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竪琴宇宙のサクシード  作者: MAD-WMR
37/82

  >戦闘訓練

ほぼ話が進まないので番外にしました。

軌道エレベーターステーションに着いてから向かったのは改修中のエリア。

改修しているのは商業エリアを中心とした箇所で発着場の少し上。

一部改修のはずが結局商業エリア全体を区画整理含めて調整。

最近行われていなかった大掛かりな改修という事になっている。

商業施設が入っている事もあって大きな改修が出来なかったエリア。

ステーションとしては最も古い区画になっている。

今回の計画ではこの区画を切り離してフリーダム船に向けて漂流させるそうだ。

そこまでリラ6のリソースを裂く必要らい、意義があるとされた。

改修現場に用があるのではなくてそこに来ている輸送船に乗り込む為。

普通なら発着場から乗り込むが現場から生産ステーションを往復しているのでここから。

ステーションに用意されている簡易宇宙服を着て合流地点へ向かった。

停泊している大型の輸送船ウチェッロに近付けば走ってくる宇宙服姿。


「イストくん、久しいな。今日はよろしく頼む。」


手のひらを合わせてお辞儀をしたのはゼンさん。

親睦会で顔は合わせており僧衣を着ていた人。

目立つ格好だったのと色々あってよく覚えている。


戦闘訓練に来たのだが正直どうすれば良いのかまだ纏まっていない。

言われた当日なんだから準備なんて出来ている訳がないのだ。

ただこういう時はこちらが戸惑っていると判らせない方が良い。


「本日はよろしくお願いします。」


交渉とかでの対応方法のひとつらしい。

訓練と言っているが残念ながら実際に船を動かせる訳ではない。

相変わらずシュミュレーターを使っての事だからやってみてから考えよう。


ウチェッロはガーランド23よりも大型の船だ。

前方に操縦ブロック、後方に推進器、中央が収納ブロックとシンプルな構成。

輸送船と言っているように収納ブロックが多い、輸送能力が高いのが特徴。

推進器は大型2つ、重量が増えても速度を落とさない為。

左右に推進器があるのは水平移動や旋回で素早くステーションに接近出来る仕様。

この左右の推進器は大型推進器に変更したそうで戦闘に向けての改良。

防御兵器との兼ね合いもあるそうで上下にも推進器を積むかもしれない。

他の改造案も参考にしているとそれを聞いてみたら俺が戦闘用として試して結果の良かった組み合わせが何時の間にか紹介されていた。

詳しい説明を聞きながら操縦ブロックまで案内された。

乗員は10名、操船2名、周辺監視、推進調整が操縦席要員、残りは作業要員。

操船2名は船の操縦と副操縦士、周辺監視は通信士を兼ねる。

推進調整は場合によっては副操縦士が兼ねる役割で推進器の細かな調整担当。

ガーランド23では航法コンピューターに任せてある部分。

他の船はそこまで処理出来ず担当要員が必要になる。

船の違いでガーランド23は少人数で動かせるようにしてあるからだ。

乗員はすべての操縦席要員を行えるがある程度担当は決まっていて交代で担当。

作業要員はステーションでの貨物運搬などの要員。

忙しい時は操縦席に2名だけ残り他全員で作業する。

操縦席要員意外は航行中が休憩なのでこういう担当なんだそうだ。

乗員の多い船については話を聞いただけでこうして実際に目にするのは参考になる。


まず聞かれたのは戦闘において乗員の役割が合っているかどうか。

操縦関係は3名で担当していて問題ない。

攻撃要員4名は兵器が4つあるから。あとは2名が周辺監視、1名が防御担当。


兵員配置は少し変更。

監視2名、防御2名、攻撃2名、残り1名は周辺状況を確認してもらう。

攻撃担当は兵器を連動させる事で2名に。

2つの武器で同一地点を狙う事で命中率の上昇を狙う。

防御要員を2名にするのは大型船で他の船の防御も担当する為。

出来るだけそちらに専念してもらい急な変化にも対応して貰う。

残り1名の周辺状況の確認は他の船の状況、移動方向とか位置の把握。

発見したフリーダム船の兵器の位置確認、別方向から攻撃が無いかの監視など。

突然の変化に対応する為には重要な役割。

何か起きた場合には全ての船に対して即座に通信、警告する役割だ。

これは乗員が多く余裕のある船でないと配置出来ない。

この船だけでなく他の船についても戦闘全てで影響するかもしれない役割。


