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課金ゲーで推しを育てるより、隣の社畜を「腸活」でイケメンにする方がコスパいい件  作者: 東雲みどり
第6章: 『第2部(続編):最強の遺伝子育成論』

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第67話:公園デビューという名の戦場

 生後五ヶ月。

 気候も良くなり、私はエマを連れて「公園デビュー」を画策した。

 装備は完璧だ。

 ベビーカーは、ドイツ製の堅牢なフレームとエアタイヤを持つ最高級モデル(一ノ瀬が「サスペンション性能が段違いだ」と即決した)。

 私の服装は、動きやすくも洗練されたアスレジャースタイル。

 紫外線対策も万全。

 近所の大きな公園に到着すると、そこにはすでに「コロニー」が形成されていた。

 砂場の周りにたむロする、五、六人のママ集団。

 通称、キラキラママ界隈だ。

(……遭遇したわね。敵性勢力か、友好的な部族か……)

 私がベンチでエマにミルクを飲ませようとした時、リーダー格らしきブランド服のママが近づいてきた。

「あら〜、可愛い赤ちゃん! 何ヶ月ですか?」

「五ヶ月です」

「五ヶ月! じゃあまだ母乳? 完母(完全母乳)だと夜泣き大変ですよね〜」

 出た。**「母乳マウント」**のジャブだ。

 私が哺乳瓶を持っているのを見て、あえて聞いてきている。

「いえ、うちは混合です。今はミルクの時間で」

「あら、ミルクなの? やっぱり母乳の方が免疫つくし、愛着形成にもいいって言うじゃない? 私なんて三人とも完母で育てたから、もうおっぱいボロボロで〜」

 周囲の取り巻きママたちが「すご〜い!」「尊敬しますぅ!」と合いの手を入れる。

 なるほど。ここでは「自然派・自己犠牲」こそが正義ジャスティスらしい。

 だが、相手が悪かった。

「おっしゃる通り、初乳に含まれるIgA抗体は重要ですね」

 私は哺乳瓶を振りながら、真顔で切り返した。

「ですが、生後三ヶ月を過ぎれば母体からの移行免疫は減少します。対して、最近の粉ミルクはラクトフェリンやヌクレオチドが配合され、母乳不足による栄養欠損を完璧に補えます。さらに、父親が授乳することで、パパへの愛着形成も促進されるというエビデンスもありますよ」

「は、はい……?」

 リーダーママが目を白黒させた。

 私はさらに畳み掛ける。

「何より、母親のストレスホルモン(コルチゾール)が母乳に混入するリスクを考えれば、ママが笑顔でいられるミルク育児は、非常に合理的で愛情深い選択だと思いませんか?」

 私はニッコリと、営業用の「最強の笑顔」を向けた。

 沈黙。

 取り巻きママの一人が、恐る恐る口を開いた。

「あ、あの……そのベビーカー、ドイツの〇〇ですよね? すごい、初めて見ました……」

「ええ。サスペンション性能による脳への振動軽減率で選びました。夫のこだわりで」

 空気が変わった。

 マウントを取ろうとした相手が、実は「理論武装したガチ勢」だと悟った瞬間だった。

「す、すごーい……勉強になりますぅ……」

 コロニーは解散し、私は静かなベンチを確保した。

 エマが哺乳瓶を飲み干し、満足げにゲップをする。

 ふふ。どんなマウントも、科学と論理の前には無力ね。

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