マントぷりーず
砂漠とミミズの屍を乗り越えて、あたしとルクスはようやく最寄りの街へとたどり着いた。
「ついたー……」
今にもへたり込んでしまいそうなマイマスター。
もうちょっとしっかりしてくれないかなと思わなくもない。
ちなみにあたしは体力消費ゼロ。
一日中歩き通しでも疲労無し。
魔力供給さえ受けていれば無制限で動き続けられるらしい。
骨ボディー意外と便利?
「ひっ! 化け物!?」
そして街の門番さんがあたしを見て化け物呼ばわり。
……殺していい?
ちょっと前まで君達ぐらいの男にはモテモテだったこのあたしに対して化け物呼ばわりは許しがたい。
「待て。そいつは俺の仲間だ。死霊技術で作り上げた使い魔のようなものだから絶対に命令無視して人を襲ったりしない。だから街の中に入る許可をもらいたい」
あたしのほんのり殺意を敏感に感じ取ったのか、ルクスが門番に説明する。
それにしてもあたしはルクスに絶対服従ってわけじゃないんだけどな。
まあいいか。その方が面倒なさそうだし。
「し、しかしこのような者を街に入れてしまっては住民に混乱を招きますから……」
「だが傍にいて貰わないと困るしなあ」
ルクスは困ったように唸る。
『………………』
ちょうどいい機会だからこのタイミングで要求しようと思った。
「ん?」
くいくいとルクスの袖を引っ張る。
「どうした?」
言葉は喋れないので身振り手振り、もしくは筆談で意志の疎通を図る。
今回は筆談……というか絵で示した。
骨の手であたしの骨ボディーとマントの絵を描いた。
それで伝わったらしい。
「つまり着るものがあれば中に入れるってことか?」
『………………』
こくこく。
「マントを買ってくればいいんだな?」
『………………』
こくん。
「了解だ。ちょっと待っていろ」
伝わったらしく、ルクスは先に街へと入ることになった。
これでマントゲットだ。
いくら骨だからといっても、やっぱり裸のままって恥ずかしいんだよね。
肉が付いていないからいいだろうって話でもない。
恥ずかしいものは恥ずかしい。
贅沢を言えば服がほしいところだけど、さすがに骨ボディーでは着るのも難儀しそうだし、とりあえずはマントで我慢しておこう。
街中で住人を怯えさせないというのなら手袋とブーツも必要かな。
それは後でいいか。
マントさえあればとりあえずは凌げるし。
『………………』
っていうかマイマスター、ちゃっかり外殻置いていってるね。
重たいからってあたしに持たせる気満々だね。
顔が良くなきゃフルボッコにしてるところだよ。
中身が残念過ぎるなー。
まあそのあたりは少しずつ調教していけばいいか。
諦めるのはまだ早い。
人は変われる生き物なのだから。
「……本当に襲わないのか?」
「まったく。死霊使いっていうのはどうしてこんな不気味なものを傍に置きたがるんだ?得体が知れないな」
「さっさと出て行ってくれれば助かるんだが」
『………………』
門番達の会話はしっかりと聞こえている。
理解できない低能スケルトンとでも思われてるんだろうか。
殺すのは駄目でも殴るぐらいはいいかなー。
でもここで揉め事起こすとルクスに迷惑がかかりそうだしなあ。
あんな残念美形でも大切なマイマスターであり、あたしにとっては大事な大事な芸術品。
ここはぐっと我慢しよう。
うん。あたし偉い。
後でルクスに褒めてもらおう。
「待たせたな。買ってきたぞ」
ルクスは三十分ほどで戻って来てくれた。
手には黒いマントを持っている。
あたし黒ってあんまり好きじゃないんだけどまあ贅沢は言ってられないよね。
『………………』
受け取って羽織る。
頭にすっぽり被った。
「よし、上手い具合に隠れたな。これで街中に入っても文句はないだろう」
「くれぐれも正体をバラさないように気を付けて下さいね」
「分かってるさ」
しつこい門番に鬱陶しそうに返答するルクス。
蹴っていい?
「やめておけ」
『………………』
あたしが門番をじっと見ていたので言いたいことが伝わったのだろう。
止められてしまった。
そんな感じでマントゲット。
ようやく街の中に入れるようになった。
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