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課金ゲーで推しを育てるより、隣の社畜を「腸活」でイケメンにする方がコスパいい件  作者: 東雲みどり
第4章:バグ発生と、独占欲の暴走

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第40話:所有権の主張

「い、一ノ瀬! 起きろ! すごい美人が来てるぞ!」

 同僚に揺すられ、一ノ瀬がのっそりと顔を上げた。

 焦点の合わない目が、私を捉える。

「……く、九条……さん? 幻覚……?」

「幻覚じゃないわ。メンテナンスに来たの」

 私は彼のデスクの横に立ち、保温ジャーの蓋を開けた。

 高麗人参と鶏出汁の、濃厚でスパイシーな香りがフロア中に広がる。

 カップ麺の安っぽい匂いが、一瞬で駆逐された。

「飲みなさい。参鶏湯よ。疲労回復と免疫力アップの特効薬」

「あ……あぁ……」

 一ノ瀬は震える手でスプーンを受け取り、スープを口にした。

 その瞬間、彼の目に光が戻った。

「……っ、うまい……! 身体が、熱くなる……」

 そこへ、追いついてきた高橋さんが叫んだ。

「ちょっと! 勝手に入ってこないでください! 部外者は退去してください!」

「うるさいわね」

 私は振り返り、高橋さんを睨みつけた。

 そして、一ノ瀬のデスクに置かれていた「食べかけの激辛カップ麺」と「エナジードリンク」を指差した。

「あなたが彼に与えているのは、ただの覚醒剤代わりの『毒』よ。一時的に興奮させて、その後ボロ雑巾のように使い捨てる気?」

「なっ……みんな食べてるもん! 何が悪いのよ!」

「私は彼を一ヶ月かけて、最高の状態に仕上げたの。その資産を、あなたのエゴと無知で棄損するのは許さない」

 私は一ノ瀬の肩を抱き寄せた。

 彼は驚いて私を見上げる。

「彼は私の管理下にあるの。彼に触れていいのは、彼を正しくケアできる人間だけよ」

 フロアがどよめいた。

 これは事実上の「所有権宣言」だ。

 高橋さんは顔を真っ赤にして、言葉を詰まらせた。

 論理と、健康への執念と、そして何より「顔面の偏差値」において、勝負はついていた。

「……一ノ瀬さん」

 私は彼の耳元で囁いた。

「これを飲んだら、あと三時間で仕事を終わらせなさい。脳の血流は私が保証するわ。……終わったら、一緒に帰りましょう」

 一ノ瀬の顔が、一気に引き締まった。

 テストステロンと、愛のスープが全身を駆け巡る。

「……はい! やります! すぐ終わらせます!」

 彼は猛烈な勢いでキーボードを叩き始めた。

 その背中からは、先ほどまでの死の気配は消え、鬼神のようなオーラが立ち上っていた。

 私は腕組みをして、その様子を見守った。

 周りの社員たちが、私を拝むように見ている。

 高橋さんは、悔しそうにヒールを鳴らして去っていった。

 勝った。

 私は心の中でガッツポーズをした。

 でも、一番の勝利は……彼が「一緒に帰ろう」と言った時に見せた、あの子犬のような嬉しそうな顔だったかもしれない。

(第4章・完)

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