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課金ゲーで推しを育てるより、隣の社畜を「腸活」でイケメンにする方がコスパいい件  作者: 東雲みどり
第6章: 『第2部(続編):最強の遺伝子育成論』

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第73話:イヤイヤ期の到来(第一次反抗期)

 エマ、二歳。

 あんなに天使だった我が子は、破壊神へと進化を遂げた。

 通称、「イヤイヤ期」。

 朝の食卓にて。

「エマちゃん、バナナだよ〜。皮むいてあげるね」

 蓮がバナナの皮をむき、半分に折って手渡した。

 その瞬間。

 エマの表情が絶望に染まった。

「あぁぁぁぁぁ!! オレタァァァ!!(折れた)」

「えっ? うん、食べやすいように折ったんだよ?」

「イヤァァァ! ナオシテェェェ!!」

 エマは床に転がり、バナナの残骸を指差して泣き叫んだ。

 この世の終わりのような悲嘆ぶりだ。

「……蓮、どうするのよ。修復不可能よ」

「ま、待って。物理的には同じ質量だ」

 蓮は必死に説得を試みる。

「エマ、見てごらん。折れても味は変わらないよ? 成分分析しても同じグルコースとフルクトースだよ?」

「イヤァァァ! モトニモドシテェェェ!!」

 論理ロジックが通じない。

 私はため息をつき、新しいバナナを一本、皮付きのまま差し出した。

「はい、新しいの」

「……イヤッ! サッキノガ、イイ!!」

 理不尽。

 着替えも「イヤ」、お風呂も「イヤ」、寝るのも「イヤ」。

 全てにおいて拒否権を行使してくる。

 ある夜、疲れ果てた私は、床で暴れるエマ(パジャマ拒否中)を見下ろして呟いた。

「……これは、自我の芽生えね。前頭葉が発達している証拠。彼女は今、自分と世界との境界線を確認しているのよ」

「そうだね、成長の証だね……」

 蓮が遠い目で同意する。

 でも、成長だとわかっていても、毎日一〇〇回「イヤ」と言われ続けると、こちらのメンタルが削れていく。

「パパ、キライ! アッチイッテ!」

 エマの一撃が蓮に刺さる。

 蓮はショックで膝から崩れ落ちた。

「……美玲、交代してくれ。僕のHPはもうゼロだ」

「甘えるな。私のHPなんてマイナスよ」

 私たちはゾンビのような顔でハイタッチし、交代で暴君のご機嫌取りに向かった。

 最強の遺伝子は、自己主張も最強だったのだ。

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