第11話 ドジャーズ優勝!
「文化の日って、晴れの特異日ですね!」
開いた玄関の扉の向こうに広がる青空を見ながら、カニのタロウが背伸びをした。
「うん」
そう言うと、カニの長老も並んで腰を伸ばす。
「昔昔、ユーキ・チホさん演じるお婆さんがドラマの中でやってたヘンテコリンな体操、当時は笑いながら見てたが、それを今、自分がやっていることを考えると、ユーキ・チホさんって女優は、スゴイ女優じゃったんじゃな。
当時31歳の若さだったという」
ヒキガエルが前屈して両腕を背中の後ろに跳ね上げるような独特の体操だけれど、実際にやってみると体がシャキッとする。
「長老、いったい何歳なんですか?」
びっくりしてタロウが振り返る。
「190歳」
「チューバッカですか?」
「いや、チューが好きな、ただの馬っ鹿」
「それですよ。それ。そんなことばっかり言ってるから不信任決議案が出されるんだよ」
ダボハゼのヨッシーが、あくびをしながら水槽のガラス壁を寄ってくる。
「伊東市議会じゃあるめーし。
そんな事言うが、おめさんが必ず勝つと言うておった反省タイガースだって、敗けたじゃろ?」
頬を膨らませて長老が言うと、顔を真っ赤にして言い返した。
「阪神タイガース! 反省するのは、長老!
資本金の差だよ。相手はソフトバンクなんだからな。悔しいったら、ほどがない。
おれの親戚が阪神甲子園球場のすぐ近くに住んでるんだけど、一家揃って大の阪神ファンで、相当に悔しかったと思うよ」
長老が両腕を振ってなだめる。
「まあまあ、気持ちは良くわかる。監督の経験値の差という者もおれば、選手層の厚みの差という者もおる。どちらにしても、結果が全てじゃ」
「それにしてもドジャーズはすごかったですね?」
ここでタロウが話題を変えた。
「ショーヘイさん、ヨシノブさん、ローキさん。日本人が3人も大活躍して、とてもスゴかったです」
「よく知ってるじゃねぇか?」
「タカシが、夜パソコンでYourTube見てましたから。つい、ぼくもつい見ちゃいました」
頭をかくタロウ。
「こんな時代が来るなんて、おれも思ってなかった」
うなずくヨッシー。
「ショーヘイに続く二刀流も出て来たって言うじゃねぇか。
ホームラン王の王貞治だって高校時代はピッチャーだったし、だいたい野球の上手い子って、4番でピッチャーだよな」
「時代は、変わるのよね」
水槽の左隅にある石造りの小屋から出て来たイソスジエビのスジコちゃんが言った。
「やっぱり、最初に扉を開いた人がエライ。
閉じている扉はあっちこっちにあるから、それを力いっぱい押して開いていかないとね」
「『叩けよ、さらば開かれん。求めよ、さらば与えられん』じゃな?」
長老が振り返って言う。
「誰の言葉ですか?」とタロウ。
「聖書の中の言葉じゃ」
皆、目が点。
「叩いたからというて必ず開かれるものではないし、求めたからというて必ず与えられるものでもないが、やはり、一番大切なことは、自分から叩く、自分から求め始めることじゃな。
巣の中のツバメの子供のようにただ口を開いて待っているだけでは、餌を食べることはできん」
うなずく一同。
そこへ、タカシがやってきて、水槽のガラス蓋を開けると、餌のオキアミを播きはじめた。
それに合わせて、揃って水面に向かって大きく口を開ける一同。(終わり)




