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竪琴宇宙のサクシード  作者: MAD-WMR
51/82

3-15 リラ軌道戦:3 フリーダムの反撃

「ターゲット前部、後部よりミサイルの発射を確認。

 他にも放出物を確認、金属系の反応、機雷の可能性。

 後部ミサイルは大型、爆発力として危険なレベルです。」


セリナの予測が正しかったのか無線を使った瞬間にこれだ。

フリーダム側も人が戦闘を始めたのかもな。

流された画像を見ればフリーダム艦から何かが飛び出しそれが噴射炎を出して加速していた。

これはリアルタイムの映像では無い。


「ミサイルの迎撃計算、すでに残っていた機雷によって3割迎撃。

 各部隊、各船で対応可能です。」


ガーランドを含めて部隊だけでなく全ての船で互いに迎撃を行なう。

遅れる事なくすべての船が指示された迎撃軌道に入った。

ミサイルが赤い点で表示された簡易全体図を見ていれば確実に赤い点は数を減らしていく。

爆発系の兵器は自爆の可能性があるからそれほど使用されないという予測があった。

艦の近くで爆発すればフリーダム艦にも被害があるからだ。

その可能性があってのミサイルだとしたらきっと人間の意志で撃たれているよな。

最悪ミサイルの場合はフリーダム艦に接近すれば回避出来るかもしれないと予測されている。

艦に被害が出る距離では爆発しない、その前に自爆するなどの安全対策があるはずらしい。

それらの安全対策を無効にして撃ってくる戦い方もあるから確実な手段ではない。


『丸い板みたいなのが見える。機雷とは形が違うよ。結構数がある見たい。』


メッセージと共に画像が送られて来た。

急いでいたのかモニターの画像そのまま。

無数の画像が重なっているもので一番前に不鮮明な画像に丸いものがうっすら見える程度。


「ミサイルは大型船に3発直撃しますが被害は作戦に支障なし。

 5秒後にミサイル迎撃完了。画像を補正しました。」


補正された画像には丸いお盆のような物が見えていた。

色的に金属系だろう。さっきの報告についての補足だな。


監視役は船の速度が速く直接外を見ての監視は難しい。

それぞれの船に設置してあるカメラで監視し気になる事があれば記録画像から再確認を行なう。

各種画像だけを確認している監視役も居てフリーダム艦の被害確認、監視を行っている。

レールガンが外れた時にフリーダム艦に与えた損害なども分析されている。

リラ側のレールガンはフリーダム艦にはあまり有効ではない。

人を針で刺すようなもので当たれば痛いし弱い部分なら被害は大きい。

レールガンの砲台とか開いている質量兵器の発射口などだ。

現状でフリーダム艦に致命的な被害を与えるのも可能だがそれには弾薬が足りない。

破壊力が低すぎるそうだ。




フリーダム艦を周回しながら攻撃する各船の防御システムが機銃をばら撒く。

小刻みに方向を変えながら射出される弾丸の群れが高速で接近するミサイルは次々と爆発していく。

すべての船が一つの迎撃網として成り立っているのはAIセリナのコントロールによるものだ。

船の距離が近い所では互いの防御システムでそれぞれを狙っているミサイルを撃破する。

時に船首付近から放たれた機銃が中央付近のミサイルを撃破していたりする。

それぞれの船では近くのミサイルを破壊していると認識しているが実際はそうでもない。


鈍重そうに見える大型船は推進器を追加しており各方向、同等の加速力が出せた。

十分な機動力を持ち多く防御システムを積んでいる。

各面の防御システムが接近するミサイルの迎撃、近くを飛ぶ味方船のミサイルの撃破。

常に複数面の防御システムが稼動しており今のミサイル迎撃では大きな役割を果たした。

旋回しつつフリーダム艦の上面に出て来たがそこはレーザー砲台の無い安全エリア。

2秒程だが安心出来る。

そのエリアを拡大出来るよう反撃に備えダメージの少ない面が下に向いている。

船体の下にあるレールガン2門で正面にあるレーザー砲台へ射撃。

同時に回避とレーザー防御を展開。

正面から2本、横から1本のレーザーが照射されたが正面からのレーザーはすでに避けられていた。

横からのレーザーは1秒ほど照射された。

当たった段階ですでに船側は逆方向へ加速しており蛇行状態で短時間かすめただけ。

戦闘が始まってから何度もあった事で乗員たちも落ち着いて行動出来ていた。

フリーダム艦の各面から真上に何本ものレーザーが放たれ宇宙へと伸びる。

監視はそれを見て船内にむけて警告を怒鳴る。

変わった事が起きたら注意するのは散々言い聞かされた事。

戦闘が始めてだから何かあれば常に警告している。

乗員たちもそれに慣れる事なく警告されれば全員が警戒し注意を強めていた。

放たれていたレーザーが方向を変え船へと向かって来た。

監視役が警告する事は出来なかった。

それを見た時にはすでにレーザーは船に照射されその威力を発揮した。

船体上部や側面に20近いレーザーが照射された。

船体表面は加熱されレーザーはすぐに内部へと届き船体を貫く。

赤い無数の光が船に集まり光っていたのは5秒程。

それが消えた後、穴だらけとなり高熱で溶解した船体は漂うだけだった。




「何か推測はあるか、セリナ?」


円形の平たい金属物、それが兵器としたらいったいなんだ?

