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骨だってシャワーを浴びたいのです

 あたしが眠ってしまった後、ルクスは夜中に戻って来ていたらしい。

 気持ちよく目を醒ましたあたしが目にしたのは、ぱんつ一丁大の字で眠るマイマスターのお姿だった。

『………………』

 惜しい。

 布一枚が非常に惜しい。

 ……なんてことはちょっとしか考えてないよ。

 というかこんな姿で眠っているあたり、絶対にあたしの魂は男だと思っていそうだよね。

 それにしてもネクロマンサーらしいもやしギリギリっぽい身体だった。

 痩せすぎって程でもないし、筋肉も最低限はついているけど、力強そうってほどでもない。

 ネクロマンサーもやしっこという説はルクス相手にも当てはまりそうだ。

『………………』

 視線を移すとシャワールームが開いていた。

『………………』

 骨だけど、シャワー浴びても大丈夫かな?

 やっぱり女の子としては何日もお風呂に入らないっていうのは気分的にダウンするんだよね。

 お風呂入りたい。

 シャワー浴びたい。

『………………』

 という訳でレッツシャワー♪

 二人分で部屋を取っているからあたしの分のタオルもあるし、遠慮なく浴びちゃえ~♪


『……~♪』

 頭から熱いお湯を被る。

 ふあ~、気持ちいい~。

 頭蓋骨の内部までお湯が這入り込んでくるのがちょっぴり不快だし、肋骨をお湯が流れるのも違和感ありまくりだけど、慣れてしまえばどうってことない。

 そして慣れとは恐ろしいもので、あたしは頭蓋骨の眼球部からお湯を被って楽しむというちょっぴりチャレンジャーなこともしていた。

 人間だった頃と身体の構造は違わないはずなのに、肉と内臓と皮がなくなっただけでこうも違いが大きくなるとはね。

 ルディークの骨も随分と長い間放置されて汚れていることだし、この際ボディーソープも使ってとことん綺麗にしちゃいましょう。

 ボトルからボディーソープをしゃこしゃこ出して身体を洗う。

 白い骨に白い泡が立つ。

 これもこれで面白い。

『………………』

 頭蓋骨内面を洗うかどうか本気で悩んだけれど、そうなると頭部を取り外さなければならないのでやめておいた。

 お湯洗いで十分ということにしておこう。

 ちょっと試して可能だということは分かったのだけれど、さすがにそこまで人間離れしたくはない。

 自分で自分の頭部を外して洗浄。

 首無しスケルトンメンテナンス中。

 想像しただけで凹む光景だ。


 ある程度シャワーも浴びて洗浄も完了したので満足した。

 タオルを取って骨をふきふき。

 ちょうどその段階でルクスが目を醒ましていた。

「……シャワーを浴びるスケルトンなんて初めて見たぞ俺は」

 ちょっぴり呆れている。

 何とでも言えばいい。

 骨だろうと何だろうと不潔なのは嫌なのだ。

 女の子としても人間としてもね。

「風呂が好きなのか?」

『………………』

 好きか嫌いかっていう問題でもない気がするんだけど、不潔よりは清潔な方が好きなので頷いておいた。

「だったら魔力で肉付けすれば表向きは人の身体で楽しめるぞ」

『っ!?』

 がしっ! とルクスの頭を掴んだ。

「ぎゃーっ!? なななななんだなんだ!? 殴られるようなことを言ったか俺は!?」

 すっかり条件反射になっているらしく、殴られそうになると怯える。

 調教は順調だ。

 本当は胸ぐらを掴んで問い詰めたいところだけどそこはぐっと我慢。

 だってルクスってばまだぱんつ一丁なんだもん。

 胸ぐらを掴もうと思ったら服じゃなくて肉を掴まなくてはならなくなる。

 そうなると新たな悲劇……じゃなくて悲鳴が上がってしまう。

 首を絞めつつガクガクとするのも魅力的な選択肢だったけど、あたしはさっそく覚えた文字を駆使してコミュニケーションを試みることにした。


(お風呂大好き。骨よりも身体がある方がいい。だからその魔法教えて。つーか教えろ!)


 という内容を紙に書いて突きつけた。

 ルクスは唖然としながらその紙を見つめている。

「……成程なあ。筆談って手があったか」

 どうやら感心しているようだった。

 そして何やら考え込んでいる。

「ちょっと待ってろ」

 ルクスは立ち上がって服を着る。

 そして部屋から出て行ってしまった。

 って、逃げた!?


 ……って思ったけれど、実際は少し違っていて、フロントから紙束を貰ってきたようだ。

『………………』

 なるほどね。

 筆談するにしても紙が必要になるから予め準備してきたのか。

 部屋の中にある紙はそんなに多くない。

 これから話し合いをしようと思えばその程度の準備は必要というわけだ。


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