表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/16

騙すような真似をしないでください

 仮面の男との楽しいひとときに酔いしれ、イルゼはすっかり――結婚相手を探すという本来の目的を忘れていた。


「……あの、貴方のお名前を伺ってもよろしいかしら?」


 多少、顔立ちが冴えなくても、痣があっても構わない。また会いたい。そう思える相手だった。


 だが――


「……名乗るほどの者ではありません」


 返ってきたのは、芝居がかったようなセリフ。だが、その声音には、どこか聞き覚えがあった。


「え? でも結婚相手を探しに来られたのでしょう? 名前くらいは……」


 胸の奥にひっかかっていた違和感が、確信へと変わる。


 イルゼはわずかに眉をひそめながら、男の仮面へと手を伸ばした。


「あ……待って、それは……」


 彼の制止を振り切り、仮面を外す。


 現れたのは、あまりにもよく知る顔だった。


「……何してるのよ、エリオット卿」


 バツの悪そうに俯くレオン。言い訳を探す子どものように、口を開いた。


「……馬鹿にするつもりなんてなかった。ただ、君が結婚相手を探しに行くって聞いて、いてもたってもいられなくて……。君の叔母様に頼み込んで、こっそり参加させてもらったんだ」


「……ふうん」


「結婚相手を探しに来たのは本当だよ。君を……探しに来たんだ」


 ――呆れて、言葉も出ないとはこういう時のことを言うのだろう。


「君が好きなんだ、イルゼ。あの日、決闘で負けた瞬間から――ずっと、君のことが……」


 その言葉を聞いた瞬間、イルゼの心に氷のような静けさが広がった。


 はたから見れば、胸を打つような愛の告白に聞こえるかもしれない。


 けれど、彼はやっぱり何もわかっていない。


 イルゼが本当に欲しかった言葉も、向けてほしかった視線も――レオンは、どれひとつとして届かせてはいない。


「……帰ります。エリオット卿、貴方には心底失望しました。二度とお会いしたくはありません」


「……イルゼ」


 初めての明確な拒絶にレオンは戸惑いを隠せなかった。

 だが、レオンにはイルゼがなぜそこまで怒っているのかわからない。

 知らなくてはいけない、それだけはレオンにも理解できた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