贈り物を貰ったって嬉しくありません
アンネマリーへの贈り物を選び終えると、レオンはあっさりとイルゼを解放した。
「じゃあ、また明日。花を持っていくよ」
そう言う彼に、イルゼは冷たく返した。
「お気遣いいただかなくて結構です」
だが、レオンは気にした様子もなく、笑顔で言った。
「遠慮はしなくていいさ」
――違う。遠慮ではない。迷惑なのだ。
***
「お嬢様、エリオット卿から贈り物が届いております」
夜、寝台に入ろうとしていたところに、メイドがそう告げた。
差し出されたのは、小さな上品な箱。昼間に立ち寄った、あの店のものだとすぐにわかる。
箱を開けた瞬間、淡い水色のブローチが目に飛び込んできた。
――イルゼが、言いかけてやめたブローチだ。
手に取ってまじまじと見つめる。
気づけば彼女は、引き出しの奥から以前レオンにもらった髪飾りも取り出し、鏡の前でそれぞれを自分の胸元と髪にあてていた。
……ハッと我に返る。
あわてて両方を引き出しの奥にしまい込み、勢いよく閉じた。
まるでレオンの術中に嵌っているようで、無性に腹立たしい。
思わず浮かびそうになった笑みを唇の端で押し殺し、イルゼは寝台へと身を投げた。
枕に顔を埋めたその姿は、誰にも見せない敗北宣言のようだった。
***
翌朝も、案の定レオンはやってきた。
手には、ブルースターとカスミソウ、それから真紅の薔薇を束ねた花束――相も変わらず、気合いの入りすぎた組み合わせである。
「今日もイルゼは美しいな」
爽やかな笑顔とともに差し出された花を、イルゼは無言で受け取り、すぐにそばのメイドへと渡す。いつも通りの流れだった。
「アンネマリーの贈り物を選んでくれて、ありがとう。助かったよ」
「そのくらい……別に、気にしないで」
ついそっけなく答えながら、イルゼは顔をそらす。
と、そのとき。ふと彼の視線が、自分の髪にとどまったのを感じた。
「そのリボン、似合ってるね。可愛いよ」
レオンの声は、いつになく柔らかかった。
「……!」
一瞬、返す言葉を失ってしまう。
――まさか。髪に結んだのは、今朝うっかりつけた、水色のリボン。
あのブローチと同じ色。彼が気づくはずなどないと思っていたのに。
「そ、そんなの……似合うかどうかなんて、わかりませんわ」
つい、そっぽを向いたまま早口で言い返すと、レオンはくすりと笑った。
「わかるさ。だって、僕は君をずっと見てるからね」
その言葉に、イルゼはさらに顔を背けた。
照れではない。決して、照れなどではない――はずだ。




