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竪琴宇宙のサクシード  作者: MAD-WMR
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  >光子ロケット:宇宙船乗りの浪漫

「情報を見たのは仕方ない。もうそれは構わない。

 プログラム関係が得意なのも判った。

 ただ勝手に船のコンピューターを弄るのはやめてくれ。動かなくなるとかは困るぞ。

 あと光子ロケットは使わない。航路計画は作り直してくれ。」


「光速の10%近くまで加速可能な推進機を使用しないのは損失です。

 大幅な移動時間短縮が可能です。」


「完成品じゃなくて実験用のロケットなんだ。

 不完全で毎回安定しないらしいし使う度に調整や補修が必要になる。

 加速に使えるが減速はどうするつもりだ。

 予想以上の加速になれば光速の20%とかだぞ。

 減速にはもう一度ロケットを使うのが確実だが補修しないと使えない。

 もしもう一度使ったとしても安定していないから同じ加速度になるとは限らない。

 使わない理由はそういう所だ。単純に今は補修する費用も資材も器材も無い。」

 

光子ロケット。

光子噴出の反動を推進に利用するロケットだ。

理論上は光の速度に近い速さで飛べる最も速いロケット。

実験段階だし最大で光速の40%くらいまでしか加速出来ないみたいだ。

正直それでもとてつもなくすごいロケットなのは間違いないけどな。


具体的には船の後部に反射鏡を設置しそれに向けて光を当てて反射、それを推進力にする。

凧に風が当たって浮かぶのと同じようなもの。

凧じゃなくて鏡で風じゃなくて光、というか光子。

宇宙船の後ろに凧(鏡)を置いてそれに風(光)を当てて加速させるというものだ。


現状ではまず反射鏡の性能に問題がある。

光子を完全につまり100%反射出来る反射鏡が理想形。

反射出来るようにはなっているが反射率はまだ高くない。


その反射鏡に向けて放つ光も問題。

発光体を作り継続的に光を放つ、強力なビームを照射するなどが必要だ。

反射鏡に向けて放つ必要があるから宇宙船後部から前に向けて発光源とかが必要。

特殊な核反応を反射鏡の焦点で行うことで光源を発生させる方法がひとつ。

その光源を利用し光線にして放つ方法もある。

どちらもまず特殊な核反応がまだ安定していない。

光源の維持も光線にするのも完成していない。

実験の結果から核反応の安定を研究するのと光源についてもさらなる改良、研究が必要らしい。


あと反射鏡を出来るだけ良い状態に保つ必要があるが実験すればすべて再調整が必要。

核反応を起こす事も同様で機器すべてに補修が必要。

実験用なので当然なんだがまだまだ不完全なロケットだ。


当然使った事は無くて船に残っているデータとか画像でしか知らない。

使ったことはないが使えるのは間違いない。

ちゃんと整備はしているし実験用のシュミュレーションでは稼動出来るのを確認してる。


なぜそんなものがこの船に積んであるのかと言えばこの船が建造された時からあるからだ。

当時の研究者がロケット実験の為に使った船、それがこの船だ。

別に船体全部が100年以上の前のものじゃない。

ブロック船だから追加されたブロックもあるし修理とか最新機器に改良はされている。

大型推進機は実験用に作られたものだがこれも改良できる所はされている。


ロケット実験の結果資料も船には残っている。

研究途中の資料も星のデータベースにも残っていたはずだ。

実験が行われた船についての記載は無いからこの船にロケットがあるのは知られていない。


ひとりの研究者が完成を目指して実験を繰り返していた。

不完全でも改良し続けて実用可能になれば研究結果を公開しようとしていた。

でもその研究者は事故で亡くなった。


それから実験船で雇われていた船乗りたちが船を買い取る。

研究者が資産すべてを継ぎ込んだロケットを失わせたくなかったからだ。

研究結果については公開したが船にも残してロケットもそのまま維持。

何時か誰かによって研究が再開されるかもしれないから。

宇宙船乗りとして他の恒星まで飛べる船が何時か出来て欲しい。

光速に到達できるロケットが完成して欲しい。

そんな想いからこの船は代々受け継がれて来たらしい。


ちなみにコンピューターを改造したサトウじいちゃんもその想いを継いだ一人。

採掘屋としての稼ぎを全部使ってコンピューターを改造した。

船の性能を上げると言うより光子ロケットの制御が少しでも出来るようにだ。


金属融合病の後、復興からしばらくしての事だ。

星の復興に全力が向けられている時で風当たりとしては強かったらしい。

ロケット研究しかしてなかった人らしくて復興にはあまり自分の知識は役立てられなかった。

もっと別の研究をしていればというのは日記に書いてあった。

融合病で失った研究用のロケットを再建しての技術を残したのは時代的にもすごい事だと思う。

ただ研究したかっただけかもしれないけどな。

でも融合病で知識や技術は失われているからそれを引き継ぐ人がいないからと自分で残したんだ。


結局今でも資料はあるのに研究される事は無い。

リラ6ではまだ状況的に宇宙開発は行われない。

もし研究されたとしても完成させる為の技術、知識が不足しているかもしれない。


完成しないであろう果てしない夢の残骸。

でも維持すれば将来研究される時に実物があるのは大きいのかもしれない。

誰かが見つけて研究されるかもしれない。

そうやってこの船というか実験用光子ロケットはこれから先も維持されるといい。


じいちゃんが物質生成器の存在を知っているのは光子ロケットのせいらしい。

それがどう繋がるかと言えばすでに設計図はリラ6にある物質生成器に登録されたのかもしれない。

海賊が来た後の事なら公開するのも危険かもしれないからな。


可能性の大きなガーランド23の秘密、それが光子ロケットだ。

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