浮いているなら特殊な機雷とかなんだろうか。


「10番船撃沈。レーザーによる集中砲火。

 レーザー方向を変更させて1船に集中、予想外の方向から照射されました。

 防御システムを対応、9番船、中破、離脱針路指示。

 ミサイルとの同時攻撃で対応が限られていました。

 以降は同様の攻撃は防げます。」


推測ではなく被害報告。

10番船撃破時の映像は様々な方向やフリーダム艦の影からレーザーが飛んできていた。

多方向から数え切れないレーザーに一瞬で囲まれて線じゃなくて面とか立体でレーザーが照射された。

特に減衰用粒子の防御幕の薄い方向から来たレーザーが致命的で船を貫通した。

船は漂って離れていく軌道、乗員の無事を気にしたいが戦闘中にそんな暇は無い。

ドッグファイトは接敵から1~2分、宇宙船での戦いでも10分程で勝負が決まることが大半。

こちらの戦力として大型船が2船とも離脱、今後は防御の面で苦しくなる。


予め聞いていた使われそうな兵器にはこんなものは無かった。

情報が少なく判断材料、計算材料が少ない場合や確率として低いものは切り捨てて考えてしまう。

コンピューターであれば特に指定された範囲でしか行動と判断を行わないから明確に弱点になる。

セリナの場合すべての可能性は保留にしておき確率が低くても検討材料としているそうだ。

可能性として高いものからこちらに公開しているからこういう事は当然ある。

すべて話して欲しいとは思うけれどリラ星系の技術レベルに影響しない範囲での提供は今も続いている。

もどかしいが仕方がない。

抜け道としてこちらに教えずセリナ/ツキヨミが独自行動で対応する事が出来る。

即座の対応があったから9番船は助かったはずだ。

対応出来たのだから多分兵器についても知っているという事だろう。


「ターゲット後部より多数のミサイル、大型ミサイルも確認。

 先程のレーザー反射システムも確認しました。」


さっきと同じパターン。有効な攻撃は繰り返すよな。

飽和攻撃、迎撃出来ない物量による攻撃でこちらに被害を与えるつもりだ。

迎撃の為に船同士の距離が近くなっているしさらなる迎撃の為に軌道などが限定される。

当然今もレーザーに対応しているが軌道が限られると狙われやすくなる。

だからといってそれぞればらばらに逃げるとミサイルの餌食。


「遅発ミサイルは使えるか?」


「有効な物を起動、迎撃に使用します。

 他にも各船のレールガンを直接操作で迎撃に使用。」


攻撃予測が表示されたがさきほどより着弾予定の赤が多い。

回避指示で着弾地点を調節する事で船の被害は抑えられる。


「ターゲット後部、質量兵器確認、各面6門。計24。」


ここでか。

3秒程どの船も大きく動けない。

いまの攻撃に対応中だからだ。フリーダムの狙いはこれだったか。

同じパターンでの攻撃は有効で繰り返す場合と突然他の攻撃に変化させる事で奇襲する場合がある。

戦術教本で詠んだぞ。


「セリナ、迎撃出来るか?アーコロジーに攻撃されるか?」


「下面から発射されるものはアーコロジーへの攻撃軌道で射出可能。

 各船に指示。大型レールガンも使用します。」


下側から上に上がる軌道の船が多く下面への攻撃が薄い。

ミサイル系劇が完了と同時にガーランドを強引に下に向かわせた。


「他2船は予定軌道で攻撃。後で合流する。」


指示もなく急な針路変更だから当然着いて来れない。


「C2、D3を破壊。」


ABCDと各面には割り振ってある。

