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課金ゲーで推しを育てるより、隣の社畜を「腸活」でイケメンにする方がコスパいい件  作者: 東雲みどり
第6章: 『第2部(続編):最強の遺伝子育成論』

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第70話:保育園の洗礼(免疫獲得編)

 復職初日。

 私は気合を入れて、久しぶりにハイヒールを履き、完璧なメイクで出社した。

 エマを保育園に預ける時の涙は、駅のトイレで拭き取った。さあ、バリバリ働くわよ。

 ――午前一〇時三〇分。

 デスクのスマホが震えた。画面には「保育園」の文字。

(……え? まさか。預けてまだ二時間よ?)

「はい、もしもし……」

『あ、エマちゃんのお母さんですか? エマちゃん、今お熱が三八・五度ありまして……すぐにお迎えお願いできますか?』

 「保育園の洗礼」。

 噂には聞いていたが、これほど即効性があるとは。

 私は上司に頭を下げ、PCを閉じてダッシュで退社した。

 その日から、地獄のループが始まった。

 突発性発疹。ヘルパンギーナ。手足口病。そしてRSウイルス。

 保育園に蔓延する感染症の「四天王」が、次々とエマに襲いかかった。

「……解せぬ」

 深夜、高熱でうなされるエマの看病をしながら、私は体温計を睨みつけた。

「食事は完璧。ビタミンDも亜鉛も摂取させている。腸内環境も整えている。なのに、なぜ一週間も保育園に通えないの……?」

 私の栄養学が、ウイルスという見えない敵に敗北し続けている。

 看病疲れでボロボロの私に、蓮がポカリスエットと冷えピタを持ってきてくれた。

「美玲、自分を責めないで。これは『敗北』じゃない。『アップデート』だよ」

「アップデート?」

「エマの身体は今、未知のウイルスというデータをインストールして、免疫システムを構築している最中なんだ。この熱は、システムが正常に稼働している証拠だよ」

 ……なるほど。

 エンジニアらしい慰め方だ。でも、不思議と納得できた。

 エマは弱いんじゃない。戦って、強くなろうとしているのだ。

「……わかったわ。じゃあ私は、システム稼働に必要なリソース(水分と愛情)を補給し続けるわ」

「うん。僕も明日は有休取ったから、交代で守ろう」

 私たちは「お迎えコール」に怯えながらも、有休と病児保育を駆使して、このデスマーチを乗り越えていった。

 冷蔵庫のカレンダーが、小児科の予約シールで埋め尽くされていく。それは、エマが強くなっている証でもあった。

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