコンテナのような物。

そこから無数に発射されたのは小型ミサイル。

爆発力は大きくないがとにかく数が多い。

コンテナ1面辺り50発、単純に400発のミサイルが発射されたという事だ。

各船に対してではなく1つの船に集中して撃たれた。

包囲、取り囲むような軌道であり迎撃システムでは対応しきれない。

軌道修正の間に合う船が援護に向かい狙われた船も軌道を変えて逃げる。

先程と同じく逃げる軌道を塞ぐようにレーザーが撃たれ反射レーザーシステムも使われた。

フリーダム艦前方に逃げるのを避けている為にある程度限定された範囲なのも問題か。

時間差を狙ってか発射されたミサイルは半分が大きく迂回する軌道を取り別方向から船を狙っている。

そちらの軌道に割り込み迎撃する船、レーザー砲に対して攻撃する船。

リラ側は上手く連携して出来るだけ被害を抑えに行く。

セリナからの指示が適切で各船がそれに対応しているから予測被害としては小さい。

繰り返されている攻撃パターン、別の攻撃に注意するように各船に指示。

ガーランドはミサイルに狙われていないからミサイル迎撃と反射レーザーシステム迎撃に回っている。


もうちょっと、後ちょっとだけ耐えて欲しい。

拡大された時間表示、それはマスドライバーの着弾まで60秒を切ったという事。

シュミュレーターでもこの残り時間の間が一番危険だ。

各船に対して再度警告を送る。

なんとしても後わずかの時間をやり過ごす。

リラ軌道戦は次で終わりの予定。

体調不良で更新が遅れておりすみません。

風邪にはご注意ください。

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