3-2 攻撃兵器と攻撃方法の説明
モニターに必要な情報を表示しつつ説明を始める。
セリナから学んだ宇宙船戦闘の基本。
もちろんこれはセリナの国での事だ。今回これでうまく行くかは判らない。
用意したのがセリナの知っていてリラ6でも作れる物に限定されているから仕方が無い。
対処出来るという前提で話は進める。
攻撃は光線兵器、実弾兵器、爆発兵器、大きく分類してこの3種。
光線は速度が速く当てやすいが威力が低い事が多く防ぐ事も出来る。
最初の時にリラ6の船が簡単に破壊されたのは何の対策もなかったから。
今回戦闘を行う船には防御用の加工を行う。
光線兵器に対して有効な塗料やコーティングだ。
装甲がベストらしいがさすがに数を用意出来ないからそれは限定的。
操縦ブロックや動力系の要所には装甲も取り付ける。
もっと簡単に密度の濃い粒子を散布するだけでも光線兵器の威力は下げられる。
光だから反射して拡散、密度を下げれば良いそうだ。
フリーダムが攻撃している画像から解析して有効そうなものをすでに量産している。
戦闘が始まったらロケット推進を使って対光線兵器用の粒子を撒く。
散布したエリアを壁、障害物として動くのが基本。
さらに船周辺にも粒子を散布する。
2重の防御策として光線兵器の威力を下げ命中時の被害を減らす。
こちらからは光線兵器を使用しないから気にせずに散布して良い。
実弾兵器は大砲系や電磁加速砲、レールガンだ。普通に弾丸を撃つものもある。
威力が大きい事が多いし宇宙船戦闘では相対速度の影響もあり危険な事が多い。
フリーダム側は実弾系の兵器を使用しておらず装備しているのかは不明。
対策としては望遠によるフリーダム船の監視で対応。
砲らしきものがあればその射撃方向を示し命中位置にある船に警告、物理的な回避を行う。
戦闘用の船ではないので装甲は無く避けるしか対処法は無い。
実弾兵器に対する防御は他にも何種類かあるそうだがリラ6の現状では避けるしかないらしい。
作れるものも多いが量が必要で時間が足りない。
爆発兵器はミサイル、機雷など広範囲の爆発によって被害を出すもの。
これもフリーダム側にあるかは不明。
ミサイルについては古典的な方法らしいが物理的に破壊する。
専用の迎撃システムがあるらしくそれぞれの船に設置。
機銃によって高速で弾をばら撒くことで破壊するらしいが弾数に制限はあるから注意。
またもう一つ、広範囲を面攻撃する散弾を用意している。
機銃と散弾の物理的破壊でミサイルには対抗。
実弾兵器との差は直線ではなく曲線的な軌道で攻撃される事。
誘導装置があるかどうか判らないがそれを誤魔化す為の手段を用意してある。
デコイと呼ばれるものでこれを放出すればそっちにミサイルが逸れるかもしれない。
機雷については3種類を用意して低速でフリーダム船に向かわせる。
単純に攻撃用の物は接触感知などで爆発するもの。
低速で接近させるのは感知されたり破壊されるのを避ける為。
光線兵器防御用は粒子を散布し続けるものと任意で爆破し散布するもの。
後はミサイルを破壊するためのもの。
爆発して広範囲に破片や散弾をまき散らすことで周辺を通過するミサイルの破壊を行う。
これも感知して自動的に炸裂するし任意爆破も可能。
この辺りは構造が簡単なのですでに量産されている。
防御用の機雷は数をばらまいて出来るだけ宇宙船の被害を抑えたい。
フリーダム側から使用される事もあるかもしれないが観測出来れば対処は難しくないらしい。
ミサイルについても用意してある。
普通に炸薬によって爆発し外壁や武装、推進機系に被害を与えるのが狙い。
宇宙船から直接発射するのではなく最初は機雷と同じで放出して戦場に散布。
時限式は一定時間経過後にフリーダム船に向けて推進。
無線式は任意指示で同様に推進する。
最初の散布で色々な方向に放つことで多角的な攻撃を行うのが狙い。
こちらの船の居ない場所から攻撃が出来るし不意をつけば対応が遅れ効果が見込める。
