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竪琴宇宙のサクシード  作者: MAD-WMR
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2-12 リラ6の計画 [後編]

なんぞ盛り上がっておるがわしはわしで必要な事をやっていかなきゃならん。

ステーションの改築が実行されるとなれば建築系業者もずいぶん上に上がれるじゃろう。

資材輸送についても必要じゃが生産プラントについてが問題じゃな。

今の生産量ではかなり厳しいのは判っておる。


「カタオカ、イイダ、宇宙での生産プラントはなんとか増やせんか?」


「現状では増やすのは難しいでしょうね。

 生産力としてもかなりぎりぎりなの。

 無理をすれば調整出来るけれど生活物資にまで影響が出るわね。

 正直な所今の調整で限界なのよ。」


「そんなに厳しくなっておるのか。

 計画自体、全体的な修正が必要か?」


「単純に人手不足。宇宙での働き手が少ないのよ。

 地上は建設でどうしても人材が必要なの。」


地下避難所に人を回すとそうなるの。

わしの所からもかなり人を回しておるからな。


「単純な労働力であれば研修名目で少しは調達出来ます。

 輸送車両の調達が遅れていますからその間であればなんとか。

 生産プラントについても少しアイデアがあります。

 ステーションの増設は出来ませんが政府が確保しているブロック船を利用してはどうでしょう。

 内部に生産プラントを作れば対応がしやすいでしょう。

 現在ステーションに係留している船が多くあります。

 破棄作業とすればあまり怪しまれませんしブロックを直接改造する事も出来ます。

 この宇宙船用の兵器はブロック船での使用が前提のようです。

 慣性したブロックを出荷することでブロック船への組み込みも行えます。」


「ブロツク船というがそんなに多いのか?2、3隻じゃたいした量にならんぞ。」


「現在14隻、322ブロックがあります。」


「そんなにあるのか。」


親父が亡くなってからは宇宙関係は疎くなっておるからな。


「乗り手の居なくなった船は買い手がいない場合は破棄処分です。

 ブロック船の建造は時間がかかりますから中古品としてストックしているのです。

 正直そうやって誤魔化して確保しているのです。

 新規に建造する余裕はありませんからね。」


「よく残しておけるの。ステーションにあるのか?」


「生産ステーションの0番地と00番地ですよ。

 将来の拡張用スペースとして作られた箇所。

 四長老が勝手に拡張していた部分です。」


「建設計画の調整か。生産ステーションなら親父は関係ないかもしれんの。

 サトウさんは知っておるな。」


「さすがですよ。

 設計変更されているのに建設に使用された資材はほぼ変わっていませんからね。

 その区画が発見された時に過去の計画書をすべて確認しましたが問題点はありませんでした。

 他にも同様の事が行われているなら先に知りたいものです。」


「死後に公開。」


周囲の話を聞くだけであったサトウさんがぼそっと呟く。

公開するという事はまだ発覚していない何かがあるという事だ。


「情報公開されるのは近いじゃろ。

 それまでリラ6が残るようにせんとな。」


「カタオカに相談。宇宙船乗りの事。」


話すと同時に透過表示のモニターにも文字を打ち込みサトウさんはこちらに見せて来た。


「私で判る事でしたら相談に乗ります。」


「計画にある宇宙船乗りへの協力要請。不適格者のリスト。」


カタオカはペラペラと計画書をめくりその箇所を再確認する。


「必要であればこちらで話を通しましょうか。」


「経験優先。」


「どういうことですか?」


「イストと言うのは親父、キケラクトが引き取った養子じゃ。

 親父の後継者という訳ではないが親父に育てられた宇宙船乗りじゃな。

 もうすぐ18歳とまだ若くて色々と経験不足じゃ。

 交渉についての経験を積ませたいということじゃろうな。

 イストがそういうのに向いているとは思えんがその向き不向きも経験が必要じゃろう。」


サトウさんの短い言葉をなんとなくそうじゃないかという風に説明する。

慣れておらんとついていけん。


「そういうことですか。

 先にお知らせ頂ければサポート出来ましたのに残念です。」


「事後事前サポートを願う。」


「説得出来なかった場合や難しい相手についてのサポートという事ですか。

 確かに先にこちらから話を通しておけば容易い事もあるでしょう。

 ただ基本的には後でフォローするようにしましょう。

 仕事関連の技術を身につけるのは難しいですからね。

 現在宇宙船乗りの代表者は58名、それ以外も含めて24名は問題ないでしょう。」


「58と言ったか?そんなに減っておるのか。」


「現在稼動している船は民間56隻、行政府管理12隻になります。」


「おやじが居た頃は80くらいなかったか?」


「この2年でかなり減らされているのです。

 船の運営を維持出来ない事が多くなりその減少が激しい為に船を保存しているのです。

 そういう破棄船の元乗員もまだ仕事をしています。

 その方達に声をかけ船を用意すれば20隻から28隻は投入出来るでしょう。

 船乗りのリストを用意します。少しお待ちください。」


「会見予定はそちらにも連絡。」


「成否もご連絡頂ければこちらでも対応します。

 会見にサテッシュが同行ですか。彼は出来れば外したいですね。」


「サティッシュか。

 親父が組合代表になるのを渋っておった奴じゃな。」


「うまくまとめてはいるのですが何かと問題のある方です。

 借金を肩代わりして恩を売るなどは良いのですがそれで利益を得ているようです。

 契約書や書類上では不備がないのが面倒な方ですね。」


「どういう事じゃ?」


「借金を肩代わりしてその返済時に業者と癒着しているようです。

