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課金ゲーで推しを育てるより、隣の社畜を「腸活」でイケメンにする方がコスパいい件  作者: 東雲みどり
第3章:外見の革命と、独占欲の芽生え

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第24話:仕上げの魔法(アイブロウ)

日曜日の夕方。

 表参道と銀座での買い物を終え、マンションに戻った私たちは、私の部屋で「最後の仕上げ」を行っていた。

「じっとしてて。動くとカミソリで瞼を切るわよ」

「は、はい……緊張します……」

 私はソファに座らせた一ノ瀬の顔を覗き込み、眉用シェーバーを構えていた。

 髪型と服が完璧でも、眉毛がボサボサでは台無しだ。

 眉は顔の額縁。特に男性の場合、眉の形一つで「意志の強さ」や「知性」が決定づけられる。

「あなたの眉は濃くてしっかりしてるけど、眉尻が下がっていて『困り顔』に見えるの。余分な産毛を処理して、角度を二度上げるわ」

 ジジッ、ジジッ。

 慎重に刃を動かす。

 至近距離にある彼の顔。

 一ヶ月前、毛穴の黒ずみを数えていた時とは、まるで違う感情が湧き上がってくる。

 肌は滑らかで、シェービングクリームの滑りがいい。

 長い睫毛が震えているのが見える。

 私の吐息がかかる距離で、彼が息を止めているのが分かった。

「……九条さん、近いです」

「プロに任せなさい。邪念を捨てるのよ」

 私は自分に言い聞かせるように呟き、最後の産毛をカットした。

 ブラシで整え、少し離れて確認する。

「……完璧」

 下がり眉だった彼の表情が、キリッと引き締まった。

 それだけで、頼りなさげな青年から、決断力のあるリーダーのような顔つきに変わった。

「鏡を見て」

「うわっ……! これ、僕ですか? なんか……目力が強くなった気がします」

「眉と目の距離を近づけたからね。これでハッタリが効くわ。明日、上司に理不尽なことを言われても、この眉で睨み返せば相手は怯むはずよ」

 一ノ瀬は鏡の中の自分に向かって、何度かキメ顔を作っていた。

 その横顔を見ながら、私はふと、寂しさに似た感情を覚えた。

 

 泥だらけの原石を拾って磨いていたつもりが、いつの間にか宝石になって、ショーケースの向こう側に行ってしまうような。

 そんな予感がした。


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