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三題噺もどき5

泡

作者: 狐彪
掲載日:2026/09/30

三題噺もどき―きゅうひゃくよんじゅうご。

 




 ぱちん。


 と、目の前でしゃぼん玉が弾けた。

 あぁ、いや、別に。

 しゃぼん玉で遊んでいたわけではなく。

「……」

 休み時間に、トイレに行きたくなって。

 まぁ、当然行くのだけど。

 今日は珍しく人が少なくて、ゆっくりとできた。

「……」

 それのせいか何か分からないが。

 ぼうっとしたまま、手を洗っていて。

「……」

 気付いたら、勝手にしゃぼん玉ができていたらしく。

 それがふわふわと手元から浮かび上がってきて。

 わざわざ見せつけるように目の前で消えた。

「……」

 ふと思い出したのは、誰もが知るような童話。

 海の世界に住むお姫様が、陸の世界に住む王子様に恋をする話。

 美しい声を失ってまでも、恋をしたその人に会いに行った。

 結果、泡になって消えた哀れなお姫様。

「……」

 あれは、泡か。

 しゃぼん玉とはまた違うけれど。

 恋に生きて恋に死ぬ……だれもが嫉妬してしまいそうなほどロマンチックな人生だ。

 いや、そんな訳はないか。今時、そんな駆け落ちみたいな、そんな人生を棒に振りかねないことを理想とする人なんて、あまりいなさそうだ。

「……」

 誰もが、安定を求めて。安心を求めて。安寧を求めて。

 波風を立てることを嫌い。荒波に揉まれることを嫌い。

 他の誰かを妬みながら。周りに流されて。

 気付けば、自分なんてものはなくなって。

「……、」

 人が増えてきた。

 というか私はいつまでここに居るんだ。

 さっさと手を洗い終えて教室に戻ればいいモノを。

「……」

 微妙に残っていた泡を洗いながし、軽く髪を整える。

 そんな整えるほど長くはないが、所々跳ねているので。

 人が少なかったのは、他のクラスの終わりが遅かったから……というか、私のクラスが早めに終わったからだ。そういえばそう。

「……」

 あの子にもらった、ハンカチをポケットから取り出し、手をふく。

 ミニタオルという方が正確なんだけど、可愛いキャラクターのやつ。

 お気に入りだ。あの子にもらったし。

「……」

 手を拭きながら廊下に出ると、何やらガヤガヤとしている。

 休み時間だし当たり前なんだけど、それ以上にうるさいというか。

 音が多い。騒がしいことに変わりはないのだけど、人のざわめきとは違う音が混じっている。

「……、」

 何かと思い、廊下に立つ生徒たちが見ている先を見れば。

 今日も当然のように雨が降っていた。

 授業が終わる直前、までは晴れていたような気がするんだけど……どうせこの雨もすぐ止むだろう。たいした問題ではない。

「……」

 休み時間というのは、短くて窮屈だ。

 あの子のところにも行けないし、早く昼休みにならないだろうか。

 今日この時間は確か……体育かな。

「――!」

 思いだした矢先に、後ろから声がかかる。

 それはもちろん、あの子の声で。

 私を呼び捨てにするのは、そもそもあの子しかいない。

「体育外だったの?」

「そーギリ濡れたw」

 体育服から制服に着替えてはいるものの、ポニーテールに結ばれた髪は所々濡れている。

 タオルで拭いたんだろうけど、直前だったのかどこかしっとりとしている。

 綺麗な黒髪をしているから、目立つんだろうか。

「どんまいw」

「ホント最悪w」

 そのまま、あの子の教室まで一緒に行って。

 男子生徒が着替え終わるまで廊下で一緒に待っていた。

 チャイムが鳴るギリギリでまた昼休みにと。

「……」

 後2時間。

 なんとか頑張れそうだ。











 お題:しゃぼん玉・嫉妬・雨

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