3-13 戦闘用ガーランド/新兵器:光子魚雷
戦闘用、新型ガーランド。
別に新しくするつもりはなくて普通にブロックを組み替えるつもりだった。
連絡されたのは組んだ方が早いから用意するという連絡。
操縦ブロックと推進ブロックしか元のパーツは使っていないからそれも判る。
結局操縦ブロックも新しくするからとなり推進ブロックだけ付け替えた。
専用に作られているせいか動力関係が特殊らしい。
その動力を含む推進ブロックが最後部。
小型推進器を中型にするかとも考えたが推進器を増加させるので結局変更無し。
船体の構成や大きさに変化は無し、4×4を5列+1個。
推進ブロックの次は上部に可変推進ブロックが2つ。
下はレールガンと防御システム。
レールガンは外部式、狙いやすさ、攻撃のしやすさを優先。
内部式の方が壊されにくいがどうせ当たったら壊れると思っている。
防御システムは迎撃用の機銃や散弾、対レーザーシステムを組み合わせたもの。
船体の各所に配置して対応できるようにしておく。
可変式推進器はセリナが使った推進方向を変えられる推力偏向を簡単にしたもの。
単純に推進器の方向を変えられるようにしたものだ。
ひとまず提案を出してみたら回りまわってギルドが完成させてた。
110度程推進器の方向を変えられる推進器。
真上と側面に向けられるので移動の自由度が広がる。
そんなに早く方向を変えられる訳でもないしメンテナンス性と耐久度は最悪。
今回は戦闘に使うだけでそのくらいならなんとかなるからと作られた。
セリナに言わせれば戦闘用の機械はそういうもの。
最高峰の技術を投入し高価で維持は大変。でも実際に使用するのは極短時間。
戦闘時間の予想は20分から30分と言われているから間違いない。
その次は船体中央、ここに操縦ブロック。
4ブロック分を1つのブロックにしたパーツ。
中央に操縦席などのある部屋、周辺は対レーザー防御システム。
冷却、耐熱ゲルとか噴霧器などの組み合わせ。
ただこの防御システムは最後、他の防御システムが空になってから使う。
それまでに操縦ブロックに攻撃が当た場合、周辺の防御システムで緩和するのが狙い。
生存率が上昇しているはずということだ。
この操縦ブロックについては採用できるほかの船でも使われた。
その前にはレールガンと防御システム、可変推進器2つ。
ここは後部とは構成が逆で下に推進器、左右逆にレールガンと防御システム。
その前4ブロックは防御システム2つと通信システム、センサーシステム。
通信については無線通信が出来るようにセリナが強く押した。
リラは無線通信があまりに貧弱らしい。
アーコロジー内は優先通信があるからそこから手持ち端末に情報は送られる。
他にアーコロジーがあった時もそれぞれのアーコロジーは優先で繋がっていた。
軌道エレベーターも同じで有線で繋がっているからそこの中継器で各宇宙船に通信出来る。
生産ステーションは大型の中継器が設置されているから宇宙船は基本そっちに送る。
リラ8くらいの距離ならほとんど時差は影響しないしリラ10くらいでも時差はあっても連絡できる。
通信系を限定して小型化することでブロック船に積んだリラだからこそこうなっていると分析していた。
リラ10より外とかの場合そっちのベースとかを中継して行なわれる。
採掘屋はちゃんと無線を積んでいるが今は船としては10隻あるかないか。
移民船が使っていた中継器が宇宙にはあるがほとんど使われない。
使われていないのに維持はしているからそれの使用料は高い。
