第49話:数年後のビフォーアフター
――それから、三年後。
「美玲、朝ごはんできたよ!」
「はーい」
日曜日の朝。
日当たりの良いリビングに、香ばしい焼き魚と出汁の香りが漂っている。
キッチンに立っているのは、エプロン姿の一ノ瀬蓮――いや、私の夫だ。
三三歳になった彼は、渋みが加わり、以前にも増してイイ男になっていた。
昇進してプロジェクトマネージャーになった今でも、体型維持とスキンケアは欠かしていない。社内では「奇跡のイケオジ予備軍」と呼ばれているらしい。
「今日の味噌汁は、アサリと菜の花。旬の食材でデトックスだよ」
「さすが私の夫。わかってるじゃない」
私たちは向かい合って食卓を囲む。
私の肌も、三年前と変わらず――いや、幸せホルモン(オキシトシン)の効果で、以前よりもハリとツヤが増している。
私たちの生活は、少しだけ変化した。
私の美容ブログに、夫の「劇的ビフォーアフター」の写真を(顔を隠して)掲載したところ、とんでもない反響があったのだ。
今では夫婦で「腸活・美容セミナー」を開くこともある。
「ねえ蓮。来週のセミナーの資料、確認しておいてくれる?」
「了解。……あ、その前に」
蓮が身を乗り出し、私の頬についた米粒を取った。
そして、チュッと軽くキスをする。
「おはようのチュー、忘れてた」
「……もう。朝からやめてよ」
私は赤くなって彼を睨むが、彼は涼しい顔で味噌汁を啜っている。
かつて怯えていた社畜の面影は、もうどこにもない。
完全に、尻に敷かれているのは私の方かもしれない。