Cはガーランドが向かっているからすでに攻撃が始まっている。

残っている4つは破壊出来た。

この辺りはさすがにセリナだと関心する。


「質量兵器射出。A3、B3、D2。ABはステーション破片を攻撃。

 D2はアーコロジーへの攻撃、軌道干渉に成功、リラ6に着弾。」


表示された結果予測ではリラ6、アーコロジーからかなり離れた所に落ちる。

軌道干渉は前に聞いていた。

発射された質量兵器にレールガンの攻撃による衝撃やミサイルの爆発で軌道を変えようというものだ。

速度が速く実際に行うのはほとんど無理だそうだがセリナは出来るそうだ。

それなら質量兵器を壊せば良いと思って聞いたが質量兵器の弾丸は硬いそうだ。

セリナの用意したマスドライバーと同じで硬い材質の弾丸を超高速で惑星上に落とす事で破壊力を出す。

隕石を落とすようなものだ。

撃破が不確実なので早い段階で少しでも軌道を変えるのが対応策のひとつ。


「アーコロジーへの直接攻撃軌道ではありませんでした。

 予定軌道で着弾した場合その衝撃波はアーコロジーに被害を与えた為対応。

 ステーション破片は破壊されました。

 ステーション破片による質量攻撃がリラ6の最大攻撃、最大脅威と判定されたと推測します。

 一連の攻撃が終了した現在、次に行なわれるのはこちらの殲滅です。」


後日の戦闘分析で教えて貰ったがフリーダム側のこの作戦は成功だった。

こちらが質量兵器の使用を止めるのを最重要と捕らえていたこと。

戦闘開始と同時に判明している質量兵器発射口を撃破した事で分析されたのだろう。

その為全面で質量兵器を使用した場合下側に戦力は集中し上側は発射出来る。

見事にそれを成功させこちらの最大破壊力であるステーション破片を撃破した訳だ。

元々使う予定でもなくただの盾代わりの破片だったけどな。

それっぽい動きで調整し実際に激突軌道には乗せていた。


戦闘開始から7:21。

こちらの船は3船が戦闘不能。各船の防御システムも残量が3割を切っている。

後4分はちょっと難しい。


「マスドライバーの加速をしても大丈夫か?」


「10:00に着弾まで加速可能、その場合でも軌道修正により確実に着弾させます。」

 

「頼む。ここから各船で接近戦を行なって時間を稼ぐぞ。」


こちらの用意した最終作戦は接近戦。

フリーダム艦に密着するほどの距離で飛び攻撃する。

当然危険度はそうとうに跳ね上がるしレーザーによる攻撃も致命的になる。

これを見越してひたすらレーザー砲台を壊していた訳だ。

レーザー砲台による迎撃能力を失わせ、マスドライバーで射出してある弾丸を着弾させる為でもある。


「着弾時間修正。各船針路修正。」


『各船、接近戦に移れ。10:00まで粘って欲しい。後少し頑張ってください。』


これまでの戦闘分析からマスドライバーによる攻撃は有効。

フリーダム艦に致命的な被害を与えられるとセリナが分析を出した。

接近中の弾丸を迎撃されずに着弾出来れば良い。


今回は残っている各船から了解のメッセージだけでなく気合の入った言葉も多かった。

戦闘としてはなんとか上手く進めている。

ただ残存戦力で2:30はかなり厳しい。

ここからは出来ればそれぞれの船が生き延びるように戦う必要がある。

ただもう以上、何か策がある訳ではない。

フリーダム艦側の攻撃もこれ以上何も無ければなんとかはなるだろう。



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