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第13話 新聞部、始動!

「みんな、集まって!」

 朝食のあと、カニのタロウが水槽の一同を呼び集めた。


「何事かの?」

 腰をさすりながらカニの長老が車座の真ん中に座る。

「二人とも、もっと前に出て」

 タロウに促されると、梅干イソギンチャクの銀太くんと銀子ちゃんがイソイソと前に出た。

「実は、このたび、この水槽に新聞部を作りました!」

 高らかにタロウが叫ぶと、一同から大きな拍手。

「ほほぅ。部員はだれじゃの?」

「ぼくたちです」

 銀太くんと銀子ちゃんが更に前に出た。

 タロウが解説する。

「ちょっと考えてたんです。銀太くんと銀子ちゃんの出番がないな、と。

 それに、毎週毎週いろんな出来事が起こるじゃないですか? それを皆で情報共有できたらなと、思ったんです」

「例えば?」

 ダボハゼのヨッシーが突っ込む。

「世界のニュースから日本の話題、この青木家の事件から水槽内の出来事まで、日々いろいろなことが起きます。

 例えば、サナエ・ソーリが変なこと言ってチャイナが怒ったりしてますよね?

 身近な例では、週末の11月22日は「いい夫婦の日」だし、来週の29日はタカシとコズエさんの結婚記念日だそうですよ?

 それに、今週末は3連休で、紅葉の季節です。空気も美味しいし、食欲の秋ですよね」

 イソスジエビのスジコちゃんが大きくうなずく。

「みんなで紅葉狩りに行きたいわ」

 さらにタロウが続けた。

「聞くところによると、タカシがサックス教室に通い始めたとか、実はコズエさんが小説を書いていたとか」

「え~!」

 一同がのけぞった。


「なんでも、渚橋デニースとかいうペンネームで投稿サイトのトールズにアップしているらしいです」

「どっかで聞いた名前だな、、、」

 長老が顎に指を当てる。

「それ、昔、逗子の渚橋交差点にデニースがあったんで、それをもじったんじゃねぇの?」

 ヨッシーが目を大きくして言った。

「横須賀市の博物館のハナシ学芸員が葉山の御用邸にいる陛下に呼ばれて御進講に行くときに、オレも水槽に入れられて一緒に車で走ったけど、その帰りに寄ったことがある。

 葉山からちょい先の渚橋交差点の脇にデニースがあって、隣りが海のテラス席が人気だったよ。なくなっちまったけど」

 うなづくタロウ。

「どうも、タカシの目を盗んで、そこでシコシコ書いていたらしいです。

 なんと、四国松山市主催の『坊ちゃん文学賞』に応募したんだそうですよ。応募総数9,900作。国内だけじゃなくて世界14か国から応募があったそうです。結果発表は来年1月25日」

「それは待ち遠しい。コズエさんの意外な一面じゃの。で?」

 長老に話を戻されて、われに返るタロウ。

「あ、それでね、そんなちょっとしたことを週刊新聞にして、いつも長老が背中を当てているこの平たい石に書こうと思うんです」

 水槽の中にはカニが甲羅干しをできるように石が水面の上まで積まれているけれど、その基礎になっている石に平たい一面があった。

「わかった。寄りかかる石を別な石にしよう」

 寂しそうに長老が言うと、頭をかくタロウ。

「それで、これからは、この銀太くんと銀子ちゃんがいろいろと取材をすることがありますので、その節にはご協力をよろしくお願いします。個人情報は大切にしますから」

 二人が揃って頭を下げた。


 ふと、視線に気付いた皆がガラス壁の外に目をやると、ノートを左手に、右手に鉛筆を持ったコズエさんがジーっと中を見つめていた。(終わり)

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