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竪琴宇宙のサクシード  作者: MAD-WMR
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3-15 リラ軌道戦:2 フリーダム艦-交戦開始

フリーダム船が爆発するのをモニターで見たのは操船をしながらだった。

船の軌道が変わればレーザー防御用粒子が無い場所に行く。

最初の予定針路ならすでに散布、以降も準備していたが急な変更で全部キャンセル、再指示だ。

1日10時間くらい練習した事もあるからスムーズにやれるようになっている。

ターゲットの爆発を見て散布指示の実行は保留。

さらに船の針路を変更しもう一隻のフリーダム船に向ける。

ターゲットAに真っ直ぐ進んでいたがそのターゲットはもう無い。

このまま上昇しながら旋回、リラ6の上を抜けて最短距離でターゲットBに向かう。


「イスト、爆発による残骸などは影響ありません。

 ターゲットBが行動を開始するまでに接近し先制攻撃が理想です。」


「A攻撃部隊の進路変更指示を頼む。作戦予定に変更は必要か?」


色々聞きたい事はあるが戦闘が優先。

戦闘で行動が1秒遅れたらそれだけで船が破壊される。

躊躇したり迷って壊されたなんて何度もあった。

フリーダム船は爆発した。周辺にリラの船が居た。リラの船が接近中。

これだけの情報があればもう一隻は確実に行動するだろう。

今は次の戦闘に向かうのが先決。


「A攻撃隊はターゲットの側面から、B攻撃隊は後方からの接近に変更しましょう。

 B攻撃隊のC小隊船に指示すれば編成予定の小型船2隻と合流出来ます。」


「指示を連絡。」


「ステーション残骸を分離、軌道変更し先行させます。」


表示を見て確認すればそれぞれの船に針路変更と予定をセリナが送る。

今回の戦闘、セリナはサポートはするがすべての指示、決断は俺に任されている。

何かあってもセリナは提案するだけ、判断は自分。

元々それを言われていたからシュミュレーション中から出来るように訓練しているつもりだ。

その判断が正しいか間違っているかはその時々、完全に正しい判断が出来ている訳でもない。


それぞれの船に指示を送り、状況を確認しガーランドの操船も落ち着いた。

可変推進器がこういう時には便利で船を左右に傾けるのも加えれば進路変更が容易い。

余裕があるなら船の方向をさっさと変えて後部推進器で加速する方が楽だけどな。


「結局どうなったんだ?」


「最初の光子魚雷は制御に失敗し光速0.89%に留まりました。

 機雷爆散直後に破砕片がレーザーにより42%を消失。

 機雷は不完全な状態で予想した破壊力ではありませんでした。

 敵船の攻撃システム、防御システムに打撃を与えていましたので追加攻撃を申請。

 A攻撃隊の各船の攻撃、防御システムで光子魚雷の針路を確保、防御し追加攻撃。

 これが成功しターゲットAに対して大きな被害となり撃沈しました。

 光子魚雷については星系内での使用は禁止した方が良いでしょう。

 光速34%に加速、散布された破砕片の一部はターゲットに当たっていません。

 飛行軌道を確認していますがリラの惑星や衛星への被害はありません。」


「詳しくは後で聞く。

 光子魚雷を温存する予定だったが代案は?」


「ありません。

 マスドライバーによる追加攻撃をすでに行いました。

 最終プランとしてはマスドライバーの最大出力による攻撃を提案しておきます。

 1度のみですが到達時間は早く効果的な攻撃となります。

 ただし使用した場合破棄ステーションの動力などが失われ各部が崩壊します。」


破棄ステーションは残して置きたいから本当に最終プランだな。

ここで勝てなければ残す意味が無いから使う判断も必要だろうけどな。

ターゲットBに対しての切り札として光子魚雷を温存するはずだったがもう無い。

今ある物だけで戦うしかないけどそれが最初の予定だ。

1隻に対してすべての船で挑めるなら勝算がある。

シュミュレーターの結果は勝率は64%、こちらの損耗率は50%を超える。

半数の船が犠牲になるという事だ。

ただもう迷う暇は無い。フリーダム船までの距離は無い。

各船で部隊が組めたのを確認し加速開始、針路変更で落とした速度を予定速度まで上昇させる。


「ターゲットBが動きました。」


