2-6 リラ6での2日目:サトウとセリナ
「可能。私個人が利用可能な人材、組織なども投入。
システムの内容詳細、連絡。専門的な内容、確認。」
『イストがこの場へ同席、計画についての会話。
セリナ個人が計画関与、イストと協力は推測可。
詳細説明、回答無き場合は対応。』
「イスト、細かな部分を打ち合わせますので少し時間が掛かります。」
送られて来たメッセージは重要なものでした。
椅子に座り先程まで使っていた端の端末を使用して用意してあった返答を打ち込みます。
個人情報の捏造が発覚した場合の対処も複数用意しています。
『キケラクトさんの勧めがありガーランド23の乗員となる契約をしていました。
少し前からイストとは連絡をしており現在は雇用関係にあります。
計画については乗員を断る口実として仕方なく話された内容です。』
『リラ6にKO-セリナという存在記録なし。
私個人、リラ6個人情報すべて記録。
現在情報には存在、2日前には存在無し。
情報の改竄は明白。
私に対応権限あり。行政府及び関連部署へ通達可能。』
サトウタクヤ氏、エンジニアとしての最高齢、最高技術者。
イスト周辺の人物であり情報改竄についてはもっとも注意すべき人物でした。
保有している情報についても念入りに調査していたつもりです。
こちらが入手した情報にはサトウ氏が個人情報をすべて持っているという情報はありません。
存在を確認していれば設定したプロフィール自体を変更しています。
恐らくは物理情報もしくはネットワークに接続していない隔離状態の情報。
イストからの情報としては変わった人でコンピューター漬けな人という事でした。
情報管理が行き届いた行政でしたから改竄すれば問題ないと予想しました。
それ管理している人物がいるのは予想していません。
一部の情報であれば問題ありません。いくつか対応策があります。
本当にリラ6の現在人口24432名の情報を所持している場合は違って来ます。
正確に2日前の情報との差を指摘されました。
複数の情報を確保しているのは間違いないでしょう。
どれくらい過去の情報まで所持しているかは明かしていません。
いくつか誤魔化す方法を用意していましたがどれも確実性に欠けます。
不信感を与える対応をするのは避けた方が今後の為には良いでしょう。
『詳細の説明はイストとの契約があり公開出来ません。
イストとは現在協力関係にあり契約もしています。
セリナとしてはイストが必要ですのでその周辺と対立する事は望みません。
またリラ6に対しても同様です。
イストとの契約に基づいて計画についても協力しております。
詳細情報を要求されるのであればイストに許可を得てイストからお聞きください。』
準備していた対応策は全て無視、イストへと回答を任せる事にします。
関係性の提示、契約による秘匿条件。これについては本当の事です。
これらの開示だけで追及が避けられるとは思いません。
すべてイストへと向ける事で追及は避けられるかもしれません。
ただイストが追及された場合は上手く対応出来るかは不明です。
『フリーダム関係者か否か。返答可能か?』
『フリーダムという勢力とは一切関係がありません。
そちらとの対立は問題なくリラ6の現状について改善の為、助力しています。
フリーダム勢力の行っている奴隷制度は廃止すべきものです。
使用している側の意見は違うのでしょうが廃止の立場にあります。
それもありイストに協力をしています。』
イストの言い方としては宇宙は広いから何があってもおかしくない。
どう考えるか判りませんがフリーダムという存在があるのです。
セリナが他の星由来と考えられてもおかしくはないでしょう。
イストは宇宙船の残骸から情報を得た事にしています。
2ヵ月もの長期航海、船との遭遇があったと考えられれば生存者の可能性も考慮されるでしょう。
問題なのはリラ6の情報を改竄した事についての追及です。
『イストとの契約、船の乗員以外か。』
『それ以外にも契約があります。』
『イストとの協力関係、期限を知りたい。』
『今のところ期限は設定されていません。』
