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課金ゲーで推しを育てるより、隣の社畜を「腸活」でイケメンにする方がコスパいい件  作者: 東雲みどり
第2章:毒出しと再生の儀式

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第18話:亜鉛とテストステロン

二週間が経過した。

 週末の定期検診――という名の、私の部屋での食事会。

 一ノ瀬の食べっぷりが、以前とは明らかに変わっていた。

 今日のメインディッシュは、私が腕によりをかけて作った「牡蠣とブロッコリーのアヒージョ」だ。もちろん、オイルは安物のサラダ油ではなく、抗酸化作用の高いエクストラバージンオリーブオイルを使用している。

「うまいっ……! 牡蠣、プリプリですね……!」

 一ノ瀬は熱々の牡蠣を頬張り、目を細めている。

 以前のような、ただ空腹を満たすためにガツガツと詰め込む姿ではない。食材の味を噛み締め、味わっている。味覚が正常化した証拠だ。

「もっと食べなさい。今日のテーマは『亜鉛』よ」

 私はグラス(中身はノンアルコールのハーブコーディアル)を揺らしながら言った。

「亜鉛? 金属ですか?」

「ミネラルの一種よ。牡蠣は『海のミルク』と呼ばれるほど亜鉛が豊富なの。亜鉛は新しい細胞を作るのに不可欠だし、何より――男性ホルモン(テストステロン)の生成を助ける最強の栄養素なのよ」

「男性ホルモン……」

 一ノ瀬が少しドキッとした顔をした。

「勘違いしないでよ。別にイヤラシイ意味だけじゃないわ。テストステロンは『社会性のホルモン』とも呼ばれるの。決断力、判断力、そして困難に立ち向かう闘争心。これらを高めるために必要なの」

 私は彼を観察した。

 確かに最近、彼の顔つきが変わった。

 以前の、いつも何かに怯えているような小動物的な雰囲気が消え、精悍さが出てきた。

「そういえば……なんか最近、疲れにくくなった気がします」

 一ノ瀬は自身の掌を見つめ、握ったり開いたりした。

「以前なら夕方には電池切れして、頭がボーッとしてたのに、今は定時過ぎても集中力が続くんです。バグの原因特定が早くなったって、昨日上司に褒められました」

「テストステロン値が上がって、脳のパフォーマンスが最適化されたのね。素晴らしいわ」

 一ノ瀬は嬉しそうに笑った。

 その笑顔を見て、私は不覚にも少しドキッとしてしまった。

 口角がキュッと上がり、白い歯が覗く。肌ツヤが良いせいで、笑顔の破壊力が倍増しているのだ。

(……危険ね。この素材、磨き上げたら相当な兵器になるわよ)

 私は平静を装いながら、彼にブロッコリーを追加でよそった。

「野菜も食べなさい。ビタミンCがないと亜鉛は吸収されないわよ」

「はい! ありがとうございます、九条さん」

 彼の素直な感謝の言葉が、私の胸の奥をくすぐった。

 育成ゲームのキャラが、プレイヤーに懐いた時の感覚に似ている。悪くない気分だ。


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