結末
次で終わりです。
「錬次君、どうしたの? 具合悪そうだよ」
錬次と中西さんは相対している。
先程廊下を覗いた錬次は中西さんの手に持っているスタンガンと中西さん自身に圧倒され、後退り、穂刈とマドンナが倒れている教室の真ん中まで進んだ(戻った?)。
「そんなことより、どうしたんだよ、それ?」
恐る恐る例のスタンガンを指差しながら中西さんに訊いた。
すると中西さんは錬次をびびらせるようにバチッと電気を迸らせて、小首を傾げた。
「これはスタンガンっていう護身用の武器。意味解る? 自分を守るために相手をバチッと感電させるの」
「いや、俺の訊きたいことはそういうことじゃない。えーっと、なんで中西さんは゛今゛持ってるわけ? それを」
錬次は身体中から滲み出る汗を意識しながら、中西さんに問う。
「じゃあ逆に訊くけど、なんで錬次君は私のことずっと見てるの? 朝から放課後までずっと」
中西さんはスカートのポケットに携帯電話を仕舞いながら訊いてきた。
「中西さんは人を好きになったことない?」
錬次は瞳の端に映るスタンガンに恐怖を抱き、柔らかい物腰で訊いた。
「う~ん。中学生のときはあったかなぁ? 高校生になってからはないよ」
中西さんは空いた片手でスタンガンをなぞり始めた。錬次はその動きが気になって中西さんに彼氏が居ないことを効き逃す。
「そうなんだ。……俺は好きな人がいると眼で追っちゃうみたいなんだ。つまり、中西さんを見てるということは……俺は」
言っているうちに行くとこまで行っちゃえと錬次は半ば雰囲気に任せていたら、中西さんの声に阻まれて錬次の気持ちは中西さんに最後まで伝わらなかった。
「止めてよね、気持ち悪い」
その言葉に錬次の頭は真っ白になった。そして聞き違いかと思い、反復した。
「気持ち悪い?」
「うん」
即座に返ってくる言葉に落胆する錬次。
「だってそうでしょ? 学校にいる間ずっと監視されてて、教えてもいない電話番号まで知ってることはストーカーと一緒でしょ?」
中西さんの本音が矢の如く錬次の胸に刺さる。
「ストーカー? 違うって! 俺は中西さんのことが好きなだけ! 中西さんの全てが知りたいんだ!」
錬次も中西さんへの想いを吐露するが、返って中西さんを傷つけていることを錬次は理解していない。
「ストーカーって独占欲強いんだってね。錬次君なんか正にそれだよ。近づかないで!」
中西さんが思っている錬次を否定したくて錬次は優しく近づいたのにそれさえも拒否してくる中西さんに苛立ちを覚えてくる。
「俺は中西さんが好きなだけだって! ……ああ、中西さんの気持ちは解った。でもなんで俺以外の人に危害を加えるだ?」
中西さんに感情だけで近づいたら、スタンガンでやられると判断した錬次は冷静に話の筋をずらした。
「知らないの?」
中西さんは先程の不安そうな表情から驚いた表情に移り変わり、錬次から倒れている穂刈とマドンナに視線を向けた。
「そこに倒れている二人ともう一人は私を苛めていたの。それが高校生になってから。私はずっと今年まで耐えていたけど、二年生になってから錬次君が私を変な眼で視るから私は精神的に辛かったのよ!」
感情をぶつけてくる中西さんは途中から涙を流す。一度袖で涙を拭き、続けて言う。
「なんで私のこと見てたくせに助けてくれないのよ! ストーカー!!」
ついには崩れ落ちてうわんうわん泣く中西さんを錬次は可哀想だと思った。
だから、
「大丈夫。俺が中西さんを守ってあげるから」
と、錬次は中西さんの気持ちを一ミリとして理解していなかった。
「来ないで! ストーカー!」
中西さんの絶叫と瞬く光と錬次を襲う電撃が教室に轟いた。
一瞬にして錬次は意識を失い、穂刈同様倒れた。
そのあと戸締まりを確認するおじさんがくるまで中西さんは泣き続けた。