船から発射したミサイルに相手の防御を向けさせて別方向から攻撃するのが効果的。
搭載量に余裕のある宇宙船の表面にミサイルはいくつか搭載予定。
誘爆の恐れもあるからそれらは速めに撃つようにする。
当たりやすい光線兵器で牽制と防御。
ミサイル、機雷を組み合わせて大きな被害を狙いつつ実弾兵器による命中を狙っていく。
同時に電子戦が行われるのが基本ということだ。
電子戦というのは無線妨害とかレーダーや誘導関連の妨害。
場合によってはコンピューター関係の破壊、機能停止。
これについては対策できているので今回は説明しない。
リラ6側の宇宙船から攻撃する手段はレールガンのみ。
単発で威力の高い弾と少し拡散する散弾がある。
散弾の方は砲自体が大きくなるので積める船は限られる。
どちらのも見せてもらったが弾丸というよりは槍だった。
直径50mm、長さは525mm、直径5センチ、長さ52.5センチ。
mm表記なのは兵器の伝統らしい。
船やレールガンのサイズからすれば小さいが弾丸の速度を優先してぎりぎりこのサイズ。
船を攻撃するのではなくてフリーダム船の攻撃兵器を狙うのが目的。
リラ6の船の優先目的はフリーダム船からの質量兵器を撃たせない事。
惑星に向けて発射される質量兵器を出来れば発射前に破壊する。
発射されるのが観測されたら発射口を狙って攻撃し射出前に破壊が理想。
無理でも質量兵器に対して攻撃し軌道を逸らせばアーコロジーへの被害を避けられる。
散弾も同様で発射口を狙いつつ質量兵器の弾そのものに当たりやすくするため。
弾速を優先したレールガンで連射力は犠牲にされている。
セリナの分析と推測になるがフリーダム船は光線兵器戦を重視した構造らしい。
兵器各種が船体内部に格納されているのと船の外部に露出した構造物が無い点がその根拠。
光線兵器で破壊されないように分厚い装甲で守られていると予想していた。
それに対して貫通力で装甲を貫くつもりらしい。
用意したのは専用の弾丸。
装甲貫通力の高い徹甲弾とHEATと呼ばれる成形炸薬弾を組み合わせたもの。
レ-ルガンでの使用を前提として新しく開発された弾という事だ。
装甲を貫きつつ爆発による熱と圧力でさらなる破壊を行う。
爆発エネルギーの拡散を抑えることで内部への貫通力、破壊力を増している。
配備されたものの使用例の無い弾丸でセリナの国周辺では通常兵器最大の破壊力と言われていた。
セリナがこれを今回選んだのはその使用例が無いという点が重視されている気もする。
ここまでは使用する武器とかの説明。
ここからは戦い方の説明。
リラ6のブロック船は2隻か3隻一組となって行動する。
船の搭載量が違うのでそれぞれ行動する船で協力してお互いも守るようにして生存率を上げたい。
光線兵器に対する粒子関係が一番大きい。
散布するから一定の場所に効果が見込める。
船単体で撒くよりは2隻で交互に撒くほうが広範囲、長時間散布出来るからだ。
小型の船が多いから全てで固まって一気に破壊されないように位置については注意。
光線兵器でまとめて破壊されないようにするのが大事。
船のグループはフリーダム船の四角推の一面から離れないようにして攻撃を制限。
相手の兵器を破壊することでさらに生存率を上げるのが作戦。
下部から攻撃することで惑星に対しての質量兵器を防ぐ。
もっと多くの船が投入出来ればもうちょっと違った作戦も考えられた。
無いのは仕方なくて出来るだけ粘る守備的な戦い。
組んでいる船に被害が出た場合は即離脱。
無理をして船が壊されないようにするのが重要。
ある程度はなれていても攻撃は有効な事があるし残っていれば別の船を援護出来る。
無理をしないのは徹底する。強く指示しておく。
最初にフリーダム船に接近する為の方法の公開は俺に任されている。
これについては口止めして置きつつ説明してしまおう。
この場に居るのはじいちゃんに世話になった事のある船関係者が多い。
きっとサトウのじいちゃんも人選というか船選びに関係している。
それなら信頼して大丈夫という事だろう。