当然もっと丁寧な言葉で説明したのだが乗員全員が集まっており神妙に説明を聞かれた。

船長がまず周辺監視の役割に乗員の1人を指定した。

日頃から注意深く細かな点まで見ていて神経質過ぎるくらい。

どれだけうっとおしく思われようが気になった点は常に報告する生真面目さ。

仕事中は緩む事のない集中力などが選出理由。

残りの要員もこれまでの結果などからスムーズに指定していった。

すでにある程度得意不得意から役割は決まっていたようだ。

この辺りは他の船にも連絡しそれぞれで調整しているそう。

配置については親睦会の時に話を聞いてからこちらでも考えていた事。

セリナの意見も聞いて攻撃要員は減らす方向にした。


単純に監視要員、目は多い方がこの場合良いらしい。

何か変化があった場合それを素早く発見し対応しないと全滅がありえる。


配置が決まれば乗員はそれぞれ担当箇所に移動。

まず輸送船をステーションから発進させて生産ステーションへの移動。

航行予定、航路は調整してもらったので速度を遅くして巡航。

それからシュミュレーターで戦闘訓練。

多人数での操船については詳しくなく一旦それを見ているだけ。

役割を聞いているからそれぞれの役割を練習するつもりだったがまだまだ不足。

計画の予定変更で時間が足りない部分。

人数が多い場合それぞれの担当に集中出来るから対応が素早い。

攻撃にしても操船にして防御にしても。

防御については船の進路、移動速度も影響するからその連携が大事。

それぞれ報告、確認を欠かさない。

自分の船の防御を担当する要員と別の船と連携する要員で分ける。

ただし両方それぞれの動きも見ておく。

周辺監視要員は別方向かせの攻撃などに注意するだけではない。

他の船との連携が崩れている場合はそれを防御要員に指示する。


攻撃については特に問題がない。

質量兵器を優先目標として出来るだけ発見した兵器は壊していく。

船で一つの目標を狙うのか兵器ごとに一つの目標を狙うのかはまだ決めてない。

こちらの攻撃で破壊出来るかどうか、どれくらいの攻撃で破壊出来るかが不明な為だ。

その辺りは説明して当日対応してもらうしこちらから通達を出す。

攻撃についてはセリナとサトウのじいちゃんが作った制御システムがある。

ほとんどコンピューター任せで狙って撃つだけと簡単。

目標の発見と狙いを合わせるまでの速度は必要。

外部設置式だと砲身の旋回時間が必要になる事に注意してもらう。

船の移動、機動を聞いておき出来るだけ攻撃しやすいように砲身方向を変える事。


操船についてはウチェッロの操船はベテランが担当しておりスムーズ。

スムーズに動かせるようになったらしい。

ベテランだけに頑固だったそうだ。

ゼンさんは喧嘩になりつつ実際に動きを見せて納得して貰った。

それから船長にも怒られ新しい機動をかなりの速度で習得したそうだ。

そこはさすがにベテラン。

高出力、高速で船を振り回しても指示通りに今では操船できている。

後でゼンさんから操船要員たちが一時期空き時間はすべて練習していたと聞いた。

船では一番若いゼンさんに負けているのが悔しかったんだろうという事。


どの担当もかなりスムーズな動きで船としての動きが良い。

シュミュレーターのデータは実は連動している。

それぞれの船の動きは記録されていて自動操作の時に反映される。

今も他の船は自動操作で動かしていて親睦会の時よりも動きがいい。

もっとちゃんと戦えている。

それが大きいらしく他の船に負けないように練習が捗っているそうだ。

船長同士で賭けをしたりもしているそうだ。

賭けと言っても食事驕りとかなので乗員は旨い物がタダで食えると奮起している。

ただ結果はよろしくなく1勝3敗。

それで船長が気合を入れているそうだ。


戦闘訓練と言っても見ているだけだと意味は無い。

一度終わった段階でそれぞれの担当に話を聞いていく。

疑問点とか上手く行かない点など。

連携という部分は判らないが他の部分はアドバイス出来る事もあった。

操船、防御、攻撃、自分で全部やっていたから判る部分は多い。

当然自分の船とは違う部分もあるからそれは質問しておく。

お互いに話を聞けばそれが参考になる場合があった。

こちらとしては次の船の為にも色々と積極的に聞いていく。

見得を張って失敗するなんて馬鹿らしいから端末に気になった点、参考点はメモ、記録。


