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課金ゲーで推しを育てるより、隣の社畜を「腸活」でイケメンにする方がコスパいい件  作者: 東雲みどり
第1章:深夜のゴミ捨て場と、瀕死の原石(全10話)

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第2話:ゴミステーションの異物混入

この高級マンションの売り文句の一つは、各階に設置された「二四時間ゴミ出し可能」なゴミステーションだ。

 エレベーターに乗る必要もなく、部屋着のままゴミを捨てられる。多忙な現代人には必須の設備と言える。

 深夜二時の廊下は、静まり返っていた。

 ホテルのような内廊下。足音を吸い込む絨毯の上を、私はコツ、コツと歩く。

 ゴミステーションの前に立つ。

 カードキーをセンサーにかざすと、「ピッ」という電子音と共にロックが解除され、プシュッという気密性の高い音がして扉が開いた。

 その瞬間。

「……ッ、くさ」

 私は反射的に眉をひそめ、呼吸を止めた。

 臭い。

 単なる生ゴミの腐敗臭ではない。もっと質の悪い、胸焼けするような匂い。

 酸化した古い揚げ油、アルコールが分解された際のアセトアルデヒド臭、そして……澱んだ空気のような、人間の「疲労臭」。

 換気システムが故障しているのか?

 不快感を露わにしながら、私は一歩足を踏み入れた。

 そこで、私は「それ」を発見した。

「……う、あ……ぅ……」

 ゴミ捨て場の隅。

 入居者が無造作に積み上げたAmazonのダンボールの山の影に、人間が落ちていた。

 最初は、誰かが捨てた等身大の抱き枕かと思った。

 薄汚れたグレーのスウェット上下。

 片方だけ脱げかけた便所サンダル。

 そして右手には、命綱のように握りしめられた、ロング缶のストロング系チューハイ(アルコール度数九%)。

 死体、ではない。

 微かに肩が上下し、うめき声を上げている。

 見覚えがあった。

 確か、私の隣の部屋――1005号室の住人だ。

 引っ越しの挨拶ですれ違った時は、もう少し「霊長類ヒト科」の形を保っていた気がするが、今の彼はどう見ても、深海から引き揚げられた謎の生物だ。

 名前は、一ノいちのせ、と言ったか。

(……関わりたくない)

 私の脳内CPUが、即座に「回避」の判断を下した。

 こんな泥酔した男に関われば、私の貴重な睡眠時間が削られる。睡眠不足は成長ホルモンの分泌を妨げ、明日の肌コンディションに直結する。

 私は見なかったことにして、手早く自分のゴミ袋を指定の場所に置いた。

 きびすを返して立ち去ろうとした、その時だ。

「……鍵……わすれ、ちゃって……」

 背後から、蚊の鳴くような声が聞こえた。

 無視しようとした足が止まる。

 ちっ、と舌打ちをしそうになるのを堪え、私は冷ややかな視線で振り返った。

「……邪魔なんですけど」

 私の氷点下の声に、その物体(一ノ瀬)はビクリと肩を震わせた。

 のろのろと、壊れたロボットのような動きで顔を上げる。

 ゴミステーションの、残酷なほど白い蛍光灯が彼の顔を照らし出した。

 その顔を見た瞬間、私は思わず絶句した。

「……ひっどい顔」

 それは、私の美容研究家としてのプライドを逆撫でするような、凄惨な光景だった。

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