協力関係の終了があるとすればツキヨミの運用を指示された場合でしょう。
中継器は設置しており稼働中です。
現在もまだ連絡は入っておらずリラ星系に留まる間は連絡は無いでしょう。
『フリーダム関係でイストと協力。他不明点多数。
追及による敵対と相互の協力、どちらを選択。』
『敵対は望みません。協力できるのであればそちらを選択します。』
『協力について情報提供などは可能か?』
『出来ません。強制された場合はこの星系を離脱します。』
逃亡と言っても良いのですが星系離脱とすれば移動手段などがあると誤解してくれるでしょう。
情報についてはイストを通じてなら可能ですがそれを公開する必要はありません。
『私と契約、書面不可、口約束のみ。
提供
1.リラ6におけるKO-セリナの存在を確定
要求
1.個人情報変更の方法を提供
2.リラ6の計画に協力
3.イストの生存に協力』
不審人物がリラ6に侵入しています。
対応する立場に居るのであればもっと厳しく追及するのが普通でしょう。
追及などは無く契約という提案がされました。
未知の存在でも協力する必要があるという事でしょうか。
フリーダムの事を考えればもっと危険視されるべきではないでしょうか。
提供されるのは情報改竄については不問にしリラ6でのセリナという存在を認める事。
求められるのは情報改竄の方法について。
リラ6の計画についての協力は詳細が無いので危険です。
イストの生存に協力というのはどういう事でしょうか。
『要求項目、2、3についての詳細が必要です。』
『2についてはイストの計画以外でも可能な事があれば協力を願う。
プログラム関連は作業量が多く人員不足。
イストの計画協力は可能だがスケジュールが厳しい。
3については個人的な要求。
最悪の場合、リラ6を離れても良いのでイストを生存させて欲しい。
出来れば何があっても生き残らせてやりたい。』
『2に関しては理解。3については善処のみ。
理由を聞いても良いのであればもう少し積極対応可能。』
『ただの感傷と約束。イストは私が好きだった人の孫。
それを知るキケラクト、引き取る時に私にも話。
私は育てられないと判っているから辞退。
彼女はすでに存在しないがそれでも守ってやりたい。
キケラクトに代わってイストを庇護するのは約束。
星を離れ一人で生き残らせるのは過酷、イストの意志に反する可能性。
それでも生き残って欲しい。
星が滅ぶとしても可能な限りで可、イストの生存を要求。』
書かれたのは簡単な言葉です。でも人の感情という物でしょう。
すでに亡き人との約束。
好きだった人の血族というだけで守ろうとする感情というのはなんでしょうか。
人間の恋慕というものは感情としてもっとも理解しにくいものです。
しかしそれによって様々な事が行われて来ているのも事実です。
恋愛のもつれによる事件など多数あります。いくつも物語はあります。
生存、生殖だけではないのでしょう。
いずれその感情も理解できるのでしょうか。
『契約はしません。お互いに協力しこれらの項目を守るのはお約束します。』
契約とした方が本来は良いでしょう。
それでも書面に残らないのですからあまり意味はありません。
いくつかのパターンから人の感情に沿った返答のようにしてみました。
この返答が良いか悪いかは正確には判断出来ません。
『了承、契約は破棄、約束は順守。
まずは個人情報変更の方法を提供。システム製作者としては重要項目。』
当然の質問です。
特に難しい方法ではありません。ごく普通の方法を提示します。
無論人間では非常に時間も手間もかかる方法です。
AIとしては簡単ですがそれを明かす必要はありません。
『方法は確認。可能と推測。修正項目は確認。
実働部分についての詳細検討。』
火器管制システム、宇宙船戦闘用のプログラムについてはリラ6にも存在しているようです。
それを参考に現在のリラ6に合わせた仕様へと変更。
船のシステムの方が問題が多いようです。
そちらについてはこちらも協力した方が良いでしょう。
「細かい部分を調整しましょう。」