フリーダム船に攻撃する時はまず漂流船が登場する。
事故でフリーダム船に向かってしまう大型の輸送船。
フリーダム船から一定距離に接近した船は破壊される。
それを防ぐために輸送船を回収に向かう船が戦闘を行う船だ。
フリーダム船の接近禁止距離近くで輸送船は爆発。
同時にミサイル、機雷などを散布して戦闘開始。
輸送船の光線防御用ミサイルを最初に使うことで攻撃する船の装備を節約。
一気にフリーダム船の下に潜り込むのが最初の難関。
60秒、1分以内に接近出来るのが理想だ。
固まっての移動は攻撃が集中するから2箇所、もしくは3箇所から接近。
フリーダム船に接近する軌道だと警戒度が増す。
こちらのレールガンが届く範囲でフリーダム船に密着しないような距離が大事。
距離が近すぎると光線兵器を無力化出来ないという理由もある。
一瞬しか撃たない光線兵器はその一瞬しか破壊力が無い。
継続して放射し続ける光線兵器はずっと破壊力を持つ。
フリーダム船に接近しすぎればこの継続放射が予想されていた。
戦闘中でもそれが観測された場合は全力で回避、防御、
かつ他の船はその攻撃を行っている兵器を全力で攻撃、阻止。
説明の練習は散々したけどうまく行っただろうか。
「大雑把で急いでの説明ですが一旦ここまでです。
なにか質問はありますか。疑問点や理解出来なかった部分は聞いてください。
出来るだけ全員が理解した状態にしておきたいのです。」
質問についてはセリナからの作戦だ。
こうやって促しても出ないようなら戦力としてはあまり期待するなと言われている。
こういう時のそれぞれの態度なども良く観察しておくと良いい言われたが無理そう。
質問する二人の言葉が重なり他に二人が手を上げていた。
その4人にどんな事が疑問かを聞いて質問は3つに絞られた。
それぞれの説明をしているとその途中で他の人からも質問があった。
説明と質問を繰り返し、宇宙船乗りたちそれぞれの話でもう少し疑問が出てまた聞かれた。
1時間程で説明が終わるかと思っていたがもっと必要だった。
「守りながら戦うのは判った。
船は壊されたくないし死にたくも無い。
だがこんな戦い方で勝てるのか?」
ある程度理解が進み落ち着いた時間、説明は終わりかなとなった時に来た言葉。
「勝てるのか?」は想定されていた質問。
モニターの前、中央に戻り全員の顔を見ていく。こういう演出は大事らしい。
「各船の攻撃ではフリーダム船を破壊するのは難しいでしょう。
皆さんにお願いしたいのはリラ6への攻撃防ぐ事です。
実際に使われた質量兵器、好きに使わせてアーコロジーを破壊される訳には行きません。
フリーダムの船を破壊出来なくても無力化は出来ます。
攻撃する為の兵器を破壊し、推進器を破壊して航行能力を奪い船を無力化するのです。
アーコロジーを守りフリーダム船を無力化するのが勝利です。」
何かそれっぽいポーズをしろと言われたのを忘れた。
「アーコロジーを守るのと船の無力化か。
それで勝てるならやる価値はある。」
右手をまっすぐに上げて注目させて続きそうな言葉を遮る。
説明は終わったが今回はこれで終わりじゃない。
「実際の戦いをこれから皆さんに体験してもらいます。
端末を用意して下さい。」
自分の端末に触れて準備してあったものを起動させた。
正面のモニターに表示されたのはいつものシュミュレーターの画面。
なんだと盛り上がる状態でサトウのじいちゃんが作ったものと説明。
それぞれの設定とか操作の説明をしつつ一旦休憩時間にした。
休憩中にお互いに説明し合うから手間が減る。
すでにこれから行う事を説明したから期待感からあまりだれない。
正直、最初は絶望しかなくてどん底に落ちるだろうけどな。
俺が最初にやった時から状況は違っているからそうでも無いのかな。
セリナとしては絶望を味わって楽観しないようにして欲しいそうだ。
実際の戦いで油断しないように。
準備が出来て全員が着席した。どうなるか始めてみよう。
「それではシュミュレーターを始めます。」