第9話 女性総理誕生?
「おおっ、やってる、やってる!」
タカシが茶の間のテレビを観ながら声をあげた。
2025年10月21日(火)午後1時半、たまたま用事があって有給休暇をとったのだったけれど、それが午前中で終わり、午後は家にいた。
遅い昼食のカップ焼きそばをひとりで食べながらテレビのスイッチを入れると、まさに首相指名選挙の実況中継。その投票場面が映し出された。
背広の後ろ姿が10数人、投票箱を開けて中身を確認している。
タカシの声で、昼寝をしていたカニの長老が目を覚ました。
「いよいよ日本も変わるか?」
タカシの独り言が続く。
「民主主義が進んでいるアメリカでも起きなかったことが日本で先に起きるなんて、思ってもいなかったよな。
うちの役場も、そろそろ女性の課長が出てこないといけないってことだな、、、」
日本の男女平等に関する国際的な評価は100位以下と極めて低く、先進国の中では最下位といってもいい。
女性が国王の国はいくつもあるし、女性が大統領の国もいくつもあるのに、日本の天皇は男性と決まっているし、歴代内閣でも女性閣僚はこれまで数人に留まってきたのだ。
NHKの生放送が続く。
午後1時48分、得票数を事務総長が読み上げた。
「高市早苗くん、237」
「おー」と歓声。
投票総数465、過半数が233なので、投票1回目で決定である。
「日本は、変わるんでしょうか?」
長老の後ろからタロウが声をかけた。
「ああ、いたのか、、、」
タロウが長老の脇に並び、一緒に茶の間のテレビに目を向ける。
カップ焼きそばを食べ終わったタカシが、爪楊枝で歯の間をほじくっていた。
「昭和100年、戦後80年。ペヤングソースやきそば発売50年、地方分権一括法施行25年。
タロウ。時代の歩みはとてもゆっくりじゃが、気がつけば、昨日が過去になっているということじゃな」
遠くを見つめながら、長老がつぶやく。
タロウが顔をあげた。
「ぼくは、この日、この時に立ち会えたことを誇りに思います。
I have a dream.
スジコちゃんや、マメコちゃん、銀子ちゃん、その娘たちが、いつか、男子と対等に机を並べ、性別ではなく、もっている能力と可能性だけによって選ばれる日がくることを願っています」
右手の拳を固く握って言った。
脇の長老はタロウの話に上の空で、イヤホンに耳を傾けている。
「長老、聞いてますか? 何してんですか?」
「いや、ちょっと、株価が気になっての」
あわててラジオを背中の後ろに隠す。
「長老、株やってんですか?」
「ほれ、高市さんが総理になると、東証株価50,000円って言っとったじゃろ? あと少し」
頬を膨らませるタロウ。
「長老、もっと真面目に考えてくださいよ!」
「おお、アイム・ソーリ!」(終わり)




