平凡な俺と非凡な彼女
昼休みの教室。
窓から差し込む光。
笑い声。
友達同士の会話。
その中心には、いつも彼女がいた。
明るい声。
自然な笑顔。
彼女がいるだけで、空気が変わる。
場が和む。
皆が笑う。
話題が広がる。
人が集まる。
まるで太陽みたいな人だった。
そして
その教室の隅に、俺はいた。
まるで月だ。静かな月の明かり
誰とも話さず、
机で静かに弁当を食べる。
俺がいると空気が変わる。
場が静まる。
会話が止まる。
人が離れる。
友達もいない。
まるで空気のような存在。
いや、
空気よりも目立たないかもしれない。
そんなある日だった。
俺の机の前に影が落ちた。
顔を上げる。
そこには
彼女が立っていた。
教室の中心にいるはずの彼女が。
「……あの」
少し首を傾げて言った。
「俺さん、ですよね?」
「……はい」
「いつも、一人ですね」
悪気のない言葉だった。
でも胸に刺さる。
俺は苦笑いした。
「ええ……まあ」
「あなたと違って、俺は友達いないので」
すると彼女は、
少し驚いた顔をした。
そして
笑った。
「なら」
彼女は言った。
「私と友達になりましょう」
俺は思わず首を振った。
「いやいや」
「あなたと俺じゃ……」
「不釣り合いというか」
「住む世界が違うというか」
彼女は少し考えるようにしてから言った。
「だから、です」
「え?」
「だから、友達になりたいんです」
「俺さんは」
少し照れたように笑う。
「私の理想なんです」
「……は?」
今度は本気で意味がわからなかった。
「いやいや」
「あなたは、眩しいくらい」
「俺が持ってないものだらけなのに」
彼女はゆっくり首を横に振った。
「いいえ」
「俺さんこそ」
「私が持ってないものを、沢山持ってるんですよ」
「……例えば?」
彼女は少し考えてから言った。
「静かに人の話を聞くところ」
「無理に目立とうとしないところ」
「優しそうなところ」
「あと」
少し笑う。
「一人でも平気そうなところ」
「それ、長所ですか?」
「長所です」
きっぱり言った。
「人って」
「正反対でもいいんです」
「正反対だから」
「魅力になるんです」
俺はしばらく黙っていた。
よく分からない理論だった。
でも
なぜか
説得されてしまった。
それが、
俺と彼女の
最初の会話だった。
それから
昼休みは二人で話すようになり。
帰り道も一緒になり。
気づけば、
彼女の周りの友達も
俺に普通に話しかけるようになっていた。
そして、数年後。
「ねえ」
彼女が言った。
「俺さん」
「はい」
「結婚しませんか?」
俺は少し笑った。
「相変わらず唐突ですね」
「だって」
彼女は笑った。
「私たち」
「正反対でしょ?」
「だから」
「きっと、うまくいくんです」
こうして。
平凡な俺と
非凡な彼女の物語は、
恋人を越えて
夫婦になった。
そして今日も、
彼女は太陽みたいに笑っている。
その隣で空気みたいな俺が、
少しだけ誇らしく立っている。
【平凡な俺と非凡な彼女】
完




