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課金ゲーで推しを育てるより、隣の社畜を「腸活」でイケメンにする方がコスパいい件  作者: 東雲みどり
第1章:深夜のゴミ捨て場と、瀕死の原石(全10話)

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第7話:深夜の問診(カウンセリング)

二杯目の水を飲み干した一ノ瀬に、私はソファに座るよう促した。

 彼は恐縮しながら、高級イタリア製レザーソファの端っこに、ちょこんと腰掛けた。まるで叱られるのを待つ小学生だ。

「さて、一ノ瀬さん」

 私は腕組みをして、彼を見下ろした。

「あなたの身体ハードウェアのスペック確認をさせてもらうわ。正直に答えなさい」

「は、はい……」

「職業は?」

「システムエンジニアです。金融系の基幹システムの開発をしていて……」

「勤務時間は?」

「定時は九時〜一八時ですけど、ここ数ヶ月は終電帰りか、会社に泊まり込みですね。月残業は……一〇〇時間は超えてるかと」

 私は眉間のシワを揉みほぐした。

 過労死ラインの突破など、もはや通過儀礼と言わんばかりのブラック環境だ。

「食事は?」

「食べる時間がないので、デスクで片手で食べられるものばかりです。おにぎり、パン、ゼリー飲料……あ、あと夜食にカップ麺」

「最悪ね。糖質と添加物のパレードじゃない」

 私は溜息交じりに続けた。

「睡眠は?」

「机で仮眠を二、三時間……」

「休日は?」

「死んだように寝てます。起きたら夕方で、自己嫌悪でまた寝る……みたいな」

 診断完了。

 私の脳内で、彼の「生体ステータス」が表示される。

 【一ノ瀬 蓮(30)】

 * 栄養状態: 飢餓(カロリー過多・栄養失調)

 * 自律神経: 崩壊(交感神経暴走中)

 * 腸内環境: 腐敗(善玉菌全滅)

 * ホルモンバランス: 枯渇(テストステロン低下、コルチゾール過多)

 これでは、どんなに元の顔立ちが良くても、イケメンとして機能するわけがない。

 高性能なスーパーコンピューターを、排熱もせずにホコリまみれの倉庫でフル稼働させているようなものだ。いつ発火してもおかしくない。

「あの……九条さん?」

 黙り込んだ私を、一ノ瀬が不安そうに見上げている。

「一ノ瀬さん。あなたは今、『過労』だと思ってるでしょうけど、半分は『栄養失調』よ」

「えっ、こんなにカロリー摂ってるのに?」

「カロリー(熱量)はあっても、それを燃やすための『栄養ビタミン・ミネラル』がないの。今のあなたは、ボロボロの家を修理する大工エネルギーはいるけど、木材(アミノ酸)やミネラルが届いていない現場監督みたいなものよ」

 一ノ瀬はハッとした顔をした。

 システムエンジニアである彼には、現場の例えが刺さったらしい。

「……資材不足の現場……なのに納期だけが迫ってくる……」

「そう。だから現場監督(あなたの身体)は、自分の家(筋肉や肌)を解体して資材にするしかない。あなたが痩せているのに締まりがなく、肌がボロボロなのは、自分の身を削って生きているからよ(カタボリック)」

 一ノ瀬の顔色が、恐怖で歪んだ。

 ようやく事態の深刻さを理解したようだ。

「ど、どうすれば……辞めるわけにもいかないし……」

「資材を搬入すればいいのよ。それも、最高品質のものをね」

 私はニヤリと笑った。

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