ちなみにそのメンテナンスはガーランドにとって定期的な仕事でありがたい。
地上にさえ無線受信システムがないのはセリナは驚いていた。
通信のいう点ではリラは隔離された環境、ほとんど電波を出さない星だそうだ。
今回は各船に小型無線機を積んでこちらからの指示が届くようにした。
ステーションからの中継は妨害されるかもしれないからという事だ。
センサーシステムはかなり色々詰め込んでいるし要求したのはかなり高いものばかり。
それでも作られたのは物資の消費に制限がなくなったからだ。
広範囲かつ各種センサーで詳細な情報が得られる。
他にも2隻の船に積んであり各船に情報は共有される。
データリンク、情報共有は重要でそういう点でも無線が使われているそうだ。
実際その辺りはもっと細かい説明もされているし勉強中だ。
船としてはあと先端、操縦ブロックが元々あった位置に改良型のレールガンがある。
銃身が2本あり連射力、火力が上がっているものでギルドが作っていくつかの船に搭載された。
改良といえすぐに対応したのをセリナが驚いていた。
ギルドの人と話をして納得したらしいけどな。
現役より上のサトウのじいちゃんまでの世代は知識、技術がすさまじい。
ギルド関係者も引退はするけれど仕事を続ける人が多くて師匠と呼ばれる凄い人が多い。
そういう人達は技術を鍛える為と作業などは下の世代に譲る。
そうなると暇だから知識を伸ばす人としたの世代を育てる人に判れる事が多い。
結果として暇で時間のある技術屋となって変なものばかり研究開発するそうだ。
今回のもそういう人達が関係したんだろう。
船体としては武装を出さなければ普通のブロック船。
こういう民間船を偽装した船を仮装船とか言っていたらしい。
まあ今のガーランドは戦闘用のブロックしかないんだけどな。
可変推進器のテスト、実際に動かして感覚を掴む、情報を蓄積するなどをしつつ目的地に飛行。
途中で最大加速も試してみたが134%くらいまでは安全に出せる。
推進部もギルドが大急ぎでメンテナンスしてくれた。
行政府は出来る事は全部やって計画をバックアップして成功率をちょっとでも上げてくれる。
後で知ったけれどサトウのじいちゃんだけでなく行政府からも指示はあった。
その時に押し付けた俺の役職が良いように使われたそうだ。
押し付ける前から使われていたみたいだから任命はすでに確定事項だった。
そのあたりは年寄りは上手くやるから見習いたい。
ずらっと並んだコンテナ、ブロック船に格納出来るサイズの物。
その左右には加速に使ったのかロケットが着いていた。
宇宙に漂うにしては巨大。5×5が10列。
移動用に推進器があっても確かに可笑しくはない。
コンテナの塊と速度を合わせて接近。
さすがだと思うのはコンテナはこうやって運ぶ事もあるからブロック船に連結出来る機器がある。
ちゃんとそれを再現されているから船とちゃんとドッキングさせて輸送する。
問題は数が多いという事でふたりしかいないから外で船外作業。
そういえば今回セリナは宇宙服を着ている。
セリナが宇宙服で宇宙に居るというが違和感だがその違和感こそがおかしい。
他の人に見られても困るから正しいんだがな。
「イスト、先程話をしていた兵器ですがこの推進用ロケットが使えるかもしれません。
色々と問題はありますが実験可能な兵器を提案出来ます。」
船とコンテナを繋ぐ作業をしながらセリナの提案。
こういう時はこんな物はどうですかと言って来たはずだが提案は始めてか?
