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第7話 長老、YourTubeを見る!

「えっ? 長老、YourTubeを見たことあるんですか?」

 カニのタロウが目を大きくして聞いた。

 その声に惹きつけられて、磯の仲間たちが続々と集まる。

 夕食後の、いつもの井戸端会議だ。

「コズエさんが2階に上がって寝たあと、夜の10時半頃から、茶の間に残ったタカシがラップトップPCを取り出してこっそり1人で観てるのをここから見たことがある」

 タカシはこの青木家の世帯主でコズエさんは妻だが、なぜか皆、この水槽のオーナーのことは呼び捨てにするのに、妻はさん付けなのだ。

 確かに、長老が言うように、各部屋を隔てる(ふすま)が2枚開いていれば、玄関に置かれたこの水槽からも茶の間の炬燵テーブルの上を見通すことができた。

「長老、目がイイですねぇ、、、」

「高齢者講習は、裸眼でパスじゃ」

 皆、目が点。

「いや、たとえば、じゃよ」

「ただの遠視じゃねぇのか?」

 水槽のガラス壁に貼り付いたダボハゼのヨッシーが突っ込むと、ハサミで頭を掻く。


「で、どんな動画を観てるんですか?」

 イソスジエビのスジコちゃんが小さな声で聞いた。

「最初にウクライナ戦争の戦況動画を観たあと、次によく観てるのは、ヨーロッパで活躍中の女子サッカーの日本人選手・長谷川弓さん。

 それに、車やテントでソロキャンプしてる女の子の動画じゃな」

 梅干イソギンチャクの銀子ちゃんが、遠くから参加する。

「わたしも、キャンピングカーには憧れます。泊まりで、自由にあっちこっち、いろんな海や山に行ってみたい。だって、外の世界、知らないんですから」

 揺れる触手に合わせて、妄想に目が泳いでいる。銀子ちゃんはこの水槽で生まれたから、確かに外の世界を全く知らない。

「キャンプかぁ、、。焚き火に腹鰭(はらびれ)をかざしながら、熱燗をキューっと一杯!

 いいっすね、今度、タカシに言って連れてってもらいやしょうよ、長老!」

 目を細めて言うと、うなずく長老。

「わしには良くわからんが、若い年頃の女子が1人でキャンプするのはどうしてなんじゃろうね?」

「いつもきゃあきゃあ騒いでばかりいるように見える女の子でも、ひとりになりたい時があるのよ」

「スジコちゃんにも、そんなときがあるんかいの?」

 長老が不思議そうに聞く。

「ここには、プライバシーがありませんからね」

 仰け反るカニのタロウ。

「プライバシーか、、、。考えたこともありませんでした」

「おめさんは、物心つく前からこの水槽だから、タカシやハコちゃんからいつも見られているのが当たり前なんじゃな。さて、どうしたものか、、、」

 両腕を組んで考え込む長老。

「ソロキャンプのテントみたいに、ちょっとした屋根と壁があればOKですよね?」

 うなづくスジコちゃん。

「わかりました。ぼくが小石を積んで、水槽の隅にソロテント風の小屋でも作りましょう!」

「やったー!」

 タロウに抱きつくスジコちゃん。


 しばらくすると、底に敷かれた小石を集めて、タロウが水槽の左隅に石造りの小屋を作った。

 スジコちゃんが入るともう1人くらいしか入れない小さな小屋だったけれど、彼女は大感激した。

「ありがとう!」

 もう一度、タロウに抱きつく。

「今度、中で一緒にお昼ごはん食べましょう!」

「うわぁ、感激です!」

 顔を赤くするタロウ。

「おいおい、ちょっと、そりゃないんじゃねぇのか?」

 頬を膨らませるヨッシー。

「危ないから、あなたは入れてあげない!」

 笑いながらスジコちゃんが言った。(終わり)

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