『ターゲットB針路変更、旋回開始。』


セリナの報告を聞いたら他の船からのメッセージが表示された。

攻撃部隊Bの船からで観測要員からだ。

情報は音声入力で文章化、すべての船に送信する所まで自動化してある。

フリーダム船が加速を続け速度を得て戦闘されるとリラの船では勝ち目が無い。

色々と難しいらしいが最適な対応策らしい。

絶対追いつけない速度で移動しながらこちらの射程外から一方的に攻撃するのだ。

もし今から加速されたとしてもしばらくは離されない。


「セリナ、レールガンの有効射程はどうなった?」


「まだ不明です。先程はレールガンは使用出来ませんでした。

 ステーション残骸よリミサイル、機雷射出しました。無線使用を解放。」


『各船突入、周回攻撃開始。』


各船から了解の確認があるのを待たずにガーランドも加速させる。

無線は基本的にこちらから音声を送るだけ、返答はメッセージで送られてくる。

フリーダム船は旋回中で側面から噴射炎が見えている。

船体が大きい分大きな加速力が必要になる訳だ。

残骸と攻撃船に対して側面を向けて来るということは攻撃面積が増えるという事。


「敵船がミサイルを迎撃、すべて消失。レーザーが残骸に集中しています。」


目標とされたレーザー砲台に向けてにレールガンを発射。

フリーダム船の上を通って反対側から下に回りこむ軌道。

速度は落とせないからガーランドは船首をフリーダム船の上ですでに下に向けている。

そのままメインの推進器で下へと加速、進行方向を無理やり変える。

真上を通過したあたりで元の進行方向からしたら反転した状態になって加速。

かなりアクロバティックな普通じゃやらない操船だ。

1秒程の事で操船コンピューターが無ければ当然出来ない。

他の船も似たような軌道で続きそれぞれがぶつからないように少しずつ軌道がずれていく。

飛行軌道は真っ直ぐではなくすでに左右の推進器で適度に蛇行して回避運動に入っている。

針路についてはあくまでも通過して欲しいポイント、他の船と激突しないラインの指示。

常に数秒後の軌道に向けて船の方向、推進方向を変え続ける事になる。

最接近では3000mを切る距離感は宇宙船の速度では一瞬で激突するような距離だ。

そこまで接近する事は稀だが速度を維持して近い距離を飛ぶのは少しでもレーザーを避ける為。

これだけの速度があっても一瞬で飛来するレーザーは当たる。

当たっても照射され続けない為の速度。

速度を維持すればフリーダム船そのものを遮蔽物、障害物、盾として使う事が出来る。

他のブロック船の軌道に注意する事も重要だ。

時にぎりぎりまで接近したり交差する軌道を取って狙われにくくする。

安全な距離を開けての飛行だとそれが判明した時に軌道が読まれ易く命中率が上がる。


攻撃についてはすでにセンサーで情報を得ているセリナが各船に指示している。

目標が重ならないようにもしくは確実に破壊するために複数の船に指示。

同時に各船に対して防御の指示もあり予定針路に対レーザー防御の散布を行なう。

これは部隊の船だけでなく他の部隊の針路への指示も出している。

指示するだけでなく直接操作もするらしく無線を搭載したのはそれが狙いだ。

搭載した防御システムが自動で各兵器を使用する事もあると説明しているし実際にそうなっている。

他の船からすれば自動的な反応かセリナの操作かは判らない。

レーザーを撹乱する為の粒子は一定の密度を維持できるように散布される。

投射して爆発拡散するもの、一定時間後に散布するものなど様々だ。

モニターに表示されているその密度ま濃い部分を遮蔽物として使いながら攻撃する。

シュミュレーションで散々試して練習している戦い方。

レールガンでの攻撃指示は密度が濃い部分を通らないようにされていた。

そういうセリナのAIを生かしたサポートは訓練では無かった事。

ちょっとくらいは有利になっているはずだ。


フリーダム船の下に回った段階ですでに3度レーザーに当たった。

攻撃開始時が一番被弾率が高いから当たるのは構わない。

まだ船は壊れていない。

ただ当たる度に操縦席は警告の赤ランプで満たされて危機感は増す。

セリナのアドバイスに従って宇宙船の外の様子、光景は表示していない。

無数に飛んでいるレーザーも間近に迫るフリーダム船の黒い外壁も見てない。

だからかそれほど戦闘の恐怖は無い。

シュミュレーターで戦闘をするのに近い感覚ではある。

