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雨が降っている。

作者: かみしも

その日は雨が降っていた。

ウチはビニール傘を持っていったんだけど、帰りにはなくて、しょうがないから似たような傘を選んで代わりにした。

傘をとることにほんのりと罪悪感が香るけれど、必要にかられたからしょうがないじゃんて言い訳することにした。

学校から出てしばらく歩いたけれど、止む気配は全くなかった。

規定の下校時刻を大分過ぎているからか他に生徒はいなかった。

駅まで着くと傘を閉じる。制服が少し濡れている。透けていないか気にして、問題ないことを確認したのでICカードを取り出して改札を通る。ホームには列が出来ている。いつも通りの光景なのだが、それでも面倒だなと感じずにはいられない。電車が来ると風が吹く。スカートを押さえながら電車が止まるのを待った。寒い。ドアが開くと人が押し出されてくる。けれど、実際に降りる人はあまりいなくて、人口密度は高くなるだけだった。会社帰りと思われるスーツ姿のサラリーマンの間で押し潰され、揺られる。嫌な時間。嫌な天気。なんだか素直に家に帰りたくなくなって、自宅の最寄り駅から三駅前で降りた。定期圏内なので電車代が余計にかかることはないから、改札を通って外に出た。ウチがなくした傘と引き換えに手に入れた傘は一回り小さいことに気がついた。損した気分だった。駅から外に出て少し歩いたところにある喫茶店に入ることにした。

思ってた以上に店内は混んでいて、かろうじて見つけた席は喫煙席との境目だった。ガラスはあるんだけど、完全には密閉されてなくてちょっと煙たいし、臭う。それでもそこ以外は空いてないので仕方なく座る。頼んだのは豆乳ラテで、当たり前なんだけど、豆乳の味がした。

とりあえず手持ち無沙汰なのでスマホを取り出してTwitterを見てた。流れてくるのはくだらない、どうでもいい情報ばかりで、ウチにとってなんにも有益じゃない。なのに、見るのはやめられなくて、しばらくタイムラインを追っていた。やがて更新がなくなると、Twitterを閉じる。何をしようかと悩んで、LINEを開いた。誰かと連絡でもとろうかと思ったけど、やめた。今の状況が相手に見えるわけでもないのになんだか連絡したら伝わる気がして、寂しいやつだとか、寂しがってるとか思われたくはなかったから。ほんと、くだらないことなのに、できなかった。

スマホを鞄にしまうと、ストローに口をつける。氷が溶けた味がする。少し薄まった豆乳ラテは気持ち悪かった。ストローから口を離し、外を見る。歩く人はそう多くないけれど、雨のせいなのか普段からなのか足早に人々は歩いている。店内は居心地をよくするためかよくわからない音楽がBGMとして流れている。周囲を見渡すとお客さんはまばらでスーツ姿のOLや普段着の大学生らしき人がいる。他にも何人か。みんな本を読んだり、勉強らしきことをしてたり、思い思いのことをしている。制服姿なのはウチだけだ。どんな生活してるのかなーとか想像してみるけど、ろくな想像が出来なくて飽きた。面白くない。いつ帰ろうかなって考える。帰ってもすることないしな。・・・・・・それは今も同じか。飲み物を一気に飲み干した。帰ろうかな。スマホで時間を確認すると思ったよりも居たみたいだ。ならよし。なんてよくわからない充足感を得て喫茶店を出るための片付けをする。出てから傘を差した。ずっと持ってたから今度は傘が間違われることはない。ウチの傘じゃないんだけどね。駅まで歩いているとなんか食べればよかったかなって後悔した。まいっか。太るし。ウチだって乙女だもんね。・・・・・・自分で思ってちょっと引いた。そろそろ電車空いてるかな。空いてるよね。だってそのために時間潰したんだし。雨は止まない。これで上がってくれれば最高だったのにな。傘をたたみ、駅に入る。はあ、今日のご飯なんだろな。ってかそもそもあるのだろうかと心配した。


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