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こんな夢を観た

こんな夢を観た「富士山移転計画」

作者: 夢野彼方
掲載日:2014/09/09

「富士山は日本の象徴なのに、なぜ山梨県と静岡県だけに委ねておかねばならんのですっ!」

 そんな声が議員達の間から上がった。

「言われてみれば、確かにそうですな」総理もうなずく。

「いっそ、今の場所から移転させてしまってはどうですかな」別の議員がそう提案した。

「移転と言っても、どこにです? 日本は狭いですぞ」

「東京湾なんてどうだろう。首都にこそ、富士山はお似合いだと思いますがねぇ」

「何をばかなことをおっしゃる。わたしゃ福島出身だが、東京さんはいいもんは何でも独り占めしたがる。こういう時にこそ、地方に花を持たせるべきかと。震災で意気消沈していることでもあるし、どうですかな、猪苗代湖にぽんっと持ってきては」


 結局、国内である以上、どこへ移転したとしても不平不満が噴出するのだった。

「ええい、ならばもう、月にでも持っていってしまおうじゃないか。あそこなら誰のものでもない。日本だけでなく、世界の財産ということにすればいい」

 破天荒な案ではあったが、かと言って反論する点も見当たらない。

「いいんじゃ……いいんじゃないか、そのアイデア」

「そうだな。たぶん、最良の方法だろう」

 ぱらぱらと手を打つ音が広がっていき、おしまいには盛大な拍手をもって採決された。


 この壮大な国家プロジェクトのニュースは、瞬く間に世界中を駆け巡った。

「オーウッ、ニホンガ、マタ、ユニークナコトヲ、ハジメマシタネッ!」アメリカやヨーロッパでは、概ね、驚きと好意を持って迎えられた。

「変態的作業、我国民吃驚仰天。可能的技術有、我思的成功。加油!」いがみ合うことも多い中国でさえ、成り行きに期待感を示している。

 何しろ、前代未聞の大工事なのだ。つい先だってまで熱狂していた、あのロンドン五輪のことなど、たちまちにして吹っ飛んでしまったほどである。


 作業の手はずはこうだ。

 まず、富士山の裾周辺を掘り下げていく。深さにして、3,000メートル位か。野山に生えている百合の球根を、ざくざくと掘るのと同じ要領だ。

 十分に掘ったら、今度は大量のダイナマイトを地下に仕掛ける。溶岩脈を破壊して、人工的に噴火を促すのだ。

 富士山は大噴火を起こすけれど、足元をすっかりえぐられているので、溶岩を吹き出す代わりに、山ごと押し上げられ、その膨大なエネルギーによって、月へと飛んで行く、とまあ、そんな計画だった。


 御殿場や富士吉田に住む人々からは、不安そうな声が漏れる。

「溶岩が雨あられと降ってくるんじゃないかしら。洗濯物とか干したままで、大丈夫かしらねえ?」

「うちは土産物屋なんだが、岩がゴロゴロと落ちてこられちゃ、店に置いてある火山岩の記念品が売れなくなっちまうなあ」


 そんな心配に答えるため、火山学者があちこちのお宅を訪問して、説明して歩いた。

「ただちに影響はありません」開口一番、そう請け負う。「予測では、塞いでいたもの、これはつまり、富士山のことですが、そいつが取り払われてしまっているため、爆発的な噴火は起こり得ません。ボコボコと溶岩が噴き出るだけでしょうな。溶岩、あれはああ見えて、結構粘度が高いもんでしてね、噴き出るそばから固まっていきます」

「へえへえ。で、その後、どうなるんで?」

 コホンと1つ咳払いをし、学者は言う。

「富士山があった場所に、新しく別の山ができるんです。プリンそっくりに盛り上がるでしょうから、『プリン新山』なんて名前を付けてはどうでしょうかな」


 近い将来、月を見上げながら、同時に富士山を眺める、などという優雅な時間を過ごせるようになるかもしれない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] こういうの大好きです(笑) 諸外国の反応が適当すぎて素敵すぎます! [一言] プリン新山はやっぱり黄色とカラメル色なのでしょうか。そして富士山よりもふっくらとした外見で、上る時に足がかりが…
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