まあこれまでも提案されたものは多いがレールガンとかマスドライバーとか具体的なものだった。
「その実験可能な兵器というのはどういうことなんだ?」
セリナに対しては気になる事は先に聞いておくに限る。
「所有している知識、技術とリラの技術、正確にはガーランドの技術を組み合わせたものです。
周囲に何か疑問を思われてもガーランドの技術と誤魔化せます。
使い捨てるもので解析などもされませんから未知の技術を投入しても問題ありません。」
「セリナとしても問題無い訳か。どんなものなんだ?」
「光子魚雷です。正確には魚雷ではなく機雷です。
機雷についての解説は覚えておられますか?」
「今回作った機雷は宇宙船の近くで爆発することでその衝撃力、普通に爆発で破壊するものだ。
他には船の速度を利用した破砕式の機雷があるだったか。」
「そうです。破砕式の機雷が有効なのは船がある程度の速度で移動している場合です。
相対速度を利用して高い破壊力を発揮出来ます。
フリーダム船はリラ6を周回していますが速度は宇宙船としては止まっているのと変わりません。
その為に破砕機雷は有効な兵器ではないのです。
今回提案するのはその機雷をかなりの速度に加速するというものです。
一定の速度があれば破砕機雷は十分な効果が得られます。」
「一定の速度というが宇宙船くらい速度には加速する必要があるよな。
それも惑星間飛行とかじゃなくてもっと深宇宙に向かうようなかなりの速度だろ。
そんな事が可能か?」
「光子の研究過程で兵器への可能性も研究されていました。
その時に案だけですが機雷を加速させるというものがありました。
まったく研究などはされていませんが単純に光子の研究初期で色々と難しかった為です。
ガーランド23の光子推進と動力があります。
正直光子運用としてはかなり優れた技術です。
光子推進を使って機雷を加速すればガーランドを加速させるより容易です。
問題点は推進器や動力を使い捨てるという大きなロスでしょうか。
物質生成機で作るのは可能です。」
急激な加速は人間が乗っていないからどこまででも構わない。
宇宙船よりも小さなものを加速させるならかなりの速度に短時間で加速出来る。
原理というか言っている事は問題ない。
「光子推進の開発で作られておりガーランド23に封印されていた。
船長だけがその存在を知っていたとすれば使用しても疑問はありません。
ただこの兵器については実験も実証も出来ていません。
光子の増幅など行ないますので運用時にはかなり細かな制御が必要です。
当AIの処理能力でも92.34%を使用します。
物体の加速の為に光子の集約、その制御、加速後の機雷破砕タイミングなどです。
最も大きな処理は初期の3秒から5秒ですがその間当個体はすべての行動が行えません。
本格的に戦闘が始まっている場合に使用するのは避けた方が良いので提案しませんでした。 」
セリナだな。
長い説明を聞いてそう思う。
いくつか質問すれば光速の50%近くまで加速可能かもしれないとされた。
軌道を選ぶことでリラ6に破片は落ちないし有効そうではある。
最大の問題は性能などすべてが未知、不明ということだ。
推測、シュミュレーションの結果でしかなく失敗もありえる。
行きの船内で話したのは今回の作戦について。
ステーションの一部という質量を盾にしてフリーダム船に接近出来る。
かなり大型の質量物の為、フリーダムのレーザーにも少しは耐えられる。
計画としてはかなり楽になったのだがもう一押し欲しい。
今までの訓練結果からフリーダム船1隻ならなんとかなる。
2隻になると当然割り当てる船の数が少なくなり成功率は下がり危険度が上がる。
初期の混乱時に1隻でも破壊、無力化出来ないか、それに使える兵器は無いか。
計画の修正と共に相談していた。
破棄ステーションからのマスドライバーによる攻撃は発見されれば迎撃される可能性が高い。
元々、迎撃用の兵器を出来るだけ破壊しておきそこに着弾させる予定だ。
ステーションの残骸を爆発させ加速、各船の攻撃とマスドライバー。
危険かもしれないけれど軌道エレベーターに設置した兵器での攻撃。
すべて集中させれば無力化出来るのは42%から72%。
フリーダム船の性能が判明していないから明確にはならない。
「この光子魚雷と共にギルドが製作している大型レールガンを使用しましょう。
レールガンをフリーダム船後方に配置し無線による遠隔射撃を行ないます。
弾薬の提供を要求されていましたが今なら物質生成機で用意出来ます。
同時に作戦参加船からの攻撃も行なえばさらに可能性は増えるでしょう。」
ここからリラに戻れば作戦会議などで時間は取れない。
この時点が物質生成機を使うなら最後の機会。
「判った。必要そうなものは出来るだけ生成して欲しい。
資源を補填しろというならなんとかかき集める。」
セリナは自身の出来る範囲、もしくはそれを超えて協力してくれている気がする。
自身の維持の為とか緊急時の対応など屁理屈やら抜け道やらで。
資源提供は後になるだろうけれどせめて帰りは拉致された時の心情とか話すとしよう。
捕まっていた時にセリナに話す為に思考で纏めていた事のひとつだしな。
すぐに提供出来る報酬だ。
光子による加速については曖昧適当です。
光子によって推進力は得られるのは確かです。
ただ瞬間的にどれ程の推進力、加速が得られるかなどは調査不足、不明です。