 返済をゆるやかにするかわりに長く絞りとり一部がサテッシュへ流れていると思われます。

 業者側も利益が出ますから協力しているようで件数も増えつつあります。

 返済があるからと時々採掘場所を融通したりして恩をきせてそれを利用しているのです。

 組合代表を継続しているのもそれで票を集めているからと推測しております。

 対処したいのですが証拠が無く証言も少なく集めても立証出来ません。

 あまりにひどいのであれば積極的介入案件ですが船乗りが助かっている面も確かにあります。

 関係業者を含めて注意人物です。」


「そこまで判っておって対処出来んのか。

 調査すればなんとかならんのか?」


「すみません。あちこち伝手を使って昨日ようやく証言を得られたのです。

 本格的な調査はこれからという事になります。

 フリーダムと繋がりがある可能性があります。

 ヒロオカさんを通じて情報を集めたい案件ですので対処をお願いします。」


「ヒロオカには無理ばっかり言っておるからの。

 家族にもなかなか会えんらしいし負担は減らしてやりたいんじゃがな。」


「キケラクト氏の対応が優れていた点ですね。

 今からではフリーダムと関係を作るのに時間が足りません。

 ヒロオカさんには頑張って頂くしかありません。

 他にもフリーダムに近い人物からの情報収集も考えてみましょう。」


「その辺りはどうなんじゃ?」


「人狩りの目標にしない事や捕らえられた家族の解放を条件に篭絡される方が増えています。

 こちらの情報がフリーダムに漏れてもおかしくは無いかもしれません。

 今後は計画関係者の防衛が大事になりますがすべてを保護するのはなかなか難しい。」


「人狩りから逃げるのも大変じゃからな。どうしても被害は出る。

 もしもの事があった場合は下の者が引き継げるようにはしておるよ。」


「こちらもです。出来れば家族は無事で居て欲しいですね。」


「そうじゃな。」


生産プラント関係の調整や詳細は後日正式な発注が行われる。

それについてももう少し細かく打ち合わせ詳細が必要になる期日も決めておく。

急ぎの仕事が追加じゃな。働ける人材も確保せんと。

他の参加者も交えて調整は進む。

時折気になってサトウさんを見るがじっと飲み食いしているだけじゃ。

サトウさんの役割としてはこういう会議の前に終わる事が多いからの。

産業管理部に勤めておったで資源の調整やら計算はいまも一流じゃ。

各所への連絡もスムーズで色々な情報を潤滑にやり取りさせてくれる。

だからこそここに居るのが珍しいのじゃがな。

結局2時間程、細かな調整が行われ会議はひと段落。

わしは酒のお代わりを頼み少し前からのんびりしておる。


「会議は区切り。私から話。」


サトウさんが座りなおし出来るだけはっきりと言葉を出した。

ギードリアさんが姿勢を正し他の者もわしも姿勢を正す。


「計画を最終段階に以降。

 以後全力で実行、進行加速は各自判断で任意実行。

 優先度を引き上げ。了承か?」


全員が頷く返事をする。予定はされていたがこれは非常に重要な指示だ。

これからは現在のリラ6維持も後回しにしてでも計画を進行させるということじゃ。


「計画公開も行う。計画実行の代表はイスト、参加者は私。

 BN-キケラクト、サトウタクヤと四長老の名を使い広める。」


サトウさんが横のギードリアさんを見る。


「四長老が何か計画をしているのを広める。

 代表者としてBN-イストとするがそれはカモフラージュ。

 四長老サトウタクヤが後ろに居るとなればそちらに注目される。

 今後サトウさんは上層部から動かず計画関係者の直接の接触は禁止する。

 計画関連書類にはサトウさんからの指示を多く残し計画が実行中と見せかける。

 サトウさんに確認したがある程度BN-イストの安全は確保されている。

 宇宙における計画と見せかけてこちらの計画の成功率を高める。」


「そりゃひどい。イストはかなりやる気になっておるんじゃぞ。」


「イストの計画は全力で支援、協力。

 宇宙船の排除も可能性に含めるが確率が未知数、不確定。

 地下避難計画を優先。」


「キリアトさん、両方の計画は実行する。

 被害を前提にしてもフリーダム船排除が可能かはどう計算しても不明。

 サトウさんの強い要望でそちらの計画も実行、支援を行う。

 当初の計画を優先しつつ排除出来れば良し。

 無理だった場合でも避難計画があれば問題はない。

 BN-イストは長距離航海が中心と聞いている。

 計画の代表者としてフリーダムに認識されてもリラ6に居なければ危険は少ない。

 そうなれば当然サトウさんが危険視されるだろう。

 BN-イストに危険が及ぶ場合は行政府も全力で保護する事を約束する。」


「そんなに上手くいくものか?」


「基本的に現状維持。積極的な情報公開はしない。

 噂が広まればキケラクトの名でイストの支援者を増加。

 計画に有利になるよう情報操作。」


なんぞ勝手に大変な立場にされておるな。


「イストは知っておるのか?」


「連絡済み。」


「それなら構わんか。

 宇宙での活動が難しくなる前にそちらの仕事は片付ければ良いな。」


「変更点、詳細後日通達。

 計画進行速度優先。」


イストが中心になって計画を進めておる訳ではない。

ただイストが計画を始めたのは間違いがないから代表というのは間違いではないの。

危険な事にはなって欲しくはない。

じゃが親父からイストの事を頼まれたのはサトウさんも同じじゃからな。

イストが危険になるような事にはしないじゃろ。

実際これまでの悪名とか活躍とかからすればサトウさんが中心なのは明白じゃ。

まだ若くようやく仕事が出来るようになったイストがやっているとは誰も思わん。

わしらはわしらで計画の成功に向けて進めんとな。

フリーダム船を攻撃して成功するかも判らんが地下に隠れて逃げられるかも判らん。

それでもなんとかリラ6での暮らしが続けられるようにせんとな。

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