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課金ゲーで推しを育てるより、隣の社畜を「腸活」でイケメンにする方がコスパいい件  作者: 東雲みどり
第3章:外見の革命と、独占欲の芽生え

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29/102

第29話:管理者の焦燥

一九時。

 私はダイニングテーブルに並べたガパオライスを前に、スマホの画面を見つめていた。

『すみません、急遽会社の飲み会に参加することになりました。晩御飯、遅くなりますが必ず帰ってから食べます。本当にすみません』

 LINEの文字。

 私は小さく息を吐き、画面を閉じた。

「……別に、謝ることじゃないじゃない」

 独り言が、静かな部屋に響く。

 彼が飲み会に誘われるようになったのは、喜ばしいことだ。

 コミュニケーション能力が回復し、周囲に受け入れられている証拠だ。私のプロデュースが成功した証明でもある。

 本来なら、ワインを開けて祝杯を挙げるべき成果だ。

 なのに。

 なぜ、こんなにモヤモヤするのだろう。

 私はガパオライスにラップをかけ、冷蔵庫に入れた。

 一人の夕食。

 一ヶ月前までは当たり前だった光景が、今はひどく色褪せて見えた。

(……どんな店に行ってるのかしら)

(揚げ物なんて食べてないでしょうね)

(お酒はハイボールか赤ワインにしなさいよ)

(……隣には、誰が座ってるの?)

 思考が悪い方へ転がっていく。

 綺麗になった彼を、周りの女たちが放っておくはずがない。

 今まで私が手塩にかけて育てた、無添加で最高品質の「作品」が、ジャンクな空間で消費されている。

「……私のなのに」

 口をついて出た言葉に、私はハッとした。

 私の?

 違う。彼は実験体で、隣人で、他人だ。

 契約は「健康管理」だけで、彼のプライベートを縛る権利なんてない。

 でも。

 彼の肌を再生させたのも、骨格を見出したのも、あのスーツを選んだのも、全部私だ。

 私だけが知っていた「原石」が、みんなの「宝石」になってしまう。

 胸の奥がチクリと痛んだ。

 これは、カフェイン離脱の頭痛よりもタチが悪い痛みだった。


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