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課金ゲーで推しを育てるより、隣の社畜を「腸活」でイケメンにする方がコスパいい件  作者: 東雲みどり
第6章: 『第2部(続編):最強の遺伝子育成論』

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第79話:お受験という名の課金ゲーム

 エマが三歳になり、周囲の空気が一変した。

 これまで「どこのオムツ使ってる?」だったママ友たちの会話が、**「どこのお教室(塾)通ってる?」**に変わったのだ。

「えっ、九条さん、まだ何もしてないの? 三歳からじゃ遅いくらいよ!」

「うちは一歳から右脳開発教室に通わせてるわ。英語の聞き流しはマストよね」

 公園のベンチで、私は焦燥感(と、少しの引け目)を感じていた。

 右脳開発? フラッシュカード?

 私の栄養管理と筋トレ理論は完璧だが、「早期教育」というジャンルはノーマークだった。

 帰宅後、私は緊急家族会議を招集した。

「蓮、私たちは出遅れているかもしれない。世間ではすでに『お受験戦争』が始まっているわ」

「お受験か……。ついにそのフェーズに来たか」

 蓮は眉間に皺を寄せ、PCを開いた。

 画面には、都内の有名幼稚園のリストと、驚愕の学費、そして「倍率」が表示されている。

「教育とは、人的資本への投資だ」

 私はホワイトボードに書き殴った。

「エマのポテンシャル(遺伝子)は最強よ。でも、それを開花させるには環境(土壌)が必要。確率論で言えば、高学歴・高収入の親が集まる環境に身を置くことが、将来の成功確率を高める……というのは否定できない事実」

「そうだね。統計データでも、幼児期の教育投資収益率(ROI)は、成人後のそれより圧倒的に高いというヘックマンの論文がある」

 蓮も同意した。

 私たちは顔を見合わせた。

 私たちは「ハイスペック信者」だ。娘に最高のもの(=ブランド幼稚園)を与えたいと思うのは、自然な流れだった。

「よし、プロジェクト『エマ・アカデミア』始動だ」

「目標は、都内最難関の『聖・マリアンナ幼稚園(仮名)』。徹底的にリサーチして、合格という成果を取りに行くわよ」

 私たちは意気込んだ。

 それが、大きな間違いの始まりだとも知らずに。

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