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第50話(最終回):推しを育てるのは、やっぱりコスパがいい
食後のコーヒー(カフェインレス)を飲みながら、私はふと、三年前のゴミ捨て場を思い出していた。
あの日、私が拾ったのは、ただの汚い隣人だった。
でも、その泥を落とし、磨き上げ、愛を注いだ結果、彼はかけがえのないパートナーになった。
画面の中の推しに課金するのも楽しい。
けれど。
「……美味しい?」
蓮が優しく微笑みかけてくる。
「ええ、最高よ」
目の前に、体温のある「推し」がいる。
私が作った料理を食べて笑い、私が悲しい時は抱きしめてくれて、共に歳を重ねていける存在。
彼への投資額(食費とサプリ代)なんて、この幸せに比べればタダみたいなものだ。
私は確信する。
**『課金ゲーで推しを育てるより、隣の社畜を「腸活」でイケメンにする方が、圧倒的にコスパがいい』**と。
「ねえ、蓮」
「ん?」
「愛してるわ」
「……ふふ、僕もだよ。美玲」
私たちは微笑み合い、穏やかな休日の朝を過ごす。
湿度六〇%、室温二四度。
そして、愛情濃度一〇〇%のこの部屋で。
私の「腸活育成計画」は、ハッピーエンドで幕を閉じた。
さて、今日の夕食は何にしようか。
大切な資産の健康を守るために、また腕を振るわなくては。
(完)