軌道ステーションと生産ステーションの中間辺り。

ここでもうひとつの訓練、実際に高出力、高推進力で船を動かす。

実際に船を動かして戦闘訓練が出来ないのでその代わり。

訓練なんだから何か船関係で理由をつけて出来ないかと考えた事だ。

推進器を交換したのでそれにこじつけた。

緊急時における最大推進テスト。

最大推進力を使うことは全ての船で基本的には無い。

正直30%を超えるのもほとんど無い船があった。

試しておかなければ緊急事態で慌てる事もあるので推進器のテストも兼ねての実行。

行政府側から今後安全項目として追加するかもしれないのでその試験運用として貰う。

正式に理由があれば他の船から疑問には思われにくい。


大型船がどんな感じで機動するのかは判らない。

念の為にいつでも掴まれるようにしておく。

加速で転んだりするのは危険だ。

他の乗員も座っていない人は同じように対応している。


進路を変更してから船長の指示で最大推進テストを開始。

作戦開始時の加速を想定して試してから進路変更。


「加速開始します。」


ベテラン操縦担当者も始めての事で操縦席全体が引き締まった空気。

すでにセリナの生成などで色々味わっているから俺としては少し余裕がある。

加速初期は出力118.8%。

ぐっと船が加速し加速重力が体感される。

安全バーを握ったまま大きな加速Gに驚きつつ倒れないように踏ん張る。

多分この辺りもガーランド23とは違う部分なんだろう。

光子ロケットの使用を前提とされているから加速G緩和なども対策されていたはず。

乗員は戸惑った声を上げている人や興奮している人など様々。

始めて体験する加速度に驚いている人が多い。

この感じだといきなりこれを体験しながら戦闘に入るのは危険そうだ。

他の船でも出来ればこのテストはやってもらおう。

ガーランド23だと推進剤の余裕がある時にリラ外縁部で試せた。

他の船だと普段はこんな機動を行う事は無いからこの試験は必要だろう。


必要速度に到達した報告があり続けて右旋回からの下降が始まる。

左に身体が振られているが浮き上がる事は無い。

宇宙服で船に設置固定されるからだ。

戦闘中は浮いている状態にはしない事を注意点として加えよう。

左方向へと進路を変更しつつ下降から上昇。

この辺りは回避の為の機動。

速度が上がって試験範囲としている空間から出ないように配慮したコース取り。

本番ならもう少し大きく動ける。

船体方向の変更から減速が行われて通常の速度へ戻すのも高出力加速で行われた。


乗員の反応や感想は聞き取り記録。

他の船の乗員に伝えてもらう事もお願いした。

同様の試験を出来るだけ実行して欲しい事も。

体験した乗員の言葉の方がより効果的なはずだ。


この後シュミュレーションでの訓練をもう一回行い生産ステーションに到着。

シュミュレーションの結果は実際に速度を体験しても劇的な変化はなかった。

そんなものだろう。

繰り返し訓練するのは実際の戦いで慌ててもちゃんと操作出来るようにするため。

船の訓練と似たようなものなので結果が変わらなくても訓練は続けて欲しい。


結局戦闘訓練と言っても劇的に効果がある事が出来た訳では無い。

改めて船の乗員に戦闘で注意するべき事や疑問点についての意見交換。

全体的には座学というか意見交換の場となった。

それぞれ乗員としてはベテランの方が多いのもある。

それぞれの専門分野があるのだから任せて置いてよい。


決してマイナスな事は言わないようにと言われている。

戦闘に参加するかどうかは船長とだけ話をしてもう一度確認して貰う。

だからその覚悟を改めて聞く事もしない。

計画に参加してくれる事への感謝を下船前に改めて乗員に伝える。

慣れてはいないがサトウのじいちゃんの態度を思い返しながらできるだけ総司令っぽく。

これについては船に戻ってセリナに相談、資料も出して貰い練習しておきたい。

拙くはあったが士気高揚という点では効果があったようだ。

口々に感謝や作戦を成功させようという言葉が放たれた。

何かあったら出来る人達で問題を解決するはリラのやり方。

一礼して下船したら出来るだけ姿勢良くしたまま通路に向かった。


ウチェッロはこれから荷物を積んで夜には軌道ステーション。

こちらはガーランドに向かってセリナ回収へと出発する。


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