第78話:3歳の誕生日と、サプライズ
そして迎えた、三歳の誕生日。
「魔の二歳児」と言われたイヤイヤ期も、最近は少し落ち着いてきた。
言葉でのコミュニケーションが成立するようになり、理不尽な癇癪も減った。
今夜のパーティーメニューは、私の自信作だ。
「砂糖不使用・米粉と豆乳クリームのバースデーケーキ」。
イチゴをふんだんに使い、見た目は豪華だが、中身は超ヘルシー。
「ハッピバースデートゥーユー♪」
ロウソクの火を、エマが「ふーっ」と吹き消す。
三本。たった三本だけど、私たちにとっては激動の三年間だった。
「エマちゃん、おめでとう。生まれてきてくれてありがとう」
「パパもママも、エマが大好きだよ」
私たちがプレゼント(木製の知育パズル)を渡すと、エマはもじもじしながら、後ろに隠していた画用紙を取り出した。
「……パパ、ママ、どーぞ」
それは、エマが描いた似顔絵だった。
大きな丸が二つ。ぐしゃぐしゃの線だけど、ちゃんと口が笑っている。
そして、蓮が書いたであろう文字をなぞって、こう書いてあった。
『パパ、ママ、ありがとう』
「……っ!」
蓮が号泣した。もう、滝のような涙だ。
私も、視界が滲んでケーキが見えない。
「いつの間に……」
「昨日、保育園で一生懸命描いてたんだよ」
蓮が鼻をすすりながら言った。
三年前、泣くことしかできなかった小さな命が、今、感謝を伝えてくれている。
与えているつもりだった。育てているつもりだった。
でも、一番多くのものをもらっていたのは、私たちの方だったんだ。
「……美味しいね、ケーキ」
「うん、しょっぱい味がするけどね」
涙混じりのケーキを食べながら、私たちは確信した。
育児は大変だ。コスパなんて計算できないほどコストがかかる。
でも、この瞬間のプライスレスな感情だけで、全ての元は取れるのだと。
エマ、三歳。
最強の遺伝子は、心も順調に育っている。
……さて。
一難去ってまた一難。
そろそろ次のステージ、**「幼稚園受験・お受験戦争」**の足音が近づいていることに、私たちはまだ気づいていなかった。
(続く)




