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第48話:ツンデレの陥落
「……しょうがないわね」
私は溜息をつくフリをして、左手を差し出した。
「乗りかかった船よ。あなたのメンテナンス、死ぬまで引き受けてあげる」
一ノ瀬の顔が、ぱあっと輝いた。
彼は私の手を取り、震える指でリングを通した。
サイズはぴったりだった。いつの間に測ったのだろう。
「……ありがとう、美玲さん」
初めて呼ばれた名前に、心臓が跳ねた。
彼は私の手の甲に口づけを落とした。
その唇の熱さが、指先から全身に伝播していく。
「もう……ズルいわよ、あなた」
視界が滲む。
涙でメイクが崩れるのは嫌なのに、止まらない。
私は「管理者」としての仮面をかなぐり捨て、一人の泣き虫な女性として、彼に微笑みかけた。
「覚悟しなさいよ。私の管理は、これまで以上に厳しいんだから」
「望むところです。一生、あなたについていきます」
私たちは、夜景をバックに、契約書代わりのキスを交わした。
それは、どんな高級フレンチのデザートよりも甘く、とろけるような味がした。




