主人公
やっと半分だと思います。もう少しの辛抱です。
錬次の通う学校は進学校にも関わらず、部活動に精を出す生徒が多く、放課後にストレス発散させているようにも見えたりする。
しかし、錬次は部活動をしていなければ、アルバイトさえもしていなく、毎日一人で自宅に帰っていく――が、今日は放課後の教室で物書きを遅くまでしていた。
提出期限は明日の朝までのはずだが、家では出来そうにないことを判断した錬次はせめて部活動をしている穂刈と一緒に帰るまで頑張ろうとしたが、、精神が果て、猫背になった背中からは気が感じられない。握られているペンもカチカチとノックするだけで筆が進んでいない。
「アー、読書感想文なんか無理」
だれた声が教室に空しく響く。
(そもそも感想文を書いて誰が喜ぶんだよ)
錬次が提出しなければならない原稿用紙はたったの一枚だけだ。しかし、錬次はその内の一行目で感想は書ききった。
『俺は読んだ本が好きになりました』
……そう書かれている。
読後、五分間も錬次は頭を唸らせて、更に放課後になってからの三〇分も今の状態が続いているのだから、元々活字が苦手な錬次の現代社会の評定は五段階評価の内の二しか取れていないのは一目瞭然なのだった。
更に言うと、錬次は『雨中の復讐者』を読んだはしたが、会話文だけを読み、字の文を読まないまま結末まで行ったのが主な原因。
だからだろう、解りきっていない本の読書感想文でこんなにも時間が掛かっているのは。
筆と時間の経過が遅いことが錬次の集中力を欠いていることは目に見えている。だから錬次の気持ちはこの学校に通う生徒たち皆が痛いほど理解をしているが、それを乗り越えられなければ、進学校に籍を置いている意味がないことも理解していた。
ただ、皆は出来て、錬次は出来ていない。それは優劣以外のなにでもない事実なのだった。
「漫画なら茶々と終わらせられるのに……」
悪態をつくことで漸く休憩を挟もうと判断した錬次は生徒玄関にある自動販売機で何か飲もうとペンを置き、立ち上がる。
ガタッと引かれた椅子が教室に響き、いつの間にか運動部の声も聞こえなくなっていた。
そのことに漸く気づいた錬次は机の間を行き交い、三階の教室からグラウンドを見下ろした。
沈みかけている太陽が錬次の観る景色をオレンジ色に染め、運動部の影が長く伸びているのが分かる。
「なんだ。いるじゃん」
何故か、ホッと肩で息をした錬次は翻って飲み物を買うために教室を出ることにした。