必死になってフリーダム船を倒そうと集中しているときの感覚。


「対レーザー防御は予想範囲で機能しています。

 被弾面はターゲットに向けないでください。」


散布した粒子と近距離用の粒子、種類違い2種類が一定密度であれば3秒の照射に耐えられる。

セリナの予測だがそれは間違い無いようだ。

フリーダムのレーザーはその熱量によって被害を与える。

当然一度照射された部分はかなりの高温となり次に当たったら3秒は持たない。

同じ部分に出来るだけ攻撃されないように宇宙船の向きを変えて対応するのだ。

まずこの初期段階を切り抜けなければならない。


フリーダムの船は四角推、砲台も各面に設置されている。

各面の砲が攻撃出来る範囲は一定、別の面に逃げれば避けられる。

面が繋がっている付近の砲台からは攻撃されるけどな。

こちらの作戦は各部隊でフリーダム船を周回。

レーザー砲台を出来るだけ効率よく破壊し面から面に逃げ込む。

砲台を破壊することで攻撃範囲に死角を生み出しその死角を利用してさらに攻撃を続ける。


最初の周回は最優先の攻撃、判明している質量兵器の発射口を破壊。

各船の攻撃もあってこれは上手く行った。

そこからガーランドは4つのレーザー砲台を破壊、部隊の船も同じくらいは壊している。

表示してあるタイマーカウントを見れば戦闘開始から1:22。

ガーランドは被弾12発でかなり厳しい。

他の船は7番船が離脱しているがまだ破壊はされていない。

7番船は破壊された訳ではなく一部が破壊され撤退、ステーション残骸の裏に逃げ込んだ。

こちらの船は最初は2つの集団だったが今は4つの部隊となって攻撃している。

モニターで確認すればわずかだがレーザーの来ない場所を作れている。

戦力は1船失ったでけでそれも撃墜では無い。

ここまでは良い結果だが各船の状態をみれば被害は大きい。

どの船も被弾は多くこれから先それほど多くのレーザーには耐えられないだろう。


「イスト、敵船の攻撃にパターンを確認。

 人間の指示ではなく戦術コンピューターによる攻撃と判断しました。

 各部隊指定船が攻撃を担当、同じ部隊の他船はそれを狙う砲台を攻撃してください。

 防御中心の船は攻撃をせず各船に対しての防御を優先してください。」


そんなにパターンがあるとは感じられないけどな。


『各部隊、指定した船が最初に攻撃。

 他の船はその船を攻撃するレーザー砲台を狙って攻撃。

 各部隊1船は防御担当、攻撃せずに他船の防御優先。

 被弾の多い船は優先的に防御に回れ。』


部隊の中ではガーランドは被弾が多いから先頭を他の船に変わる。

ガーランドは防御システムの数が少なくて防御担当にはなれない。

それを説明し別の1隻が防御担当に回る。

最初の攻撃で有効なのは判明した。

攻撃する船、攻撃した船を優先的にレーザーが狙っていた。

セリナの提案を実行した2度目はガーランドは攻撃後に回避を多く入れた。

3度目には防御担当船も防御だけでなくガーランドを狙う砲台を攻撃出来た。

フリーダム船の四角推他の面に移動した場合はこのパターンが少しずれる。

その時は全ての船が回避、防御を優先してなんとかやり過ごす。

他の部隊も成果を上げておりどの船も残り少なくなっていた被弾面で絶える事が出来ていた。

2分の間で46%のレーザー砲台を撃破。

フリーダム船の各面で空白地帯を作り出せていた。

その代償は4番船の撃沈。

セリナから報告されたがそれに衝撃を受けていたりする時間も無い。

冷静にいつものように戦闘を続けられている。

船の動きを止めたりする訳には行かないし攻撃をしないといけなかった。

ガーランドの攻撃が遅れれば先頭の2番船が攻撃される。

破壊される船が増えるかもしれないという事だ。


「イスト、注意を、警戒を高くしてください。

 ターゲットの熱量上昇中、恐らく動力出力を上昇させています。

 乗員も緊急事態で配置に着ける時間帯ですから何か対応もあると予測出来ます。」


『各船、警戒強化。

 監視は砲台の無い場所を注意、何にかあるかもしれない。

 ターゲットが本格的な戦闘を始めた可能性が高い。

 突然の状況にも慌てず対処して欲しい。」


3:52、戦闘開始からやっと4分。

マスドライバーの着弾まであと8分、ここまでの2倍は果てしなく長く思えた。


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